Sae's Bible
調査開始
「そういえば、ししょーの名前ってゼルドー・ゴッフェンじゃないんすか?」
アヤタルシェはずっと気になっていた事をゼルバに聞く。
「アホか。ゼルドー・ゴッフェンはペンネームじゃい。お前が弟子になるとき説明しよっただろうが。」
「えぇっ!?んじゃ本名ってゼルバ・ゴードンなんすか!?知らなかった〜。」
「アホか、お前は。そんなんじゃき絵画試験も無しになるっとよ。」
ゼルバは眉間にシワを寄せてアヤタルシェの額にデコピンする。
「いったっ!!酷いっすよししょーっ!!」
「あの、ゼルバ老師はなぜ湖で凍っていたんですか?」
ナーナリアが不思議そうな顔でゼルバに問い掛ける。
「それはな、村とサヤフェートを救う為にサヤフェートと話しおうとったら俺がキレてしもうてな…。そんでサヤフェートを怒らして凍りづけになったっちゅうこっちゃ。」
「あらあら。」
「ジジイ、お前馬鹿だろ。」
「行った意味無いじゃないですか。」
「ししょーはアホっすなぁ〜!」
ゼルバの凍っていたアホな真相を知り、4人は苦笑する。
「なんじゃい、笑うんじゃねぇわ!!そしてアホな弟子にアホ言われたないわ!!」
「アホで思い出したわ。うちの子、どこに居るのでしょう。
サヤフェート、アキルノアはどうなっているのかしら?」
「うん、わたしが風を入れなくしちゃったから…。
多分湖の近くに居ると思うから、私が此処に呼ぶね。」
サヤフェートが水と共にくるんと回り両手を広げると大きな水球がジュリーの前に現れる。
パンッ!
針で突いたような音で水球が割れると、中から蕎麦を食べているアキルノアが出てきた。
「ん〜、この蕎麦最高とね。あの木の実美味いわ〜!!
どぅおわっ!!?姫様っ!!?」
「あら使えないアキルノア、元気そうで何よりだわ。」
うふふと黒い笑みを浮かべるジュリーを前にしたアキルノアは即座に蕎麦を後ろに隠す。
「あ、皆さん。私はこの子をちょおおおっと叱ってきますので先に休んで下さいませね。
さぁ行くわよこのお馬鹿な蕎麦オタク。」
「いだだだだだだだっ!!!!姫様ご勘弁をぉおおおっ!!!!」
5分程して森からアキルノアの叫び声が聞こえたのは無理も無い。
皆が寝静まった深夜。
テントから離れた湖のほとりで、焚火の明かりがぼんやりと辺りを照らす。
「なぁ、ナーナリア。あいつは…何者なんだろうな。」
「エトワールさんの事ですか?」
「あぁ。杖が輝き、オレンジの巨大な魔法陣が現れると同時に4本の黒い鎖が見えた。
その鎖が消えるとサエは凄まじい魔法を放つ事に成功している…。
………何かあるとしか考えられん。」
「そんな事があったのですか。」
突然、後ろの茂みから声がした。
「誰ですっ!!」
「私よ。」
ナーナリアが咄嗟に向けた矢先にはジュリーが立っていた。
「なんだジュリーか。」
「あら、聞かれてはいけない話だったのかしら?」
ジュリーは明らかな作り笑いで茂みから出て、ナーナリアの隣に座る。
「いや…なぁジュリー、サエの事どう思う。」
「不思議な人よね…初めて会った時とは比べものにならない程魔力は上がっているし。」
「魔力もですが…前回より魔法制御能力が高くなっている気がします。」
「そうね…玉座の間の時に今日と同じ事が起きたのだとすると…」
「あの黒い鎖が消えるごとにサエの魔力は強くなる…ってことか。」
「では…後3回は起きますね。」
「………ナーナリア。
少しの間、サエ・エトワールを調査及び観察しろ。」
「御意。」
ナーナリアは承諾して焚火を消すと、キムーアとテントに戻って行った。
ジュリーは一人残り、2人が完全にテントに入ったのを確認すると指をパチンと鳴らす。
するとサァッと風が通ると共にアキルノアがジュリーの前に現れる。
「調べるんですね、姫様。」
「えぇ…詳しくお願いね。」
「仰せのままに。」
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