幽霊と俺の共同生活四十日目 昨日の出来事から1日。俺はどうすればいいか分からず、悩みに悩んでいた。あの時、俺はどう返事すれば良かったのだろうか。わからなかったから、明日まで待ってほしいと梨愛には言ったが、正直、迷っていた。 確かに梨愛は良いやつだし、俺も恋愛感情は無いにしろ、友達としては大好きだ。 だが、俺には昔からずっと約束をしている女の子がいる。もう12年も前のことだ。その子は引っ越してしまったが、いつも遊んでいた公園で「将来絶対に結婚しよう」と約束をした。だが、その子とは未だに再会していない。 「そりゃ、お前、贅沢な悩みだな。」 俺は自称恋愛マスターの魁生に相談してみた。わずかでも解決策がほしかったからだ。 「どういう意味だよ。」 「まあまあ。ところで、咲夜ちゃんは居ないのか?」 「ああ。昼休みだしな。屋上にでも行ってんじゃないか。」 「それなら好都合。いいか、よく聞けよ。」 「なんだよ。」 「その恋愛シュミレーションゲームみたいな展開の再会とかあると思うか?まず無いぞ。」 「わかんないだろ。その子だって待ってくれてるかもしれないだろ。」 「いや、まず無いね。だいたい、12年もたってんだ。あっちは顔も覚えてねぇと思うぜ。」 「そんなわけ無い。」 「それはお前の妄想だ。実際にそんなことは起こり得ない。」 「お前に何が分かるんだよ!」 「過去にばっかり固執して、今大切に思ってくれている人を見捨てるのか!」 「そんなことは言ってないだろ!」 「いーや、同じ意味だね。お前は過去から歩みを進めていない。今を生きていないんだよ。ロマンチック?そんなもんは犬にでも食わせとけ。今だ、今しかないんだよ。」 「お前…。」 「良いのかよ。前進しないままでよ。梨愛はお前に告白するとき、一歩前に踏み出したんだ。お前はどうなんだよ。お前はなにもしてない。違うか?」 「…。」 「これは忠告だ。後ろじゃなく、前を見て歩け。そうしねぇとぶつかるぜ。」 「…。」 俺は何も言えなかった。魁生の言うことはもっともだし、正論なのだろう。だが俺は納得できなかった。過去はどうでも良いのか?それなら俺は生きている価値など無いのではないか。 そう思うと梨愛とのことを申し訳なく思ってきた。でも、俺はやっぱり―。 「梨愛、昨日の答えなんだけど…。ごめん。俺、今好きな人居るから。」 俺は結局過去を選択した。梨愛は無理に笑顔を作り、「分かった。」と言った。俺はもう一度ごめんと謝って、その場を去った。少したつと梨愛の泣き声が聞こえた。 「ごめん…、梨愛。」 俺は呟いて、歩を進めた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |