Sae's Bible
それぞれの思い


「…セー君!?兄ちゃん!兄ちゃんが居るの!?」

《ミュー…》

「なんか私しか見えへんみたいやけど、ちゃんと隣に居るで!」

サエがセー君の居る場所を指差して皆に教えていた時、ついに眠りの神が身体を起こした。

「…………私……」

「お、完全に目が覚めたみたいだな。」

「大丈夫ですか?」

「ねーね!!!」

ミュー君が眠りの神に急いで駆け寄る。

「…ミュー…リット………にげ…ぐうぁああっ!!!!!」

眠りの神は何かを伝えようとしていたが、突如首筋を抑え激しく苦しみ出した。

《あああぁああああっ!!!!!!》

そしてセー君も眠りの神同様に首筋を抑え切り裂くような悲鳴をあげる。
その途端、サエの目の前にいたセー君は一瞬にして消え去ってしまった。

「ねーね!?僕だよ、ミュー君なのだよー!!」

「セー君!?どないしたん!?どこ!?返事して!」

苦しむ眠りの神を心配するミュー君に反して、サエは突然消えたセー君の姿を探し回る。

「うわぁああっ!!!」
「ミューリット君!!」

今まで苦しんでいた眠りの神が突如ミュー君を突き飛ばし、スッと立ち上がった。

「セー君!!セー君!!」

サエは眠りの神の様子がおかしい事に目もくれず、セー君を探し続ける。

「アポニテ!!後ろ!!」

アキルノアの声にハッとして後ろを振り向くと巨大な魔法弾がサエ目掛け飛んできている。

(あかん!大き過ぎて避けられへん!!)

そう思い固く瞳を閉じ、苦し紛れに杖でガードをするが何故か当たらない。恐る恐る目を開けると…

ザンッ!!

「ボサッとするなサエ!!」

キムーアはサエに向かってきた魔法弾を双剣で斬り捨て、物凄い剣幕で怒る。

「あ、ありがとー!キムーア!」

「『ありがとー』じゃない!!馬鹿か!!」

「だ、だってな!「だってもくそもあるか!!状況を見ろ!!!」

「でもセー君が!!」

突然消えたセー君が気になって仕方なかった。彼をまた独りにするのが可哀相でならなかった。
そう思えば思う程、サエはじっとしていられなかった。
セー君を探そうと駆け出すサエをキムーアが引き止める。

「言い訳するな!!死にたいのか!!」

「せやけど!!!」


パンッ


「これ以上…これ以上!!大切なモノを失いたいのか!?」

キムーアに叩かれた左頬が痛い。しかしサエには頬よりも何故か、キムーアの方が辛そうに見えた。

「………わかった、集中する。そんかわり後でセー君探すの皆手伝ってや!!」

「……ああ。いくらでも手伝ってやる。」

その頃、サエが攻撃されたのを見たジュリーは直ぐさまミュー君を柱の影に連れて行った。

「え?え?なんなのだよー?どうしたのだよー?」

いきなり連れて来られ戸惑うミュー君を見て心苦しくなる。
しかしそれでもこの子の為に、とジュリーは詠唱する。



全てを慈しむ花園の守護
風に舞い上がり集う花弁
生命の実りを護る盾となれ

ローゼンシード!


ジュリーの魔法はミュー君の足元に浮かび上がり、まるで花弁のような結界がミュー君をすっぽりと包み込む。

「ミュー君!この魔法陣の中でじっとしてるのよ!貴女のお姉様は私達がきっと元に戻して差し上げるから!」

「これなんなのだよー!!出してなのだよー!!ねーねは僕が助けるのだよー!!!」

半透明な結界の中でミュー君は訴え続ける。
ジュリーが少し心揺らいだ時だった。

「皆さん!来ます!!」

ナーナリアが全員に注意を促したのだ。
どうやら眠りの神は目覚めきれていないのか、はたまた力を制限されているのかは不明だが動きが遅い。
けれどいつ本領発揮してくるか知れない、一刻も早く彼らの加勢をしなくては。

「っ!!ごめんなさいミュー君!!」

「出して!出してなのだよー!!!」

ミュー君がいくら内から叩いても攻撃しても魔法陣は破れない。それでも叩き続けるミュー君をジュリーは見ていられず、背を向けて駆ける。

「姫様!!早く加勢を!!!!」

「………遅れてごめんなさい、ミュー君の安全を優先したの。」

「ジュリー、ミュー君は?」

「柱の影の魔法陣の中よ。慕っている人が傷つく姿を見せたくなくて…ごめんなさい、私のエゴね…。」

二人は飛び交う魔法弾を避けつつ攻撃の機会を待つ。

「ううん、そんなことないで!思いやりは必ず伝わるねんから!!」

「サエ…ありがとう。さて、そろそろ攻撃しないとキムーアに怒られてしまうわ。行きましょう!」

サエの言葉に少し顔が綻ぶジュリー。

「よっしゃ行くでぇー!!」




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