Sae's Bible
谷を遮る扉

渦巻く螺旋階段を降りてゆくと徐々に霧が晴れ、谷を遮るように大きな白い扉が見えた。

「なんだこりゃ。」

「でかっ!!」

一行が扉の前まで行くと、扉はまるで誘っているかのようにギギギギギ…とゆっくり開く。

「フッ…さっさと中に入れって事か…」

「すごいなぁ!!自動扉やん!!かっこいー!!」

サエ達がぞろぞろと中に入るとそこは真っ白な大部屋だった。

「飾り気の無い部屋ね…何も無さ過ぎて気味が悪いわ。」

何一つ無い静寂に包まれた空間、それはまるで白い別世界のような部屋。

「蕎麦くらいあってもいいんですがねぇ。」

「……アキルノア、蕎麦以外の事をしゃべりなさい。」

「じゃあ黙ってます。」

ジュリーは眉間にシワを寄せアキルノアを睨むが言い返しても無駄と思い、ため息をつく。
遠巻きに見ていた三人はその二人の様子に笑いを堪えていた。

サエ達は辺りを見回しながら、部屋の奥を確かめようと足を進める。

すると…

バタンッ!!!

「しまった!!」

サエ達が音に気づいて振り向いた時には既に遅く、扉が固く閉ざされた後だった。

『侵入者はっけーん、審査に移行しまーす!』

帰路を断たれた直後、突然辺りが濃い霧に包まれ誰かの声が響き渡る。

「誰っ!?」

「皆さん!この霧の中、散り散りになってはいけませんわ!!」

サエ達はジュリーの掛け声で背中合わせになり、静かに武器を構える。

『あははははっ!!』

「誰だ!!姿を現せ!!」

「姫様、風で霧を払いましょう!」

「そうね…。」

翡翠の森より来たれ光緑の風
我が手足となりて舞い踊る風華

薙ぎ払え!ウィンディレーベル!!


ヒュオオオッ!!!!!

キラキラと輝く風がくるくると旋回し、濃い霧を完全に晴らした。

『さてクイズでーす!ボクは誰でしょうっ?』

一人の小さな男の子がこの真っ白な部屋の中心に立ち、サエ達を見つめケタケタと笑いながら言う。

「んー…ジョンとか!」

『ぶーハズレ!少なくとも君達よりはかっこいー名前だよー!』

少年は余裕そうにあっかんべーをして、悪戯に笑う。
その小馬鹿にしたような態度と言葉がしゃくに障ったのか、キムーアが果てしなく嫌そうな顔をする。

「なんだこのガキ、大人を馬鹿にしやがって!!!コイツ斬っていいよなナーナリア!?」

「ミナルディ様、口が悪いですよ。落ち着いて下さい。」

『ま、いきなり言われて解るわけないよねー。じゃあこの箱をあげるよ。』

少年がパチンと指を鳴らすと黒い箱がサエの目の前に現れた。
サエは箱を手に取り、とりあえず中を確かめる為に開けようとするが…

「何なんコレ?開かへんやん。ジュリー開け方わかる?」

ジュリーはサエから箱を受け取り、その表面にびっしりと彫られた金色の魔法文字に目を通してゆく。

「…そうね…封印の解読をすれば開ける事が出来るわ。誰か紙とペンを貸して頂けませんかしら?」

「字命解放!…これでよければどうぞ。」

「ありがとうナーナリア。」

ジュリーはナーナリアが式符で出した羽ペンと大量の紙、黒インクを使い何かの方式を素早く書きはじめる。

『あははー、その中にヒントが入ってるよ。開けれるなら開けてごらんよ…キミ達が死ぬ前にね。』

突如少年の足元に銀色の巨大な紋章が現れた。
その直後に少年の右手は白銀に輝く刃となり、鋭い切っ先がサエ達に向けられる。

「なんなんコイツ!!危ないやろ子供がそんなん出したら!!めっ!!」

「ちっ…厄介なもん出しやがって…。すぐに解除できるか?ジュリー。」

「強力な封印解除魔法が必要ね…所要時間は約1時間。せめて30分だけでも足止めをして頂ければなんとか。」

ジュリーは箱を封印している魔法をサラサラと解読しながらキムーアに答える。

「姫様っ!解けるまで私が守り抜きますよ!」

「ジュリー、私でよければ解読のお手伝いします。」

「ありがとうナーナリア、助かるわ。皆さん無理はしないで頂戴ね!」

サエ達は武器を再度構え直し、攻撃と守護に分かれる。

「みんな…来るでっ!!」



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