[携帯モード] [URL送信]
アイドル来襲
幽霊と俺の共同生活三十四日目


朝から校門前に人だかりができている。俺は咲夜と顔を見合わせた。
「何かあったのかな?」
咲夜が尋ねてきた。俺は首をかしげ、わかんねぇ、と返した。
今日は特にイベントも無かったはずだ。いったいなんなんだろう?
それは近づけば近づくほど、明らかになってきた。人だかりの中心には他校の制服を着た女子が居る。その顔は梨愛にそっくりだった。
最初、俺はそれが梨愛じゃないと気づかずに、話しかけた。
「何やってんだよ、梨愛。ほら、早く学校行くぞ。」
俺はその女の子の手を取って、校舎側に行こうとした。だが、
「やめてよ!私に触らないで!」
その女の子は俺の手をふりきった。
俺は驚きを隠せなかった。
「今、私、って言ったか?」
いつもは“オレ”と自分で名乗る梨愛が、“私”と言ったのだ。驚かないはずがない。
「はぁ!?当たり前でしょ。だって私は女の子よ。」
「お前、梨愛じゃないのか?」
「梨愛?違うわよ。それは私の影武者。私はASC42の荒川結愛。これでもセンターよ。」
「荒川…?何でアイドルがこんなところに居るんだよ。」
「あら、言い質問じゃない。いいわ、教えてあげる。実は…。」
結愛は人目を気にしてか、少しためらったが、話を始めた。
「実は私、この学校に会いたい人が居て…。」
「会いたい人?恋人とか?」
「そんなんじゃないわよ!その…、月神遊人っていう人に…。」
「ああ、それなら俺だよ。」
「えっ!あなたが!?期待してたのと全然違う…。」
「悪かったな。」
「いや…、アハハ。」
「で、なんの用だよ。」
「ここじゃちょっと…。そこの木の下に来てちょうだい。」
俺は言われるがままに木の下に移動した。
「あの…、この間私が逃げたときに捕まえたのってあなた達でしょ?その中にいた梨愛が私の代理をしてくれたって聞いて、あの後もたまに会ったりしてるの。それであなたの話を聞いて…。」


咲夜は嫌な予感しかしなかった。これは、遊人がかなりおいしいパターンだと。自分より大切にしたい人が出てくるのではないかと、不安になった。
だから、邪魔をしたくなった。目の前のおいしいシーンを真っ黒な墨で塗りつぶしたかった。これが漫画とか小説だったら、ビリビリに引き裂きたかった。
でも、そんなことはできない。だから、咲夜は結愛の上に毛虫を落とした。
「私ね、あなたの事…。」
「おい!頭に毛虫ついてるぞ。」
俺はとっさに結愛の頭の上の毛虫をつまんで投げた。そして、怯える結愛をだき抱え、咲夜を睨んだ。
「もう…大丈夫?」
結愛は泣きそうな声で話した。俺は優しく、
「ああ、もう大丈夫だ。」
と言った。すると、結愛の表情はパッと明るくなり、
「ありがとね、月神君。」
と言い残して、帰っていった。
咲夜は不機嫌になっていた。


[*前へ][次へ#]

34/49ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!