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この四角い世界の上で
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もう梅雨の時期も終わってもいいんじゃないかというこの頃だが、空にその気は全くないようで今日の天気も雨。

幼稚園を高木に迎えてもらった誠と橙南は、家に帰ってきてからずっとリビングの出窓に貼りついて、しとしと降り続ける雨を眺めている。

玄関の傘立てには今帰って来た高木と双子のだけではなく、宇井の傘も入っていた。朝はまだ雨が降っていなかったから、持ったつもりが忘れてしまったのだろう。
この雨の中を傘なしで帰ってくるのは大変だよなと思った双子は、どちらからともなく、相手を見て。


「なあ、橙南。いまなにおもってる?」
「たぶん誠とおなじこと」


誠と橙南は双子だからか、思考回路が似ている。片方が何かを思えばもう片方も同じ事を思っているというのはよくあることで今回もそうらしい。
にこっと笑うと同時に叫んだ。


「「むかえにいこ!」」


傘を持っていない宇井はきっと困っているに違いない。
いつもは迎えに来てもらうけど、今日はその逆で自分達が迎えに行こう。

そうと決まれば双子は玄関に走って、お揃いの長靴と傘、それに宇井の傘を持って外にでた。





「おーいツインズ。今日の夕飯は俺が腕によりをかけて…あれ?」


誰もいないリビングに、高木は首を傾げる。
さっきまでここにいたのに。2階にあがったのか?と思ったところで、ハッと気付く。

もしかしてと思って玄関に行けば、予想通り双子の長靴と傘、それに宇井の傘がない。2人は宇井を迎えに行ったのだ。


「全く、あのツインズ」


はぁ、と溜息をついた高木は傘立てから最後の1本、自分の傘を取って外に出た。

宇井を迎えに行こうなんて、優しいことしてくれるじゃないか。
幼稚園の子が思いつくことじゃないぞ。

顔はニコニコしている高木だが、後ろ手に閉めたドアは随分乱暴な扱いを受けていた。おまけにこめかみにはうっすらと血管が浮いているではないか。

高木が切れるその理由は。


「(あのバカ共が。お前等、幼稚園までの道しか知らねーだろ!)」



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