Sae's Bible
凍てつく湖

凍っている水面をよく見ると湖の奥底に剣を手にした老人の姿が見えた。

「ゼルじいっ!!おい!!ゼルバ・ゴードン!!」

「ししょーっ!!ししょー!!!!ってあれ?ししょーの名前ってゼルドー・ゴッフェンじゃね?あれ?」

キムーアとアヤタルシェは湖に駆け寄り膝をついて老人に呼びかける。

「よっぽど大事なおじいちゃんやったん?」

「ええ、ゼルバ老師はミナルディ様の剣術師範でしたから。
口では生意気言ってますけど、とても慕っていましたよ。
私にとっても…大事な師範です。」

サエの問いにナーナリアは悲しげな瞳を伏せて、弓を強く握りしめる。

「浸っている所悪いですけれど…何か来ますわ。皆さん戦闘体勢をっ!!」

「…くそっ!!」
「うわっ!!なんだなんだっ!?」

キムーアは反応が遅かったアヤタルシェを強引に担ぎ、湖から逃げるように走る。

キムーア達が湖から離れると同時に、凍っていた湖がパリンッと弾けるように氷が宙に浮く。

ザァアアアアアアッ!!!

凄まじい水音と共に大きな水の渦がぐるぐると巻き起こる。

「なんなんコレっ!!」

サエ達が身構える中、水の渦はピタリと動きを止める。
そして…

パシャンッ!!!!

と渦が弾け、中から青い長髪の美しい女性が現れた。

女性はゆっくりと瞳を開くとサエ達を鋭い目つきで見る。

「あなたたちも?」

女性は静かに透き通るような声で問い掛ける。

「えっ何が?てゆーかあんた誰なん?」

「…わたしはサヤフェート・アクア…。
あなたたちもわたしを止めるの?出してくれないの?」

「止めるとか出すとかそんなんどうでもええって!
あのおじいちゃんを助けたいだけ!」

サエは凍りづけになったゼルバを指差してサヤフェートに言う。

「そう…あなたたちもわたしを此処に縛りつけるの?
わたしは出たいのに。」

「なんだコイツは…思考が読めん。」

「あなたたちが止めるなら…私も止めてあげる…。
そして私もみんなも全部…朽ちてしまえばいいのよ!!」

「なんだか話しが噛み合ってませんね…」

キムーアが剣をゆっくりと抜き、ナーナリアは2本の矢を弓に番えながら少し後ろに退く。

「それもだけれど…アキルノア、遅いわね…もう着いてもいい頃なのに。」

ジュリーは心配そうに顔をしかめるが、決して構えたスタッフを降ろそうとはしなかった。

「…風は来ないよ。わたしが止めたもの。」

「なっ!?…貴女、アキルノアに何を…」

「…わたしが出られないのはあなたたちのせい。
だからわたしはあなたたちを閉じ込める事にした…わたしと同じようになればいいよ。」

サヤフェートは冷たい瞳で、しかしどこか悲しげにサエ達を見る。


「なんなん!?さっきから!!話し噛み合わへんし!!
一人で勝手に此処から出られへん可哀相な自分に浸ってるだけやんか!!
そんなに此処が嫌なら、浸る前に自分の足で出ればいいやん!!!」

サエはついカッとなり、べらべらと思った事を口にしてしまった。

「サエ!!言いすぎだ!!」

しかし遅かった。


「……酷い…あなたたちも…村の人も…みんな…みんな、みんな!!!!
いやぁああああああっ!!!!!!」

ドガガガガガガガッ!!!!

サヤフェートが泣き叫ぶと共鳴するかのように首につけられた鎖がサエ達を襲う。

「うおわっ!!ちょっ!!なんでっ!?」

「お前のせいでしょ〜!!しゃあないから私も戦うよっ!!!」

そう言ってアヤタルシェは大きなパレットと筆を構える。

「そ、それで戦うんですか!?」

ジュリーは武器のチョイスに驚いてアヤタルシェに聞く。

「だ〜い丈夫っ!!攻撃技もあるから!!」

「無駄話は止めろ!来るぞっ!!」


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あきゅろす。
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