Sae's Bible
切れた鎖

「…あんた…なんて事を…っ!!!!」

サエは滑り落ちかけていた杖を強く握りしめ、サヤフェートに向ける。

「しらないよっ!!わたしは…ワタシはっ!!!
此処から出たいだけなのにっ!!!
あなたたちが邪魔するから出れないんだ!!!!!!」

サヤフェートは大きく瞳を見開き、苦しげに叫ぶ。
それと同時にサエ達の鎖がさらに強く締まる。

「ぐはっ…!!!」
「うっ…がっ…」
「くうぅっ…」

「ガハッ………あ…んたは…逃げ…てる…」

サエは鎖の締め付けに眉をひそめながらも、サヤフェートを真っすぐ見つめる。

「…あんたは…自分から出るのが…怖い…だけ…っ…私たちを…逃げ……道に…してるだけっ!!!!」

パリンッ!!!

サエの首を締め上げていた鎖が水のように弾け飛んだ。

「ちがうちがうちがうちがうちがうっ!!!!!!」

サヤフェートは頭を抱え、大きく否定する。

「あんたは…踏み…出す…足を…自分で…消してるだけっ!!!」

サエは杖を両手で固く握り、サヤフェートを見据える。

パァアアアアアアアアッ!!!!!!!!

まばゆい光が辺りを照らし、宙に浮くサエを支えるように
オレンジの巨大な魔法陣がサエの足元に出現する。

するとサエの身体の周りに4本の黒い鎖が薄くぼんやりと現れ、
その内の1本がパリンッと砕け散る。

バシャンッッ!!!

サヤフェートの心の乱れからか、キムーア達の鎖も弾け飛びキムーア達は湖に落下する。
幸いにも3人は意識がまだぼんやりとあったのですぐに陸に上がる事が出来た。

「うぅっ…いや…こわい…怖いっ!!……鎖…こわいっ!!!!!」

サヤフェートの精神的ショックは大きいらしく、どこかでパキンッと割れる音がした。

そのサヤフェートの悲痛な叫びを聞き、サエは詠唱する。

掟を砕けよ英知の剣
燦然の輝きを奮う時
凍てつく鎖を断ち切らん
天より翔けて我が元へ
目指すは蒼き奥底の枷
我が盟約の名の元に解き放て

セーバーソード!!!



フォンッ…と金の柄で水晶のような刃の剣がサエの真横に現れる。

「もういや…こわいよ…お姉ちゃん…誰…か…」

そして剣は怯えるサヤフェートの鎖めがけて放たれた。


パキィィィンッ……

サヤフェートと湖を繋いでいた鎖は断ち切られた。
その瞬間巨大な魔法陣は消え、ゆっくりとサエは地に足をつける。

「……わ…たし…」

サヤフェートはガクッと崩れ落ち、ぼうっと空を見つめる。

ザパンッと湖から水音がすると共に、ジュリーが凍っていたはずのゼルバに連れられ陸に上がる。

「ジジイっ!?」
「老師!!ジュリーもご無事でっ!!」
「ししょーっ!!無事だったんですか、このマッチョ老いぼれがぁあああっ!!!」

2人の登場は疲れきって言葉も出なかったキムーア達の身体を動かした。

「あ…よかった、2人とも無事で…」

サエは2人の安否がわかるとその場にペタリと座り込んだ。



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あきゅろす。
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