[携帯モード] [URL送信]
今でも私は貴方を愛しているのです


ああ、どうして。
商店街で久しぶりに君の姿を見付けた。傍らには可愛らしい女性。いつも不機嫌そうに眉間に寄せていた君の顔は見た事もなく嬉しそうに顔を綻ばせて。
なんで、なんで、なんで、嫌だ。
渦巻く黒い感情。きっと顔は醜く歪んでいるのだろう。
ああ。見たくない、この場から離れたい、会いたい、話したい、あの女が邪魔だ。
ぐるぐるぐる。感情が回る回る回る。視界も揺れてぼんやりしていた。


お互いの為に別れましょう。
そう言った自分に彼は二、三度瞬きをした後。
お前がそう望むなら。
と、あっさり頷いた。
少しは渋ってくれると思っていた。どうしてだと怒って理由を聞いてくれるかと思っていた。嫌だと、言ってほしかった。
結局、好きだったのは自分だけだったのかと悲しくなった。


もう、そろそろこの場から立ち去らなければ。
だってまだ仕事の途中だ。電車に乗って、資料をまとめて、書いた企画書を上層部に提出して、
ふと俯いた顔を上げればギョッとした彼の顔が見えた。あ、この顔も見たことない。あの女にはどうしてそうも感情を見せるんだろう。
目を反らせなくなってじっとぼんやりした視界で彼の顔を見ていると、その顔が段々近くなってきて、怖ず怖ずと伸ばされた手は…ん?伸ばされた?、自分の頭にのせられた。のせ、られた?

「お前、大丈夫か?」

久しぶりの彼の声。淡々と喋っていたあの頃とは違い、その声は焦りを含んでいた。
久しぶりですね。
そう言いたかったのに出てきたのは涙と鼻水を啜る音だった。


今でも私は貴方を愛しているのです。





[前へ]

[次へ]



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!