Sae's Bible
水を打ち破れ

キムーアはアヤタルシェに目掛けて飛んできた鎖をキンッと弾く。
すると鎖は緩み隙が出来た。

バシュッ!!

その隙を狙ってナーナリアが素早く数本の矢を放つ。

しかし、矢はサヤフェートの体を通り抜け向かいの木に刺さった。

「なっ…矢が当たったのに、どうして!?」

「…わたしは精霊だもの…当たり前。」

ザパンッ!とキムーアの双剣が水飛沫をあげ、サヤフェートの身体はまた元に戻ってしまう。

「チッ…やはり私の剣も当たらないのか!」

「水の精霊の身体は『水』、つまり物理攻撃は効かないのよっ!」

「なら魔法でどうだーっ!!!!」

サエが杖を向けると足元にオレンジの魔法陣が姿を現す。

炎々なる緋色の焔よ
彼の者に業火の戒めを与え
轟然たる爆発を響かせたまえ

ブレイズエクスプロージョン!!


ズドォオオオオッ!!!

凄まじい爆音と共に炎がサヤフェートを襲う。

パァアアアッ!!

「炎は…水には勝てない。」

サエの炎をサヤフェートは鎮火させ、身体に負ったダメージも瞬時に治癒してしまった。

「えぇっ!?結構本気やったのに!!ってかジュリーも逃げんと戦ってや!!」

サエは先程から攻撃しないジュリーに苛立ち、大声を上げる。

「戦いたいけれど私の使う魔法は全て無効化されてしまうのよ…。
むしろ風は水に付加効力を与えてしまうから。」

ジュリーは心苦しそうにスタッフを握りしめ、サエに言う。

「んじゃ水の弱点って無いん!?」

「いいえ、沢山あるわ。高位魔法である光と闇、同等レベル以上の炎、土や雷などよ。」

「じゃあ私の炎はサヤフェートの水より弱いって事なん!?」

「そうなるわね…どうやら水魔法が相当強いみたいだから炎では対抗出来ないわ。」

ジュリーは相変わらず鎖と水で攻撃してくるサヤフェートを見て、険しい顔をする。


「よっしゃ、んじゃ私が!!」

アヤタルシェが意気込んで筆をくるくると回す。


パレットパステルカルテット
暖色に染まる明るいトーン

レインボーカラーコンタクト!!!


アヤタルシェのパレットから無数の絵の具が美しく孤を描き、小さな弾丸となってサヤフェートを攻撃する。

「うっ……水が…汚れちゃう…ダメっ!!」

パァアアアッ!!!

アヤタルシェの絵の具で淀んだ湖を、サヤフェートはまたしても瞬時に浄化させる。

「治癒能力が高すぎませんかっ!?」

ナーナリアはサヤフェートの治癒力の高さに呆気にとられている。

「もう…あなたたち嫌い!」

「ぐわっ!!」
「くうっ…」
「いってぇ〜っ!!」
「きゃあっ!!」
「うぎゃっ!!!」

サヤフェートの放った水は鎖のように具現化し、サエ達の首を絞める。
水の鎖はどんどん上に上がり、サエ達の足は完全に宙に浮いている。

「ぐっ…や…めろっ…!!」

カランカランッとキムーアの双剣が音を立てて地面に落ちる。

「いや。あなたたちはわたしを止めようとするんだもの。」

水を媒介にしているはずなのにギチギチと強く首を締め上げてくる。

「ゲホッ…う…」

「くっ…ジュリー…!!」

サヤフェートはジュリーがぐったりとしたのを見るとジュリーの鎖を外し、そのまま湖に…落とした。

バシャンッ!!!

透き通る水面を通して、ジュリーが水の奥底へ沈んで行くのが見えた。



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あきゅろす。
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