幽霊と俺の共同生活四十一日目 梨愛に答えを伝えてから一夜があけた。俺は結局一睡もできずに朝を迎えていた。 本当にあれで良かったのだろうか。 俺はいつまでもその思いに駆られていた。梨愛には悪いことをしてしまった。あそこで俺が断らなければ梨愛は苦しまなかった。しかも今までの苦しみから解放されるというのに。 俺は学校に行く気が起きなくて、またベッドに横になった。いっそこのまま休んでしまおう。そう思って俺は目を閉じた。 「…と、…遊人!」 目が覚めると咲夜が必死に俺を起こそうとしていた。時計の針は既に午後2時を指していた。 「良かった〜。いつまでも起きてこないからもしかして死んじゃったんじゃないかって…。」 「そんな簡単には死なねぇよ。俺だってまだまだ生きたいしな。」 「そう…だね。」 咲夜は驚いたような表情をして、少しうつむいた。何だか気まずい雰囲気になったから、俺は咲夜にご飯を作ってもらうために、咲夜を台所へ追いやった。 「簡単には死なねぇ、か。」 本当にそう言いきれるだろうか。誰もいなくなって再び静寂に包まれた部屋は、しんしんと冷たく俺を責め立てた。 どうしてあの時ああしなかったんだ。どうしてあれをやってしまったんだ。 過去の事象が後悔となって押し寄せてきた。俺はいつの間にか弱気になっていた。 咲夜にご飯を作ってもらったから、俺は一階に降りた。何でかは分からないが、俺は泣きそうだった。そのせいか、食卓も暗かった。 「なあ、咲夜。」 「何?」 「あのさ、俺は…まともな人間かな?どこかで卑劣なことをやってたんじゃないかな?俺は…生きていても良いのかな?」 「そんなの…、当たり前でしょ。生きていていけない人なんていない。そうじゃない?」 「でも俺は、梨愛を傷つけた。目に見えない深い傷を負わせてしまった。俺はこの先、これをどうやって償えばいいんだ?」 「償う必要はない。梨愛だってそんなの望んでないよ。」 「でも…。」 「いつまでもうじうじしない!過去には戻れないんだから、未来を生きていかなきゃ。」 「梨愛とは、どうすればいいんだ?」 「お互いに理解しあって、元の友達の関係に戻せばいいのよ。難しいし、時間がかかるけど、できないことじゃないでしょ?」 「そっか…。そうだよな。済んだことで悩んでも仕方無いよな。」 「そうそう。前を向いて、歩いていこうよ。」 「そうだな。ありがとな、咲夜。迷いが晴れたよ。」 俺が礼を言うと咲夜はニコッと笑った。 このまま、時間が止まってしまえば良いのに… 咲夜は心の中でそう思っていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |