Sae's Bible
暁の力と目覚めた神
《……なぁ…ねーね、まだ起きてねーの?》
「あー確か、ミュー君がもう2週間は寝てるって。」
《2週間!?……マズイな…ミューじゃあ起きないし、やっぱ俺の力か…》
セー君は思っていたよりも深刻な状態に頭を悩ませる。
「あ!ほら、ミュー君たちやで!おーい!!!」
《わあっ!?ちょっと待ってよ!!》
サエはセー君と共に皆の元へ急ぐ。
「サエぇっ!何やってたんだ!お前も早く眠りの神を目覚めさせる方法を考えろ!」
「エトワールさん、オリジン魔法でそういった魔法を知りませんか?東系魔法では効果が無くて…」
「さすがの姫様もお手上げ状態っすよ。エルフ魔法が全く効かないんでねぇ〜。」
どうやら未だに眠りの神は目覚めていないようだ。
皆がやいのやいのと神の前で様々な手段を試す中、セー君がサエの服の裾を引っ張ってきた。
「んん??何なん?どないかした?」
《サエねーちゃん。ねーねを起こすの手伝ってくれよ。》
セー君の表情から真剣に聞く態勢をして返答するサエ。
「おい、聞いてんのかアポニテ。」
「一人でぶつぶつ言ってるのだよー!怖いのだよー!!」
セー君の姿がサエ以外には見えていない為、サエだけが一人で喋っているというオカルトチックな感じにミュー君は怖じけづく。
「それはええけど、どうするん?」
《俺の魔力…『暁の魔法陣』をサエねーちゃんにあげるから、ねーねの額に触れてくれよ。》
周りなんてお構い無しなサエは全く気にせずセー君と会話し続ける。
「………、一人で喋ってますよミナルディ様。」
「頭おかしくなったんじゃないか?」
「まさか魔物に取り憑かれたのでは…早く何とかしないと!!」
「こんな阿呆に取り憑く馬鹿は居ないだろ。気にするな、ほっとけナーナリア。」
悪い魔物に取り憑かれでもしたんじゃないかと心配するナーナリアを他所にキムーアは眉を寄せて淡々と喋る。
「触るだけ?詠唱とかせんでええの?」
《そ、触れるだけでいい。んじゃ魔力渡すよ。》
周りがざわついて来ているにも関わらず、会話し続けるセー君とサエ。
「どうしたのかしら…。変だ変だとは思っていたけれど、まさかとうとう…。」
「きっと頭沸いたんですよ姫様。近づいたらダメですよ。」
心配するジュリーをサエから遠ざけるアキルノア。その時だった。
パァアアッ!!
「光った!!」
「アホ毛が光りました!!」
「何だコイツ!!」
「電波受信したんだわ!!」
「怖いのだよー!!!」
「皆やかましいわ!!今真剣やねんから!」
セー君がサエに魔力を渡す時に何故かアホ毛が光ってしまったようだ。
何度も言うが、セー君はサエ以外に存在を認識されていない。
その為一人でぶつぶつと喋った後、まばゆくアホ毛が光るという怪奇現象が起こったのだ!
《これでサエねーちゃんは俺の力、『暁の魔法陣』が使えるよ。多分…目を覚ますから額に触れてみて。》
「…わかった。行くで。」
「ぐぅっ!!!…………。」
サエが神の額に触れた途端に神は苦しんだが、長い間閉じられていた瞼がゆっくりと開く。
「アホ毛で起きたぞ!」
「アホ毛の力で起きた!」
「アホ毛は盲点だったわ!」
「アホ毛パワーなのだよ!」
「アホ毛パネェっす!!!」
その光景を見た皆が機関銃のように「アホ毛」という言葉を口にする。
「ちゃうから!アホ毛パワーちゃうから!セー君の力貰ったんや!」
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