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酷薄《告白》
幽霊と俺の共同生活三十九日目


朝10時。
「遊人、お客さんだよ。」
咲夜の声で目が覚めた。呼び鈴が家中に響いている。
「客?誰だよ…。まだ眠いんだよ…。」
俺は重い体をゆっくりとおこし、私服に着替えた。そして部屋のドアを開け、階段を下りて玄関へと向かった。
「あいよ、どちらさん。」
玄関のドアを開けるとそこには梨愛と鏡花が立っていた。
「おう、梨愛、鏡花。おはよう。どうしたんだ?こんな朝早くに。」
「別に早くないわよ、遊。ところで今日暇ある?一緒に海浜公園に行かない?」
「あー、悪いな。今日は寝る予定でびっしりだ。」
「暇ならいこうよ。私も行ってみたいな。」
咲夜が横から入ってきた。その目はキラキラと輝いている。
「オレからもお願いだ。一緒に海浜公園に行こうぜ。」
梨愛も誘ってきた。かなり珍しいことだ。これは行かないわけにはいかない。
「わーったよ。準備するから少し待ってろ。」
こうして、俺と咲夜と梨愛と鏡花の四人は海浜公園へ向かった。


海浜公園に着くと、日曜日とあってかなり人がいた。走っている人、休んでいる人、歩いている人などたくさんの人がいた。
「オレ、ちょっとトイレ行ってくる。」
梨愛は一人でトイレに向かった。すると、鏡花が近づいてきて、俺にこう言った。
「遊、あなたにとりついてる幽霊、ちょっとだけ貸してちょうだい。」
「え?何でだよ。」
「いいから。」
「わーったよ。つーわけだ、咲夜。」
咲夜はだまってうなずくと、鏡花の背中についた。
「それで、あなたは梨愛と行動しなさい。いいわね。」
鏡花はさらに続けた。
「はぁ!?何でだよ。」
「いいから。」
俺は不審に思ったが、とりあえず鏡花のいう通りにした。


鏡花と咲夜がいなくなった後、ちょっとしてから梨愛がトイレから帰ってきた。
「あれ?鏡花は?」
「どこか行ったよ。今から探しても無駄だし、とりあえず歩こうか。」
「お、おう。」
俺と梨愛はなんの目的もなくその辺をぐるぐると歩き続けた。
しばらくすると、急に人気が無い場所に出た。周りは木が生い茂り、マイナスイオンのきもちいい空気が辺りを覆っていた。
俺は一回深呼吸をして、梨愛に向かってこう言った。
「きもちいいな〜、なあ梨愛。」
だが、梨愛からの返事はなかった。不審に思った俺は梨愛の様子を伺ってみた。うつむいて、立ち尽くしている。
「梨愛?」
俺の呼び掛けにも反応はない。
だが、次の瞬間、梨愛は顔を上げた。その顔はなぜか真っ赤だった。そして何かを決心したようだった。
「遊人!」
突然呼ばれてびっくりした。梨愛は何かを伝えようとしているようだ。
「驚かないで聞いてくれ。オレ…、オレは…。」
梨愛は一度うつむき、再び顔を上げて言った。
「オレは…遊人、お前が…、お前のことが―。」


好きだ。


生まれて初めて、恋の始まりを見た気がした。

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あきゅろす。
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