Sae's Bible
眠りの谷

何度かのカーブを滑り抜け、シャアアアアッと一直線に下降していく。
そして、大きく通路が開けたかと思うと一気にサエ達はなだれ込んだ。

ドドドドドッッ!!

「いったぁ〜…」
「あんのジジイ…今度会ったらただじゃおかねぇ…」

地面が固い土ではなく柔らかい砂地だった為、多少の衝撃は防いだようだ。
おかげでサエ達はすぐに立ち上がり、辺りを見回す事が出来た。

「ミナルディ様。どうやら此処は眠りの谷の地下4階層のようです。」

サエ達が工房の隠し通路から出た先は眠りの谷の4階層、『B4』と表示される地下。
既に地上は見えないにも関わらず、左脇にはまだまだ下へ続く階段が螺旋に渦巻いている。

「さて、先に進みたい所だが…。詳しく話を聞かせてもらおうかジュリー。」

キムーアは服についた汚れをパンパンと払いながらジュリーを鋭い目つきで見る。

「わかってますわ。
…カーバンクルとはエルフの血液で生成された紅い魔石の名称であり、『エルフ狩猟協会』の別名です。
昔からエルフには様々な貴重価値があるといわれ、
中でもエルフの血は氷結させると結晶化するので魔石に用いられたりしますの…。
彼らは自分達の魔力や延命をするべく…私達エルフの血液や魔力、肉体を狙い…無作為に狩るのですわ…。」

話している最中、ジュリーはとても心地悪そうに服の胸元を握る。

「姫様、私が代わりに言います。ですから…心を落ち着けて下さい。」

「ええ、ありがとう…アキルノア…。」

ジュリーはふらふらと近くの壁にもたれかかる。

「えーと、なんかわかんない事ありやがりますか?」

「あ!は〜い、質問っ!
ジュリー達はカーバンクルに対抗しぃひんの?さっきもすぐに逃げとったけど。」

「確かに…こちらから攻撃はしてませんし。自己防衛をする権利はありますよ。」

サエとナーナリアが不思議そうにアキルノアに問い掛ける。

「あぁ、それが駄目なんですね〜ムカつく事に。」

「何故駄目なんだ?」

「うちの国、レニセロウスはマーファクトと超仲が悪いんですよ。
向こうさんがエルフの存在ってゆうか…絶滅させようとしてるんでね。
ついには法律で『いかなる理由あれどマーファクト国及び国民との干渉、攻撃を禁ず。
これを破りし者は法の元に罰する。』って作っちゃいまして。
それを逆手に取られて…」

「反エルフであるマーファクトの民で無力化して狩りをしているのか…。
チッ、卑劣な奴らめ…いけ好かん。」

キムーアもマーファクト国をあまり好いていないようで、心底嫌そうな顔をする。

「全く困ったもんですよ。あ、姫様立てますか?」

「ええ…もう大丈夫よ。他に何か聞きたい事はあるかしら?
無ければ下へ降りましょう、此処に居ても仕方ありませんし。」

「そうだな、どうやら最下層はもう少し下のようだしな。」

キムーアを先頭に一行は先の見えない螺旋階段を降り始める。


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あきゅろす。
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