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あんな顔
させるつもりなかったのに…
―Moon crying
「っ……ん‥」
朝自然に目の覚めた俺は、いつも隣にある温もりがないのに気付いて辺りを見回した。
「そうだ…昨日喧嘩したんだっ‥?」
布団の上に矢印に見立ててマニキュアとかが置かれていた。
それは床まで続いていて、辿っていけばそこには今夜のパーティー用の衣裳があった。
「これ…」
亀が座長をつとめる「Dream Boys」が賞に輝いて、今日はそのパーティーが開かれる。
亀に来てほしいって言われてたのに、昨日の夜まで生返事しか返してなかった俺は、昨日の晩亀にせまられてついイラッとしてしまって喧嘩になった。
「……っ?」
横に小さな紙切れが置いてあって
“昨日は喧嘩してごめん
今夜のパーティーで着てほしい”
センスはさすが亀といえるものだったけど、やっぱり賞がらみのパーティだからか、キチッとしたスーツで形にはまりたがらない俺には少し物足りなくて…
「…―」
結局俺は、ジャケット以外は全て変えてしまった。
その夜パーティー会場へ向かい、ドアマンにドアを開けてもらえばお洒落で華やかな雰囲気が漂っていて、入ってすぐウエイターにシャンパンを手渡された。
会場を見渡せば著名人と言われる人や、芸能リポーター。知ってる顔がちらほら。
「赤西さんですか?」
「っ、あぁ‥」
「私雑誌“Black cherry”編集長の望月と申します」
そう言いながら名刺を渡される。
「ぁ、ありがとうございます…」
正直こんなことしてる場合じゃなくて、亀を探さないと
「赤西さんはなぜこのパーティーに?」
「ぇ…えと」
「‥亀梨さんに招待されました?」
「ぁ、はいまぁ‥」
辺りを見回していると、人の波間から亀が見えた。
インタビュー的な会話も右から左で曖昧に返事を返していた。
「…じゃあ私はこれで」
「あ、はい…」
俺の態度に気まずくなったのか会話は早々に切られ、軽くお辞儀をすませると、亀の方へ歩み寄った。
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