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フキゲンのパレード
幽霊と俺の共同生活三十五日目


咲夜は朝から不機嫌だ。しばらくこんなこと無かったのに。恐らく不機嫌な理由は昨日のことだろう。
昨日、梨愛にそっくりなアイドルの荒川結愛に会い、いろいろと話をした。
咲夜はそれが気に食わないのか、その時から口をきかない。いったい何が悪かったのだろうか。俺には見当もつかなかった。


「そりゃ、嫉妬だろ。咲夜ちゃんの遊人を独り占めにしたい、独占欲だな。」
昼休み、魁生に相談したところ、こんな答えが返ってきた。俺はそれを少し疑い、言い返した。
「そんなわけ無いだろ。幽霊が嫉妬なんかするかよ。」
すると魁生は「分かんないぜ。」と否定し、言った。
「咲夜ちゃんはかなり思念が強い霊体だからな。もしかすると…。」
「お前…、そんなことまで分かるのか?本当は霊能力者なんじゃないのか?」
「違うよ。ちょっと知り合いにそれ関係の人が居るから、知ってるだけさ。」
「ふ〜ん。てか、お前っていつから咲夜のこと見えてたんだ?」
気になったので、俺は魁生に聞いてみた。魁生は少し考えて、言った。
「えっと…、たしか三週間くらい前だな。」
「そっか…。そういや、知り合いって何ていう人だ?」
「それは言えないな。」
「何でだよ。何かわけがあるのか?」
「ああ…、ちょっとな…。」
「そっか。ならいいや。おっ、もう時間だな。俺は席に戻るよ。じゃあな、魁生。」
「ああ。」
俺は魁生の元を離れ、自分の席に戻るとさっきの会話を思い出していた。
魁生が話せない事情って何だ?何か裏があるんじゃないか?
まあ、考えても仕方無い。頭をあげると、目の前に咲夜が膨れっ面で浮いていた。
「うおっ!」
俺は大声を出さないように小さくびっくりした。咲夜の膨れっ面は直らない。
「なんだよ?」
俺の質問にも咲夜は答えなかった。相変わらず膨れっ面をしている。
何かを訴えているのだろうが、その意図は全く読めなかった。さらに悪いことに、俺はすごく鈍感なのだ。意図が読めるわけがなかった。
しばらく咲夜は俺の前にいた。授業中も邪魔をしてきた。黒板に書かれたものを写していると、わざと俺の前に来て、写させないようにしてきた。俺は授業中終始イライラしっぱなしだった。

最近の咲夜は何だかおかしい。他人と話していると、大事なところで邪魔してくるし、授業中でも機嫌が悪いと邪魔をしてくる。今までこんなことは無かったのに、どうしたのだろうか?
そこで、ふと魁生の一言が思い出された。
「嫉妬だろ。」
まさかとは思いつつも、俺はいつの間にか咲夜が嫉妬をしていると、どこかで思っていた。

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