Sae's Bible
天才!? 画家にはご用心

あれから2時間。
アキルノアはちっとも起きる気配が無いサエをおぶって歩き続けていたが…とうとう限界が来た。

「…あー…無理…ひめさま…やすも…」

「…そうね。いつも顔色が悪いのに更に悪くなっているし。」

「…ははっ…ツッコミする気力もないですって…」

「キムーア、ナーナリア!ごめんなさい…うちの子がへばっちゃって…」

ジュリーは申し訳なさそうにキムーアたちに言う。
キムーアはバテバテのアキルノアを見て、ため息をついた。

「仕方ない、休むか。」

「しかしミナルディ様、休める場所はあるのですか?

「無い、というか知らん。」

「あー…やっぱり。」

ナーナリアが大きくため息をつき呆れていた時、よろけたアキルノアがドンッと誰かにぶつかった。
正確には当たられたのだが。

「ちょっとぉ〜!何してくれちゃってんだよぉ〜!!」

ショートカットの女性がアキルノアを大声で責め立てる。
女性は左手に大きなパレット持ち、やたらとでかい鞄を右肩に担いでいる。
一見、絵の具やらシミやらで薄汚れた身なりの旅人だがどうやら画家のようだ。

「…あ、すんません…あーしんどい。」

「すんませんで済むかいぃっ!!大事な筆が折れたでしょーがぁっ!!よし、私の絵を買って弁償しようか!どん「すみませんけど、どなたかしら?」

キレながらも絵を売り付けようとする画家の言葉を遮り、ジュリーが愛想笑いを浮かべながら丁寧に聞く。

「どなたかって?なんと私はっ!かの有名な天才画家、レオパルド・ヴィンター!!
…の一番弟子、ゼルドー・ゴッフェン!!
…の弟子のアヤタルシェ・ターナーだよーん!!!!」

「え、何コイツ斬っていい?」

「あら不愉快な声だこと。とりあえず攻撃しましょうか。」

「ミナルディ様、いらつくのはわかりますが斬らないで下さい。ジュリー、スタッフを構えて笑わないで下さい怖いです。」

ナーナリアが殺気立つキムーアと黒い笑みを浮かべるジュリーを止める。

「だぁあああああっ!!!もうこいつでええばい、この近くで休める所!知ってるんすかねっ!?
足ヤベーからここから30分以内のトコでお願いしゃーす!!!」

後ろでアキルノアが痺れを切らしたようにアヤタルシェに大声を上げる。

「はっ!?休める所!?あ、あぁこの近くに湖あるとお「せば、あんにゃーしゃんせぇ!!!」

アキルノアは焦りのあまり、物凄い早口の方言でアヤタルシェの言葉を遮る。

「何、アキルノアなんて言ってんの?」

「多分…その湖に行きたいんじゃないですか?」

「じゃあ私たちも行きますか。」

「よし、んじゃ案内しろ筆。」

「筆!?いや筆じゃなくて、私はかの有名な天才画家レオパ「早く案内して下さらない?」 「わかりました。あ、あとで絵は買って!マジやばいから。」


アヤタルシェはジュリーの黒い微笑みに屈し、一行にやたらと自分の絵の説明をしながらウォール湖へと歩き始めた。


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