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始まりを告げる終りの物語
幽霊と俺の共同生活四十九日目


昨日、俺は本当の気持ちに気づいた。俺は咲夜に恋をしているのだ。今まで恋なんてしたこと無いけど、この気持ちは確かに恋なのだ。そう思うと、日常の景色さえも変わって見えた。
だが、咲夜は今日も現れなかった。
普段と変わらない生活を送り、咲夜がいないことについて一人で愚痴を言いながら、いつの間にか夜10時半になっていた。
「なんか…、腹へったな。」
そう思った俺は近くにあるコンビニへ向かった。


コンビニに行く途中に、小さな公園がある。そこを通ったとき、公園内から誰かに呼ばれた。
「遊人〜。」
誰かと思って見てみると、魁生がベンチに座って、手招きしている。
「なんだよ、魁生。こんな時間になにしてんだよ。」
「それはお互い様だろ。ま、座れよ、遊人。少し話そうぜ。」
俺は言われるがままにベンチに座り、だらだらと世間話をした。ふと、魁生が思い出したように話した。
「そうだ。今日は確か咲夜ちゃんがいなくなる日だな。」
俺はその言葉の意味が分からなかった。
「え?」
「だから、今日は確か咲夜ちゃんがいなくなる日だったはず。」
俺は戦慄した。
「な、なんで…だよ…。」
「知らねえのか?人間の魂は49日間しか地上に残れねぇんだぞ。それで、確か今日がその49日目…。」
俺は魁生の言葉を聞き終わる前に、走り出していた。
魁生はそれを黙って見送ると、木の陰にいる誰かにこう言った。
「これで…、良かったんだろ?」
その誰かは黙ってうなずいた。


俺はとにかく走った。こういうときに咲夜がいる場所はだいたいあの公園だ。俺はダッシュでそこに向かった。
公園に着くと、案の定咲夜がいた。寂しげな表情で月を見上げている。時刻は既に午後11時55分だった。
「咲夜!」
俺は思い切り叫んだ。すると咲夜は振り向き、俺を見て驚いていた。
「遊人…。」
咲夜はその後、俺に向かってこう言った。
「なんでここが?」
「分かるさ。今まで一ヶ月以上一緒に暮らしてきたんだ。それに…、」

「俺達は昔からの親友だろ。そうだよな、絵理菜。」

俺の言葉に咲夜は声を失っていた。
「な、なんで?なんで分かったの?」
「鏡花が教えてくれたんだ。お前が咲田絵理菜だって。」
「そ、そんなこと…。」
咲夜が何かを言いかけた刹那、咲夜の身体が白くひかり、ぼろぼろと崩れ始めた。
「絵理菜!」
俺は叫んだ。無駄だと知ってはいたが、叫ばずにはいられなかった。
咲夜はそれを見ると、何も言わず、微笑んだ。
「じゃあね、遊人。今までありがとう。」
咲夜はあっさりと去ろうとした。
「ちょっとだけ待ってくれ!絵理菜、俺はお前に言いたいことがある。」
俺は深呼吸をした後、静かにこう言った。

「絵理菜、俺は貴女がずっとずっと昔から大好きでした。」

それを聞くと咲夜は一筋の涙を流して、微笑み、こう言った。

「ありがとう、遊人。貴方に会えて本当に良かった。」

そう言うと咲夜は消えていった。最期にこの言葉を残して。

またね。























ご愛読ありがとうございました。次回作にご期待ください。
(・_・;)

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あきゅろす。
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