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この四角い世界の上で
snow white

すっげー疑問。
どうして子供は休みの日ほど早起きするんだ。
平日にはどれだけ叩き起こしても寝ぼけ半分でいるのに、どうして日曜朝の7時から始まるテレビはしっかり目を覚まして見るんだ。
7時なんて、普段起きる時間より早いのに……ありえねぇ。休みの日くらい、ゆっくり寝てろ。
あとこれも疑問。
どうしてガキは雪が降るとここまではしゃぐんだ。

銀世界となった公園を元気いっぱいに走り回っている誠と橙南を遠目に眺め、宇井は呆れ混じりの溜め息をついた。


「まことー!こっちのがまだあとついてないよー」
「マジ?よーっしつぎはそっちだー!」


日曜の早朝、近所の公園にやってきた宇井達。昨日の夜から降った雪は積もりに積もって、銀世界を作り出していた。
誠と橙南の2人は、誰の足跡もついていない雪を探しては、そこに自分達の足跡をつけていく。雪の深い場所ではダイブして体の跡もつけている。
走り回る2人は、犬もびっくりするほどの喜び様で、それを眺める宇井は欠伸をした。


このぶんだと双子はまだまだ帰りそうにない。家に帰っても別に予定もないし、もう暫く遊ばせておくかとベンチに座れば冷くて反射的に立ち上がる。
仕方なくベンチに座る事は諦めて、ポケットにいれてきた使い捨てカイロを握りしめると、温かさがじんわりと指に伝わった。
いつもならカイロなんて持たないのに、家を出る直前に何となくで持ってきたものだったが、予想以上に重宝している。むしろ、なかったら持ってこなかった自分を呪っていた。


「(おまけに眠てぇし…)」


欠伸をまたひとつして腕時計を見ると、やっと7時を過ぎたところ。眠気も残っていて当り前だと納得、続いてひょいと体を横にずらせば、今さっきまでいたとこを雪玉が飛んできた。
避けていなかったら確実に当たっていた。


「残念だったな」
「チッ、きづかれたか」


コントロールはまぁまぁだと思いながら悔しそうな顔をする誠を振り返った。


「俺に雪玉ぶつけようなんて、100年はえーんだ、よ」


もう1度体をずらした直後、またも後ろから雪球が後ろから飛んできた。今度は橙南だ。


「うわっ!」
「あ、まことだいじょうぶ!?」


突然現れた雪玉に、誠は驚いて見事顔面で受け止める。

最初の誠は囮で、橙南の雪球が本命の連携プレー。
よく考えたと褒めてやるが、残念。お前等の考える事くらい、お見通しだと舌をだす。


「ちくしょー!あたってくれたっていいじゃん!」


そう言いながら、誠は髪にまで飛んだ雪を払い落として不機嫌そうに口を尖らせた。


「バーカ。わざと当たってテメェ等喜ばせる程、俺も世の中も甘くねーんだよ」
「おとなげない…」
「ってゆーか、あたしたちまだまだこどもなんだけど」


文句たっぷりな目でこっちを見る2人に、こめかみがピクリと動いた。
元服があった時代は、15才で大人の扱いだったが平成の今は20才で大人。そうなると、自分はまだ子供という事か。


「げっ!?父さん、なにつくってんだよ!?」
「決まってんだろ。雪玉だ」
「ゆきだまより、おおきくない!?ボールくらいあるよ!?」
「こいつを圧縮すりゃーボールはボールでもテニスボールくらいになるんだよ。その代わり、威力は倍増しだけどな」


ニヤリと悪役そっくりな顔を見せてやると、途端に誠も橙南も顔を青くさせて逃げ出した。

必至に逃げてるが所詮は子供。今追いかければリーチの長さが違いすぎて、すぐ追いつける。
あっという間にゲームオーバーじゃつまらない。

向こうも。
こっちも。


「(8……9……10……)」


ゆっくりと10秒数えて、十分な距離ができるのを待った。
極限まで圧縮した雪玉は、もはや氷玉。こいつが当たればひとたまりもないのは確実。左手に構えてニヤリと笑った。


さーて。雪合戦のスタートだ。




あきゅろす。
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