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バーンビート
5


キーストーンによるエネルギーチャージの完了と人工的な宇宙が創りだされるのを意味する輝きに、ガルバトロスは『おお』と感嘆の声をあげて、バーンビートX達は阻止しきれなかった悔しさで顔をゆがませる。
光を放ちながら、扉がゆっくりと開かれる。この先にあるのは文字通り新たな宇宙、新世界。そこの支配は宇宙の支配で、ガルバトロスが長年夢見続けてきた事――

と、部屋全体を強い揺れが襲った。
扉が徐々に開かれるにつれて振動は大きくなり、壁や床が崩壊を始める。その振動の強さはバーンビートX達でさえ踏ん張らなければいけないほどで、たまらずスカイヤーズは宙に浮く。
これで揺れの影響を受けないと一安心したのも束の間、今度は強い吸引力に襲われた。


『何だ!?』


スカイヤーズは自分のカメラアイを疑った。
あれはブラックホール!
ビッグバン発生装置の扉の隙間が、まるでブラックホールの様にありとあらゆるものを吸い込んでいくのだ。1度吸い込まれた最後、光さえ脱出できない死のホール。

宇宙空間にいる時は何よりも注意していたのに、まさか地球上でブラックホールに遭遇するとは思わなかったスカイヤーズは焦る。
どんどん引き込まれていき、フック付きワイヤーを発射させてどこかに掴まろうにも、発射した瞬間、ワイヤーは扉の引きこむ力に負けてしまうだろう。

ああ、こんなことならもっと強くなるべきだった。
パワーよりスピードを重視したのを後悔して死を覚悟していると、バーンビートXの叫び声が聞こえた。


『スカイヤーズ!掴まれ!』


バーンビートXが差し出した手をスカイヤーズはがっちりと掴む。
しっかり繋がれたのを確認したバーンビートXは『よし』と呟くとスカイヤーズをたぐりよせて、スカイヤーズがブラックホールの餌食になるのをなんとか阻止することができた。


『バーンビートX、トウヤは!?』


スカイヤーズは真っ先に尋ねた。先程現れたバトルクロウに、ディアとアブロだけでなくトウヤも乗っているのはスカイヤーズのセンサーでも確認できていた。
まさか扉の中に!?と青ざめるスカイヤーズにバーンビートXは『大丈夫だ』と向こうを指差す。バーンビートXが指した先には、プロファイターがバトルクロウを抑えつけるようにして守っている。

ホッと胸を撫で下ろすスカイヤーズにバーンビートXはほほ笑むと、すぐに険しい顔つきに戻る。この状況は最悪の状況で、今すぐにビッグバン発生装置を止めなければ、扉の向こうにあるブラックホールは地球もろとも全てを吸い尽くすに違いない。


『ガルバトロス!これがお前の言っていた宇宙の支配なのか!』


バーンビートXはガルバトロスに向かって叫ぶ。
ガルバトロスは扉の正面に立っているにも関わらず、この引力の中、1ミリたりとも引き寄せられていない。
扉が完全に開くのを待つその背中に、ギーグルが『ガルバトロス様!』と声をあげる。その声からは、ガルバトロスの宇宙支配に感極まっているのではなく、危機的状況に追い込まれて切羽詰まった様子が伺い知れた。


『ガルバトロス様!計算以上のエネルギー量で制御しきれません!これでは我々もろとも何もかも全てが扉に、ブラックホールに吸収されてしまいます!』


この引力にはギアーズも逆らえず、一瞬でも気を抜けばたちまち扉に引き込まれてしまう。必死に堪えて主に訴えるも返事はない。
何の反応も見せないガルバトロスに戸惑いを隠せないでいると、ガースが姿を現した。


『ガルバトロス、お前さんはそれでもこの宇宙の支配者になりたいのか』


喜ぶのでもなければ非難するのでもない。ただ事実を確認するように言ったガースを、ガルバトロスはゆっくりと振り返る。


『そうだ』


抑揚のない声は、その場にいた全員の恐怖をぞわりと掻き撫でた。
恐い。
何が恐いなんて考えるよりも恐怖が先行する。
脳に直結する恐怖、ギアーズも初めてガルバトロスに恐怖を抱く。


『――――――それが俺の望み』


ガルバトロスは何か呟いた後、扉に一歩近づいて扉の向こうを見た。そこにあるのは新たな宇宙か虚無の世界か。
何を見たのか解らないが、決意したガルバトロスは振り返るとバーンビートの名を呼んだ。


『バーンビートじきに扉は完全に開く。その前にこの扉を破壊しろ』
『!?』


今、ガルバトロスは何と言った?
信じられなかったのはバーンビートXだけではない。プロファイターもスカイヤーズも部下であるギアーズさえガルバトロスの発言に、聴覚回路を疑う。
呆気にとられているバーンビートX達をガルバトロスは愉快そうに笑った。


『どうした。このまま発生装置を破壊せずに放っておけば、全宇宙が崩壊するのは知っているだろう。宇宙の平和と命を守る宇宙防衛機構が何もせずに見ているだけでいいのか』
『っ!ガルバトロス、まさかお前は最初からそのつもりで!』


バーンビートの叫びにガルバトロスは肯定も否定もせず。


『この宇宙の支配者は俺だ』


そう言い残し、自ら扉の中に消えた。主を思うギアーズの叫び声すらブラックホールは吸い込み、威力が増した。このままではバーンビートX達も地球も吸い込まれてしまう。
そんなこと。


『『『決してさせない!』』』


例え自分達がどうなろうと、この宇宙は絶対に守って見せる。
決死の覚悟の下、バーンビートX、プロファイター、スカイヤーズは立ち上がって、全エネルギーを最後の一撃に集中させる。


『バーニングバードアターック!!』
『スパイラルフィニッシュ!』
『ウイングハリケーン!』


3つの力が1つになってビッグバン発生装置を直撃する。しかしあとほんの少しだけ足りない。3人の全エネルギーをもってしても、ビッグバン発生装置を破壊するには、あと少しだけ足りないのだ。


『プロファイター!スカイヤーズ!諦めるな!』
『言われなくても!』
『絶対に破壊してみせる!』


エネルギーが足りないと解っていても最後まで諦めないバーンビートX達を見て、放心していたギアーズも立ち上がると両肩のブラスターを唸らせた。
地球を守るのではなく、ガルバトロスの最後の命令を実行する為に。


『うおおおおおおっ!!』


ギアーズの咆哮をあげたエネルギー砲が加わり、終に強固なビッグバン破壊装置が限界を超えた。眩い光と衝撃波が周囲を覆う。
光の強さはとても人間が直視できるようなものではなく、衝撃波でバトルクロウが激しく揺れる。トウヤは必死にコックピットにしがみついて振動に耐え、光を見ないよう固く目を瞑るも、その瞼の向こうに眩しさを感じていた。



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