Sae's Bible
暁の願い
一方サエは皆が居た場所から離れ、寝所の一番奥の右端で辺りを見回していた。
「…ここやねんけどなぁ…。……ん!?」
《……ぐすっ…うー…ミューのバカヤロー…》
柱の陰で少年が縮こまって泣いている。
「なぁ何してんの?」
《へ?》
「何してんの?なんで泣いてんの?」
《ねーちゃん…俺が見えるの!?》
少年は目を丸くして、サエを見る。
「ん?うん、当たり前ちゃうん?」
《……お…おぉう…キタ━━━(゜∀゜)━━━!!》
「なんやねんこの子!!?」
嬉しいのか、興奮して立ち上がりガッツポーズをする少年。
《いや、普通は絶対見えないんだぜ俺の姿。ねーちゃん普通じゃねーんだよ!!》
「失礼な子やなぁ!私はサエ!サエ・エトワール!
ちょっと常識知らん元気なポニテや!皆から『空気よめないポニテだね』って褒められた事もあるで!
サエか、サエねーちゃんって呼んでくれたら嬉しいな〜!
」
《いや褒められてねーよ、KYポニテだっての。わかった?ポニテのねーちゃん。》
「KYて何?おいしいの?
まぁいいや、アンタどこの子?迷子?」
《ちげーよ!俺はセークリット、セークリット・ラングフォード!暁の扉を守る守護神さ!》
「ラングフォード?暁の扉?………あぁっ!!もしかしてミュー君のお兄ちゃん!?」
どうやら彼がミュー君の言っていた『兄ちゃん』らしい。
そういえばどことなく顔つきが似ているし、アホ毛に親近感が湧いた。
《なっ、なんで知ってんだよ気持ちわりーな…。そうだよ、俺はミューの兄ちゃんさ!》
「もう!ミュー君が捜してたで!はよ行ったらな!」
サエはミュー君の所へ連れていこうと、セークリットに手を伸ばす。
しかし…
「あ、あれっ!?あれ?なんで掴まれへんのっ!?」
サエの手はセークリットの腕を通り抜け、空を掴む。
それを見たセークリットは、悲しそうに自身の両手を見る。
《…俺は…存在を拒否されてるから誰も見えないし、声も届かない。ポニテねーちゃんは俺が見えるけど…やっぱし触れる事は出来ないんだなぁ…。》
「………。セークリット君!!皆の所行こう!」
《俺が行ったって見えないんだっての!どうせまた嫌な思いするんだ!!!》
「アホ!!惨めな思いすんのが嫌やからって行かへんの!?
そんなん逃げてるだけやろ!!アンタだけが悲しいんちゃうねんで!!」
このままセークリットが皆の元に行く事を拒んでも解決しない。確かに彼はそこに居るのだから、諦めずに進むべきだとサエは考えたのだ。
《…………っ、…ご…めんなさい…》
「ほらほら、泣いたらあかんで!セークリット君は泣き虫さんやなぁ〜。お兄ちゃんやねんから頑張ろな!」
《……ん、頑張る…。あ、あのさ、「セークリット」って長いだろ?その…「セー」でいいよ。サ…サエ、ねーちゃん。》
「サエねーちゃんやって!やっと名前呼んでくれたなあ!!嬉しいわぁ〜!!
えへへ、ほな行こか。セー君!」
《……、うん。うん、サエねーちゃん!》
差し出された手に少し戸惑ったけれど、とても温かい。
見えなくても繋がっている事をセー君は感じ、涙した。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!