Sae's Bible
美人さん救出大作戦

エデンを出てから数時間…サエは路頭に迷っていた。

「………だぁあああっ!!!
地図なんて嫌いやぁああっ!!」

家から地図を持って来たはいいが、サエは地図がわからなかった。
仕方なく地図をカバンにしまって、とりあえずまっすぐ歩いていると…

「ん?なんやあれ。」

前方に何かが倒れている。
サエは目をこすり、よく見つめるとそれは人だった。

「あぁ、あれ人やん。人が倒れてんねんや。
…………って、人ぉおおおっ!!!!!?ちょっ、大丈夫ですかぁあっ!!?」

サエが走って近寄り、抱き起こすとそれはそれはキレイな少女だった。
少女は気を失っているだけで、それらしい外傷もなかった。

「よ、よかったぁ…気ぃ失ってるだけや…怪我あっても私治されへんし…」

サエは一安心したが、とりあえず少女に起きてもらおうと少女を揺さぶった。

「おじょーさーん?美人のおじょーさーん?生きてるー?なあなあ起きてぇやぁー!」

「ん…」

サエが揺さぶりまくったおかげか、そのせいか、少女は目を覚ました。

「あ…私…」

「気ぃついたみたいやね!!よかったぁ!!」

改めて少女を見ると、本当に美人さんだ。
青い瞳に肩にかかる位の金髪がかった綺麗な茶髪、それに身なりも可愛いらしい。

「あの…」

「あっ、はい!!」

「囲まれていますわ。」

「へっ!?」

少女に見入っていたサエは気が付かなかったのだろう。
サエたちは魔物に囲まれてしまっていた。

「うっわあぁあ、あ!下がっててな危ないから!!」

サエは少女を守るように魔物の前に立ち、杖を構える。

「あら、大丈夫ですよ?私も戦えますので。」

少女はパンパンと服をはたき、立ち上がる。

「えぇっ!?でも武器…」

「ご心配なさらずに。武器ならありますから。」

少女はスッと小さな杖を取り出した。
しかし魔物の数はざっと20匹ほど。
2人で詠唱していてはこちらがやられてしまう。

「仕方ありませんから私が前衛にまわりますわ。その間に詠唱なさって下さいな。」

「え、でもそんな小さい杖じゃ…」

前衛は出来ない。
そう言いかけた時、少女が口で指を切り、杖の魔石に血をつけた。
すると杖は大きな鎌に変わり、少女は魔物の前に立ち塞がった。

「ね、これならいいでしょう?」

そう言って少女は魔物にどんどん攻撃する。
サエもそれを見て、負けじと詠唱を始めた。

勇ましき紅蓮の炎よ
彼の者達に怒りの鉄槌を下したまえ

ファイアブレスパニッシュ!!


サエの杖からゴォオオオッと怒れる炎が魔物の群れを襲う。
やっと魔物達は半分ほどに減ったが、あとから仲間を呼んでいるようで一向に数が減らない。
すると先程まで前衛で戦っていた少女がサエの前に立ち、大鎌を構えた。

「え!?ちょ、何を…」

「黙って見ていて下さいね。」

少女の言葉に言い返せず、黙って見ていると、少女は鎌を魔物に向けサエの呪文とは違う何かを唱え始めた。

翡翠の森の呪歌を唄う
荒れ狂え風の戦士
切り裂けよ闇の盾
具現せよシルフの刃

ウィングシルフブレード!!



ヒュゴォオオオオッというけたたましい風が少女の鎌の刃部分を包み、少女が鎌をおもいっきり振り下ろすと魔物達は一瞬にして全て塵と化した。
少女はこの呪文でかなり魔力を消費したようで、その場に座りこんだ。

「はぁはぁはぁっ……やりました…か?」

「うん!凄いやん!!全部吹き飛んだで!!」

「あの…申し訳ないのですけれど、私を宿まで連れて行って頂けません?……立てなくて…。」

少女は鎌をまた元の杖に戻し、サエに申し訳なさそうにした。

「ええで!!どこの宿なん?」

「この道をまっすぐ行ったリブラ村という所ですわ。」

サエは少女をおんぶしようとしたが、少女が恥ずかしがったので肩を貸しながら歩くことにした。
少女を気遣いながらゆっくり歩いていた為、リブラ村に着いた時はすでに夕方だった。


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あきゅろす。
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