Sae's Bible
呪縛から解き放て


「………ジャマ…」

ドドドドドッ!!!!

「うおわっ!!!?」

大量の魔法弾がサエ達目掛けて打ち込まれる。
一番近距離に居たアキルノアは命からがら魔法弾を避ける。

「やっぱり使うのは神術…まずいですね…」

「神術やったら何があかんの?」

ドゴンッ!!!

「…見ての通り、詠唱無しの魔法攻撃ができるんですよ。」

放たれた魔法はオリジン魔法でいう最上級魔法に値する凄まじいもの。そのような魔法を詠唱無しで打てる眠りの神を見て、やはり格が違うとジュリーは畏怖する。

「ちょっ、サエ!!魔法は無理よ!詠唱に時間がかかり過ぎるわ!」

「やってみなわからんやん!」

サエは臆する事なく自らの魔法陣を発動させた。



刹那に君臨す冷酷の氷晶よ
絶対なる氷点を越え
天より集いて凍結せん
我が力よ糧と成れ
彼の者に強大な冷撃を!
アブソリュートフリーズ!



サエの魔法は眠りの神の元へ一直線に放たれたが、寸前でフッと魔法を消されてしまった。

「ええっ!?魔法打ち消すなんて卑怯やわ!!」

「打ち消し魔法ですか…ならば!!」

カカカカカッ

ナーナリアが素早く数本の矢を連射する。矢は丁度眠りの神の周辺まで拡散し、どれか一本は確実に当たると思われた、だが…。
眠りの神はスッと上に飛び上がるようにその場から退避し、別の場所に移動していた。

「瞬間移動っ…!?」

「遠距離がダメなら近距離っすよ!!うらぁあああっ!!」

「慌てるなアキルノア!!」

眠りの神の懐に入り目まぐるしい程の連撃を繰り出すアキルノア。

(左がら空き!)

眠りの神の左脇が盲点と踏んだアキルノアはすぐに行動に移った、その時。

トンッ

眠りの神は待ってましたと言わんばかりに身体を翻し、アキルノアの首筋を小さく突く。

「……はっ…!!」

「…………しんで…」

急所を突かれ体勢を崩した所に眠りの神が魔法を当てようとする。

ヒュンッ!!

「お相手願えますか?」

間一髪の所でナーナリアの放った矢が眠りの神の頬をかすめる。


「…………イタイ……」

「早く退避を!」

ナーナリアが自分に注意を引き付けている間にアキルノアはジュリーの所まで引き下がる。

「アキルノア!無茶な事をしてはいけないと昔から言っているでしょう!」

「すみません姫様…つい、身体が動いて…ぐぅっ…!!」

「どうしたの!?どこか痛むの!?」

「いや、なんか首筋が…」

アキルノアが腕を伸ばし指し示す所を見れば、確かに首の付け根が紫色に変色している。

「これは…毒を盛られたわねアキルノア。」

「…毒?そんな、トンッて軽く突かれた程度で…」

「どんな魔法かは分からないけれど、神経毒が身体に廻ってきているわ。」

「…くっ…神経毒…姫様治せないんすか…」

「色々種類があるけれど、この場合は恐らく身体麻痺ね。
残念ながら私には治せないわ、普通の毒薬ならまだしも…毒を放つ魔法は本人しか解毒方法を知らないのよ。」

「はぁっ…なら姫様、さっさとアイツ倒して下さいよ…もう体、麻痺し…て、動けないみたいなんで…」

随分毒が廻ってしまったようでアキルノアは途切れ途切れに喋る。

「わかったわ、特別な結界を張っておくからゆっくり休みなさいね。」


翡翠の森より来たれ昏緑の風
風の子を護れよ翡翠の盾
シルフが癒し続ける送風

キュアブロウシェルター!


「すみ、ま…せん、ひ…め、さま…」

「喋ってはだめよ、毒が身体に早く廻ってしまうわ。」

ジュリーの言葉を聞き入れたアキルノアはコクリと頷く。

「さて…私は攻撃に回れないし、何か対策を考えなくては…。」

そう思った矢先、キムーアが大きな声でこう言い放った。

「ジュリー!!私とナーナリアが引き付ける!その間に策を考えろ!!」

「わかったわ!!」

「ジュリー!私も一緒に考えんで!」

何とか戦闘から離脱したサエがパタパタと走り寄る。

「キムーアに厄介払いされたのね?」

「うん、なんか私の魔法は発動遅いから足手まといやねんてー!!」

「確かにそうね。相手が早過ぎて私達の魔法は全く攻撃にならないわ…」

キムーアやナーナリアのお陰で詠唱中は攻撃されず安全に魔法を打ち出せるが、面白い程に当たらない。
このままではこちらの魔力が少なくなるばかりだ。

「でもジュリーは補助魔法とか治癒とかできるやん?私出来んし、詠唱遅いから余計あかんのやと思うねん。」

「貴女は攻撃魔法の一撃で与えるダメージが大きいから詠唱が遅くなるのよ。
だから貴女の魔法が一度でも決まれば倒せるはずよ。」

「え、なんで?」

いくら自分の魔法攻撃が強くても流石に一撃では倒れないだろうとサエは疑問に思う。

「推測だけれど…相手は素早さと魔力に長けている半面、体力が無いんじゃないかしら。」

「でもさ、キムーア達も結構疲れてんのにあの人息全然乱れてないやん。」

「それは眠りの神が何者かに心の闇を操作されているから体力の消費を感じていな……、それだわ!!!」

「うわっ、びっくりした!どうしたん!?」

突然発したジュリーの大声にサエは驚く。

「どんな魔法も他者の心の闇を捉えるには呪縛の刻印が必要なの!」

「んじゃ、身体のどこかにある刻印を消せば…!!」

「キムーア!ナーナリア!刻印よ!身体に焼き付いた刻印を探して頂戴!」

ジュリーは直ぐさまキムーアとナーナリアに対策を伝える。

「承知!」
「私に任せな!」

「サエ、二人でキムーア達の援護をするわよ!」

「おっしゃ!頑張るで!」

こうして二人は援護という形で再び戦闘に戻った。



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