Sae's Bible
それぞれの過去、そして溝

少年がジュリーの額に触れているのを見て、アキルノアは真っ先に駆け寄る。


「大丈夫、魔力をあげてるだけなのだよー。」

「魔力?は?いや、じゃなくって!!何勝手に姫様の高貴な額に触れてんだガキンチョ!」

「えー!だってボクの魔力あげないと、このおねえちゃん死んじゃうのだよー?そんなのも知らないのー?じょーしきなのだよー!」

少年は自慢げにフフンと鼻で笑う。

「やかましかこのワッパが!!なんぞ知っちょるかにほざきよって!!姫様に触るでなか!!」

「ちょっ、アキルノア!落ち着いて下さい!」

少年の挑発的な言葉に我を忘れたアキルノアをナーナリアが慌てて止める。

「ええやん別に〜。その子の言う通り魔力足らんやろうし。」

「まぁ…今回はサエが正しいな。」

「そうなのだよー!!あ、魔力回復しゅーりょーなのだよー!あとは自力で目覚めてもらうしかないの「やかましい!!!お前らに何がわかる!!何が!!」

「……アキルノア…?」

ふるふると身体が震えるアキルノアはどう見ても様子がおかしかった。
まるで何かを恐れているかのように…そしてそれは彼女にとって触れられたくないものだという事を物語っていた。

「アキルノア?どないしたん?」

「放っておけ、サエ。どうせ過去に何かあったのを思い出しただけだろう…下らん事を。」

「…っ!貴様っ!!」

キムーアの言葉にアキルノアはカッとなりキムーアの襟首を荒々しくつかみ掛かる。

「ちょっ、何してんの!危ないやろ!」

「お二人とも!お止め下さい!!」

ナーナリアの仲裁でなんとか一触即発は免れたものの、2人はお互いに冷たい目をしたままだった。

「……のけ。姫様は従者である私が看る。」

少し落ち着いたアキルノアは軽々とジュリーを横抱きにし、全員から遠ざけるようにサエ達よりも更に後方へ移動する。

その行動を見たサエの目は少し悲しげに揺らいだが、気を取り直して場を明るくしようとする。

「なぁなぁ、さっきのジュリーってどうなってたん?美人やったやんなぁ〜!!」

「そうだな、とても気になる…だがそれよりも確認したいことがある。」

キムーアはカッカッと足早に少年の前に立ち、素早く左手の剣を抜く。

「あわわ…なんのマネなのだよー!!」

「貴様…何者だ。偽りなく話せ。」

突然の事に慌てる少年をキムーアの冷徹な隻眼が捉え、少年の喉元に剣の切っ先が突き付けられる。



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あきゅろす。
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