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“今”を生きる
幽霊と俺の共同生活四十四日目


鏡花の火葬が行われた。魁生や梨愛が悲しみにくれ、涙を流していた。
そんな中、俺は戻ってきた咲夜の話を聞いて愕然とした。
鏡花は生きようと思えば生きれた。だが、あえてそれをしなかった。
俺はその意味を考えたが、いくら考えても分からなかった。いったいなぜ…。
「遊人…。」
咲夜が寂しげに話しかけてきた。
「なんだよ。」
「あのさ…。鏡ちゃんは―。」
「何も言うな。何も変わらねぇんだからよ。」
「うん…。」
しばらく沈黙が続いた。
「ねぇ、遊人。」
その沈黙を打ち砕いたのは咲夜だった。
「なんだよ。」
「あのさ…、私はあの時に鏡ちゃんのことを引っ張ってでも連れてくるべきだったのかな?」
「…。」
「そうすればみんなはこんなに悲しまずにすんだんじゃないかな。」
「咲夜…。」
「私のせいで鏡ちゃんは…。」
「お前のせいじゃねぇよ。」
「でも…。私が鏡ちゃんをこっちに連れてきていればさ…。」
「言うな、咲夜。」
「でも…。」
「いつまでも後悔してたって先には進めねぇよ。過去じゃなくて今を生きなきゃいけないんだよ。」
「そんなこと言ったって…。」
「うじうじしすぎなんだよ。いつもはそんなキャラじゃないだろ。」
「…うるさいよ。」
「なに?」
「うるさいよ!遊人は分かんないんだよ!目の前で人が死んだ経験が無いから!」
「さ、咲夜?」
「うるさい!もう話しかけないで!」
咲夜はそのままどこかへ行ってしまった。


「そりゃ、誰でも怒るさ。」
俺はことのあらましを魁生に話した。
「そうかな。」
「当たり前さ。お前はデリカシーが無いな。」
「…。」
「ま、お前のいう通り、後悔してたってなんにもならんわな。前向いて生きるしかないな。」
「それで鏡花は報われるのかな。」
「知らねぇよ。死んだやつの声は聞こえねぇから。」
「咲夜に聞いたんだけどさ、鏡花は最期に“ちょっと先に進むだけだ”って言ったらしいぜ。」
「鏡花ちゃんらしいな。俺たちを悲しませないと同時に俺たちを励ましてくれてるな。」
「そんな深い意味が?」
「あるさ。ほら。」
魁生が視線で指す方向には鏡花がいた。ニコッと微笑んでいる。
「ありがとう、遊。またね。」
鏡花はそう言うと消えていった。
俺と魁生はそれに微笑みを返し、
「またな、鏡花。」
と呟いた。

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