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夏は過ぎ



俺が一番好きな季節がやって来る。



そして



風に乗って



どこからともなく



金木犀の香り。
















Letters〜キヲク〜
















俺は、この金木犀の香りが大好きだ。



―コンコン



「はい」



―ガラッ



「和也くん、点滴代えるわよ」

「はいっ…」



だけど、病院から外に出してもらえるのは月に一度だけ。

だから、

すぐそばにある川沿いの金木犀の側まで行けるのは、月に一度のチャンスだけ。



だけど



金木犀の香りは風に乗ってやってくる。

だから、それだけで少し幸せに感じる。





『うぁ〜〜〜〜ん!!』





「っ?」



外から子供が泣いた大きな声が聞こえた。

ゆっくりとベッドから立ち上がって、窓を開けて少し覗いた。



多分、隣りにある幼稚園の園児が転んだか何かをしたんだろう。

保育士の人が大丈夫かと声をかけている。



『狽」おっ!裕翔大丈夫か?』

『うっ‥ぐっ、ヒック…‥だぃ、ジョッ‥ぶ…』

『よぉし!エライ!それでこそ男だ!』



そう言って、赤西さんはニカッと笑った。



ここから、あの人を見つめることも俺のもう一つの楽しみ。

話したこともないし、目と目が合ったこともないけど、赤西さんがどんな人かなんて、子供達と接しているのを見てるだけで分かる。

名前を知ったのは、こないだ赤西さんが幼稚園の花瓶を割っちゃったみたいで、園長先生らしき人に大声でこっぴどく叱られてたから。



あの人の笑顔を見てるだけで、笑顔になれる。

ドキッとする。




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あきゅろす。
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