Sae's Bible
解き放たれた魔力

「なっ…なにこれっ…!!!」


まがまがしい膨大な魔力が玉座の間全体に満ちている。

中心部に描かれた紫の大きな魔法陣は今も妖しく光り、中央からそびえ立つ黒い魔力の柱はどこかへ繋がっているようだ。

「……よし。まず、魔法陣のえーと…かい…かいそく…?あ、解析!」


サエは魔法陣の近くへ恐る恐る近づき、魔法陣を調べ始めた。

「うーん……オリジン魔法で間違いない…けど…こんな陣、見たことない…。
魔法文字はエデンのじゃないから絶対エデンの魔導師じゃない!」

サエは陣に描かれた魔法文字を見てホッとした。

これで描いたのがエデンの魔導師ではないことがはっきりしたが…オリジン魔法を使う人は限られてくる。


「んー…、一体誰が描いたんやろ。それよりこの魔法陣消さんと。
え〜と消すには陣の中に立って、あー…確か…そうそう、自分の陣を発動させるんや!
よぉし、やるぞーっ!!」

サエが陣を消す為、魔法陣の中央に立ち杖をかざすと突然、紫色だった陣が黒く輝き出した。

「なっなに!?」

陣に描かれていた黒い魔法文字がフワリと浮き、サエの身体の中に入っていく。

「あぁああああああああっ!!!!!!!!」


(何…か、らだがっ…熱い…!!あタ…ま…ガ……イタイ……!!!!)


身体がガクガクと震え、サエは杖を手放し膝をつく。



―…エ………ら…………ない…―


(……誰…?)


曖昧に誰かの記憶がサエの頭の中に流れ込んでくる。


―…おまえが……………を………い……イヤダ…―


記憶の中の誰かがサエに迫ってくる。
そして杖のような物をサエに向けて来た。

(嫌っ…来んといてっ!!)

サエがそう思った途端、記憶は雑音と共に途切れた。

そして紫色の陣がフッと消えると、身体中の魔力が荒波のように暴れ出す。

(いやっ…!!……戻って…!!…戻れ…戻れっ!!!!)

パァアアアアアアッと足元にオレンジ色の陣が広がると、サエの身体は共鳴するかのようにさらに大きく力強い魔力を解き放つ。

「いやぁあああああああっ!!!!!!!!!」

「サエっ!!!」
「おい、ポニテっ!!!」
「エトワールさんっ!」
「何やってんだ!!陣から出ろ!!!」

サエの叫び声を聞き付け、ジュリーたちが駆け付けていた。
しかし…もうその呼びかけはサエには届かなかった…。

「ぐぁああああああっ!!!」

(何かが…外れる…っ!!!)

すさまじいまでの魔力を身体から放ち、サエの周りを5本の黒い鎖が取り巻いている。

その内の1本がキンッと音を立てて崩れ落ちた。

「……鎖?なんだ…あれは…」

「……鎖もですけど…初めに見た時と陣の色が違います。」

「だぁああっ!!なんなんだ!訳がわからん!!とりあえず叩き斬っていいか!?」

「ミナルディ様、落ち着いて下さい。そしてキレないで下さい。」

「一度陣が消えた痕があるわね…。ではあれは…サエの…陣?」

「…姫様、あまり近づいてはダメですってぇ!」


サエのオレンジ色の瞳からは光が失われ、取り巻いている鎖はまがまがしい闇の魔力を放つ。

(身体が動かない…ダメ…力が…勝手にっ!!!!)

「…わ…タ…シ……逃げ…テ……!!」

「みんな!!伏せろっ!!!」


サエの全身から魔力が溢れ、カッと光った次の瞬間!!

ドォオオオオオオオオオッ!!!!!!!!

すさまじい閃光とともに爆発が起きたが、とっさのキムーアの掛け声でジュリーたちは全員無事だった。
爆発の為に巻き起こった砂埃であまり前は見えないが、どうやら暴走も陣も止まったようだ。

「止まった…か…?」

「そのようです……」

「…サエは…どうなったのかしら…?」

「んー…あ!あそこに!!」

アキルノアの指指す方に、サエが倒れていた。

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