Sae's Bible
神の寝所

シュンッと魔法陣が消えると、そこは先程の真っ白な部屋ではなくほの暗い神殿のような所だった。

「うっわぁ!!めっちゃ広いなぁここ!!すごいすごいすごーい!!」

美しい女神が彫られた天井、列を成す幾多の支柱、どこをとっても神が住まうに相応しい神殿。
サエは辺りをキョロキョロと見回し、小さな子供のようにはしゃぐ。

「少し黙らんかサエ。おい、ここはどこだ。」

「どこって…『神の寝所』、別名アウェイク・ゲートなのだよー!」

「神の寝所…ですか。それで眠りの神様は何処に?」

ナーナリアが辺りを見回してもどこにもそれらしき人は見当たらない。

「………うぅ…」

そんな時、アキルノアの腕の中でジュリーが僅かに唸った。

「姫様っ!!!?」

アキルノアは慌ててジュリーを床にゆっくりと降ろす。


「………こ、こは……」

ジュリーはアキルノアに支えられながら上体を起こし、軽く頭を押さえる。
目は覚めたが、どうやら気分が優れないようで顔に血の気が無く真っ白だ。

「姫様っ!!!」
「ジュリー!!」


「あぁ…アキルノア…皆…ごめんなさいね、迷惑かけて…」


「ジュリー大丈夫なん?さっきな、ちょー美人さんになってたんやで!」
「あの、お体はいかがですか?先程ラングフォード君が魔力を入れたらしいのですが…」
「どこも痛くないか?それと、何があったか覚えてるか?」

「あらあら、そんなに沢山答えられないわよ?」

サエ達が心配そうな顔でアキルノアを押しのけジュリーの元へドッと駆け寄り、一斉に質問する。
その光景が何故だか可笑しくてジュリーはクスクスと笑う。

「姫様っ!!!」

暫く呆然としていたアキルノアだが、ふと我に返りしっかりとジュリーを抱きしめ、うずくまる。

「あらあら。苦しいわよ、アキルノア。」

その様子を見たジュリーは小さく笑いながらも優しげな眼差しでアキルノアをそっと引き離す。

「姫様!どこか痛い所は!?魔力はいつも通りですか!?記憶飛んでませんか!?何かわからない事は!?」

「はいはい。痛い所も無いし、魔力も記憶も問題無いわ。
わからないのは此処がどこなのか位よ。大体の事はミュー君に教えて貰ったから。」

アキルノアの質問を軽く受け流し、ジュリーはちらりと横目でミュー君を見る。

「はぁっ!?姫様!それどゆこと!?」

「せやんなぁ〜、ジュリーは襲い掛かってきたミュー君しかしらんはずやで?」

「そうだ、ジュリーはコイツの事を知らんはずだろう?」

「何故知っているんですか?気絶していらしたのに。」

「ふっふっふ〜♪僕が魔力と一緒に情報共有処置をしたのだよー!!」

サエ達が口々に討論する中、ミュー君はえへんと胸を張る。

「情報共有処置ぃ?」

「そ!だってまた説明するのめんどくさいのだよー!
それから今起きたおねーちゃんの為にもう一度言うけど、ここは『神の寝所』。別名アウェイク・ゲートなのだよー!!」

「あぁ、要は手間が省けたんだな?ならさっさと『リホソルト・スリープ』に会わせろ。」

キムーアは意地悪そうな顔でミュー君の頭をぎゅうっと上から抑える。

「ひーん!頭ぎゅーってしないでよう!兄ちゃんよりちっちゃくなっちゃうのだよー!」

少し涙目でミュー君はむぎぎと頭を抑えるキムーアの左手を下から押し上げようとする。

「兄ちゃん?ミュー君て、お兄ちゃんおんの?」

「ぶみゃっ!!」
「…ふっ(笑)」

ミュー君の頭を抑える手をいきなりキムーアが外した為、ミュー君はびっくりして前につんのめりそうになる。

「うー…いじわるなのだよー…性格悪いのだよー!」

ミュー君がぷうっと頬を膨らませる様子を見て小さく笑うキムーアはとても悪い顔をしていた。

「うん!!セークリット兄ちゃん!僕ら兄弟は『暁の扉』と『宵闇の扉』を護る為に、ねーねが創造した守護神なのだよー。ちなみに僕はアレ、『宵闇の扉』を守ってるのだよー!」

ミュー君は後ろを振り向き、寝所の突き当たりにある深い闇色をした大きな扉を指差す。




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あきゅろす。
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