幽霊と俺の共同生活四十七日目 「私の存在価値はそんなもんじゃない…。」 麻里奈は突然俺を襲ってきた。恨みを込めたような表情に、激しい口調で俺に迫った。 「うあっ!」 俺は押し倒され、麻里奈に馬乗りになられた。 「私の存在価値を、その身体にわからせてあげる。」 そう言うと麻里奈はいきなり俺の唇を奪おうと迫ってきた。 なんでこんなことに…。 鏡花の葬儀が終わった翌日、俺達は何かが欠けた日常へと帰還していた。 いつもの教室のいつもの授業なのに、俺の隣には誰も座っていない。変わりに花瓶と花が机にぽつんと哀しく置かれていた。 みんなの表情も冴えなかった。元気だけが取り柄の魁生や、強気の梨愛すらも元気がない。 だが、そんな状況でも麻里奈は普段と変わらずに過ごしていた。 政宗さんや幸村さんにわがままばかりを言い続けていた。政宗さんはそれをうんざりしながら無視し、幸村さんはしかりつけていた。 麻里奈はそれが気に入らない様子で何かを言い返していた。 昼休み、俺は麻里奈を屋上に呼び出した。 「麻里奈、お前なんで平常心でいられるんだよ。」 「あら、愚問ですわね。私は遊様さえいてくれれば他はどうなったってよいのです。」 「お前…、普通じゃないぞ。頭おかしい。」 「そうですか?私にとっては普通なのですが…。」 「お前…。そんなもん、存在価値ないぞ。生きててもしょうがねぇ。鏡花じゃなくてお前が死ねば良かったんだ。」 「は?」 「お前の存在価値は虫以下だよ!」 俺はハッと我にかえった。さすがに言い過ぎた。麻里奈はうつむき、震えている。 「わ、悪い。さすがに言い過ぎた。」 俺は慌てて謝った。だが、少し遅かった。 「私を…、侮辱したな…。」 いつもと違い、激しい口調で襲いかかってきた。 「ふっ、ざけんなぁ!」 俺は麻里奈を押し返した。麻里奈はそれでもまだ迫ってくる。 「私は、私はぁ!」 もはや元の麻里奈は思い浮かべられないほど、狂ったように迫ってくる。 俺はもうわけもわからず屋上から逃げ出した。それでも麻里奈は追ってくる。 俺は殺されるのではないか、と不安な気持ちになった。誰かに助けを求めたかった。それくらい、麻里奈は恐ろしかった。 俺がある教室の角を曲がったところで、麻里奈は急に追ってこなくなった。 様子を伺ってみると政宗さんが麻里奈を捕まえ、担いでいた。麻里奈は気絶しているようだった。 政宗さんは俺に気付くと、申し訳なさそうに言った。 「悪いな、遊人。こいつはもう学校には来させねぇから。じゃあな。」 政宗さんはそのまま去っていった。 俺はもやもやした気分でいっぱいだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |