Sae's Bible
ウォール村


―ウォール村―

「はいウォール村到着ぅー…ってあれ?」

一行の目線の先に広がるのは寂れた武器屋や鍛冶屋。
そしてどうにも村人たちの表情は暗く、周りの空気も重苦しいものだった。

「うわ暗っ!めちゃめちゃ暗い所やな〜。」

「サエ、大声で失礼な事を言わないで頂戴。」

沈んだ空気を切り捨てるようなサエの発言をジュリーが咎める。

「ま、とりあえずジジイの鍛冶屋に行くか。」

「んじゃ私はししょーの所行くからここまでだな〜って事で案内料金よこせ。」

「あ、じゃあ私は蕎麦一年分で!!」

「「るせぇよ黙って歩け。」」

調子に乗ったアヤタルシェとアキルノアに黒い笑みでキムーアとジュリーが対抗した。
アホ2人が黙りこくる中、一行はズンズンと村の中を歩き始めた。

「なぁなぁ、ここさ〜水無いんかな?」

「喉でも渇いたんですか、エトワールさん。」

「うん。なんかここらへん乾燥してるからさ、喉渇いてん。」

「あっ!私も喉渇きましたぁ姫様〜!!」

「そういえばこの村には井戸が無いわね、緑も少ないようですし。」

「無視っすか姫様ぁあああ!!んであんたら可哀相な目で見るなぁああああっ!!」

無視されたアキルノアを哀れみの目でサエとアヤタルシェが見る。
その間ジュリーがキョロキョロと辺りを見回し、井戸を探すが一つも見当たらない。

「あー、もうすぐジジイんとこ着くから。そこで漁るか、ねだれ。」

「ミナルディ様、漁るのもねだるのも失礼です。」

「ほら見えたぞ、あれがジジイん家だ。」

キムーアの指差す先には村から外れ、こぢんまりと静かに佇む工房があった。

「えええええっ!!!!!?うっそーマジで!?あそこししょーの工房だって!!」

「はっ?」

「だぁかぁらっ、私のししょーの工房だっての!」

アヤタルシェはよほど驚いたのか、その場でぴょんぴょん跳躍する。

「そういえば同じ方向について来てましたね。」

「とりあえず中に入りましょう?」

「そうだな、ジジイに説明してもらうか。」

キムーアがカランカランと工房の扉を開け、中に入る。
しかし工房内には誰もおらず、明かりさえもついていない。

「あっれ?ししょー居ないじゃん。」

「なんや〜、留守なん?喉渇いてしゃあないのに〜。」

「あ!冷蔵庫ある!水、水〜水は「おやめなさいアキルノア、それは盗人と同じ事よ。」

アキルノアが勝手に冷蔵庫を物色し始めたのをジュリーがぴしゃりと厳しく怒る。

「ミナルディ様、こんな物が机にありました。」

「ん?なんだコレ。ナーナリア読んでみろ。」

ナーナリアがキムーアに見せたのは一枚のメッセージカードだった。

「では読みますね、『おバカな弟子へ、俺は野暮用でウォール湖へ行く。そろそろワガママ王女が来るだろうから失礼な事すんなよ。PS:絵画試験は無しっつーことで。』…だそうです。」

「「…あのクソジジイ…」」

珍しくアヤタルシェとキムーアが怒りのハーモニーを言い放った。

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