Sae's Bible
蕎麦という名の核兵器

「まっだかな♪まっだかな♪晩ごっはん〜♪」

サエが変な歌を歌いながら晩御飯が出来るのを待っていると、ビターンッビターンッバスンッドゴォオオ!!!!っとキッチンから聞こえるはずがない、有り得ない音が聞こえてきた。

「えぇっ!?ちょっ…晩御飯作る時ってあんな音するっけ?
ってか何作ってんのアキルノア!!?」

「蕎麦よ。」

「蕎麦!?えぇっ!!?蕎麦!!?」

「アキルノアは蕎麦マニアなのよ。だから朝、昼、晩ついでにおやつも蕎麦よ。」

「でも蕎麦マニアっていう位やから、蕎麦作るの上手いんちゃうん?」

「気持ち悪いほど蕎麦マニアだけれど…作るのは別よ。」

「えぇ〜…………。」

サエが心配になってきた矢先、
ドガガガガガガガッ!!!!と音はさらに激しく鳴り響く。

「…………なぁジュリー……怖すぎんねんけど…晩御飯…。」

「大丈夫、蕎麦はアキルノアの作るものの中でまだ食べられる物よ。」

「『まだ食べられる』!?
あ、美味しくは無いってことやんな?」

「いいえ、アレは食べられない物体なの。アレを食べたらきっと生きていられないわ。」

ジュリーが物凄い即答で答え、フッと笑う。

「え、何その笑い。
さらに怖いねんけど。
しかも物体って!?生きてられないってどんだけまずいん!?」

サエは初めて晩御飯に対してとてつもなく恐怖を感じた。
するとそんなサエにジュリーが真面目な顔をしてアキルノアの料理について語り始めた。

「まずいまずくないとか、美味しい美味しくないとか…そういう問題じゃないの。
アキルノアの作るものは根本的に次元が違うのよ。
ある意味…料理の極みも軽く通り越しているのよ!!
そして、アキルノアの料理で唯一『食べられるもの』が蕎麦なのよ…残念な事にね。」

丁度その時…

「蕎麦ができましたよーっ!!!
さぁ、食べてくださいっ!!」

食べられる物、蕎麦が完成したらしい。
弱冠ジュリーのいう物体を見てみたいとサエは思ったが、完成した蕎麦を見てやめることにした。
ジュリーとサエは同時に一口食べた。
……………気持ち悪い。
ジュリーの方を見ると即座に水を飲んでいる。
とりあえずアキルノアに聞いてみよう…この…ウネウネした奴について。

「………アキルノア…蕎麦ってさ…こんな…青っていうか…濃い紫っていうか…とにかくこんな色やっけ!?あと上にのっかってるウネウネした奴なに!?」

紫と青、それに黄色がごちゃまぜになったような…おどろおどろしい不気味な色の蕎麦らしきもの。
その蕎麦っぽいものの上でトッピング的なものがウネウネ動いている。

「あぁ、サエはアホだから知らないだろうけど、この蕎麦は特別な蕎麦でね。
なんとアキルノア・ホルスト特製のスペシャル蕎麦なのだっ!!!!」

果てしなくどうでもいい。
だがアキルノアは自慢げにふっふっふっと笑い、さらに言う。

「その名も…
『海を追いかける蕎麦!!ホクリードをのせてinリブラ』です!!
あ、ホクリードっていうのはこの村の特産品らしくてぇ〜結構いい豆だったんで使ってみたらこれがまたいい味出しててねぇ〜!!」

…特産品の豆がなんでウネウネ動くんだっ!!
サエは心の中で突っ込んだ。

「なんせあたしは
『蕎麦マニア公式ファンクラブ 素晴らしき全ての蕎麦を愛する蕎麦LOVEの会』の会長だからね!!
蕎麦マスターといえばあたし!!
アキルノア・ホルストの事!!
蕎麦について知らない事なんてないしね!!なんならサエにも蕎麦について教えようか?今なら3日は…いや一週間は語れるね!!」

アキルノアが物凄い高速でしゃべってくる。
よほど蕎麦が好きなのはわかったが、もうそろそろ黙って欲しい。
さっき一口だけ食べた蕎麦を吐いてしまいそうになる。
サエがふとジュリーの方を見ると、なんだかただならぬ黒いオーラをまとっていた…。

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あきゅろす。
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