幽霊と俺の共同生活三十日目 「いやぁ〜、明日から休みだな〜。咲夜、明日はどうする?」 花の金曜日とあって、俺のテンションは高かった。土日に何かやりたいことがあるわけでもないが、何だか休み前となるとテンションが上がってしまう。 そのせいか、いつもは聞きもしない質問を咲夜にしてしまった。いい返事が返ってくるわけでも無いのに。 「ゲームやろ、ゲーム。『はに☆すて』やろうよ。」 咲夜はよっぽどそれにはまっているようだった。 「しょうがないな…。明日は晴れだって聞いたのに。」 「だって、外は寒くなってきてるもん。」 「まだ九月後半だぞ。」 「でも、めんどくさいんだもん。休みたいし。」 「幽霊のくせに一丁前に…。」 「うるさい!だってあのゲーム面白いし、脚本が…。」 「それは何回も聞いたから聞きあきたよ。脚本担当の人がすごいんだろ。」 「そう!あとキャラデザが室田邦光だしね。」 「知らん。」 「少しは興味持ってよ〜。」 「全く興味無い。」 「む〜。」 「そうだ、そんなにゲームが好きなら明日買いに行かねぇか?金はあるからさ。」 「え…、い、いいけど…。ホントに?」 「ああ。俺は約束は破らない男として有名だからな。」 「え〜、嘘つかないでよ。本当は違うんでしょ。」 「バカ言え、本当だ。それで、何がほしいんだ?」 「う〜ん…。」 咲夜は少し考えていた。真剣に悩む姿は人間の少女とほとんどかわりがない。だが、少しだけ宙に浮いているところとか、靴を履いていないところとかはやはり違うのだが…。 「そうだ!イノセントクラインのゲームがあったんだ!たしか名前は…、そう、『イノセントクライン〜最後の物語〜』。」 「よし、分かった。それだな。値段はいくらくらいするんだ?」 「え〜と、7500円前後かな。機種はQT−4。」 「QT−4か…。てか、高いな、オイ!」 「仕方無いよ〜。だってそれはアニメ一期終了後に作られた、ゲーム完全オリジナルストーリーで、超高画質、超高音質、スタッフ、キャストもアニメと全く一緒の作品なんだもん。」 「おぉ…、よくわからん…。」 「もう。明日は絶対に買ってよね。初回限定版には高松康完全書き下ろし、アニメオリジナルブックマークがついてくるからね。」 「それって、いつ発売されたんだ?」 「今日だよ。」 「はぁ!?今日!?マジかよ!?」 「うん。」 「じゃあ明日なんか買えるわけねぇじゃん…。完全に詰んだ…。」 「大丈夫だよ。」 「何で言い切れんだよ。」 「だって、初回限定版は100万枚生産されるから。」 「多っ!」 「だから、大丈夫だよ。あー、明日が楽しみ♪」 咲夜は上機嫌だった。ニコニコと笑いながら、歩いている(?)。そんな表情も普通の女の子のようで、俺は少しだけドキッとしてしまった。 そんなくだらないやりとりをしながら帰った、はなきんの夕暮れだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |