Sae's Bible
扱いの格差

ジュリーたちがサエの元へ駆け寄るがサエは目を覚まさない。

「なんだ?くたばったか?」

「…いえ、生きています。気を失ったようです。」

ナーナリアが脈を診て、気絶したサエを仰向けにする。

「そう…良かったわ。」

「まぁ…あれくらいで死んでるようじゃあ使いものにならん。おっと、形見形見…。」

そういうとキムーアは玉座の前へ行き、形見を取って来た。

「なんなんですか形見って。」

「ん?あぁコレか。簡単にいえば剣の魔石だ。」

「剣の魔石?」

「先代様の剣についている魔石です。」

「その剣を私が受け継いだということだ。剣自体が形見だから魔石はその一部分みたいなもんだな。」

「ではその魔石を剣に取り付けるのですね?」

「いや、剣は今無い…というより修理に出している。」

キムーアは少し残念そうに魔石をしまう。

「は?いや剣あるじゃん。」

「左の剣はスペアだ。元の形見の剣は鍛治屋の親父に渡してある。」

「なぜ修理を?それに…その方はご無事なんですの?」

「ん?あぁ、剣は寿命だったんだ。それから鍛治屋はウォール村の離れにいるから無事だ。
さて、行くか。」

「え!?どこに!!」

「だぁから、ウォール村だ。」

「私も行きますわ。」

「姫様っ!?」

「ミナルディ様、エトワールさんはどうします?」

「…連れて行く。おい、えー…あぁ!アキルノア、ポニテをおぶって行け。ナーナリアは杖を持て。」

「御意。」
「なんで私がおぶるんだぁああっ!!」

「うふふ、アキルノア黙っておぶりなさい。」

「なんで…私がぁあっ…くっそう…」

アキルノアはぶつくさ言いながらも気絶したサエを背におぶる。

「じゃあ行くぞ。ナーナリア、ジュリー、しんどくなったら言えよ。」

「大丈夫です。」
「問題ありませんわ。」

「いや、問題あるから!!私絶対しんどくなるからね!?」

ツッコミをいれるアキルノアをあっさりスルーし、ジュリーたちはスタスタと玉座の間を出ていく。

「……はぁっ…あー…少し休みませんかぁ…?」

アキルノアが思っていたよりおぶって歩くのは辛く、宮殿の廊下が長く感じる。

「ちょっと!?おーい!!聞いてるぅっ!?」

そんなアキルノアをまた置いて行き、3人はさくさく歩いて宮殿を後にする。

「あー…しんど……体力落ちたかな…」

「おい、きびきび歩け。ここから6時間は歩くからな。」

「はぁあああっ!!?ろっ…6時間んんんんっ!?」

「それだけ叫べれば大丈夫です。」

そういうとナーナリアはスタスタとアキルノアの横を通り過ぎる。

「あなたなら大丈夫よ、アキルノア。」

サエをおぶって立ち尽くすアキルノアを横目にジュリーはうふふふふふと微笑みながらキムーアとナーナリアに続く。

「少しはいたわれぇえええええっ!!!!!」



カロラ中にアキルノアの声がむなしく響いたのだった。


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