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バーンビート
3


防衛軍に連行されたバーンビート達は広い車庫に連れてこられた。普段なら軍車両や軍用機が収められているであろうその場所は、バーンビート達が連行されるのを想定されていたため、バーンビート達を調べる様々な機械と科学者、さらに銃装備の軍人までもが集まっていて、トウヤをぎょっとさせた。

拘束を解かれたバーンビート達は、すぐさま彼等を構成する物質、内部組織、シグナル、思考回路などを検査(ファイヤーとスカイヤーズに言わせれば実験だ)された。

しかし、人間達が調査に使うあらゆる機械をもっても、彼等のことは何一つ解らない。でてくるもの全てが分析不可能で、科学者達は信じられないと困惑し、トウヤは当然だと科学者達に舌を出す。
バーンビート達と一緒にいたトウヤも、X線やCTスキャンからサーモグラフィーまで様々な検査を受けていた。ひょっとして自分の正体がばれてしまうのではないかと焦ったトウヤだが、レスキューのスーツがそれら全てを遮断してくれたので、トウヤの結果もまた分析不可能。

一体どうなっているんだ?と八方塞になった科学者達は頭を抱えるのは、さっき偉そうにした軍人に銃で囲まれたのを思い出すと、ちょっとだけ愉快だった。


『ねぇ、トウヤ。僕達あとどれくらい検査を受けると思う?』


エアホイルが、トウヤにそっと話しかけた。普段の彼を考えればすぐ解る事だが、検査検査の連続で大人しくしているのにすっかり飽きていた。エアホイルの向こうにいるプテロンも同じようで、ファイヤーに至っては、組んだ腕に隠れて指がコツコツと動いている。この拘束にイライラし始めている証拠で、レスキューが宥めているようだが、あとどれくらいもつことか。


『おい!あとどれくらい検査が残っているんだ!?』


ああ、もうもたなかった。

レスキューの努力も空しく、また別の検査をすると科学者に言われて終にファイヤーの我慢は臨界点を突破。我慢のダムは見るも無残に崩壊したが、ファイヤーの性格を考えればよく持った方だろう。むしろ今まで大人しくしていた事自体、奇跡に近い。


『検査ならもう十分だろ!こんなに長い間じっとしていたら、いい加減、体が錆ついちまう!』
「だったら少しは協力的になってもらいたいものだな」


冷ややかに行ってのけたのは内海大佐。
バーンビート達を見下す目つきは相変わらずで、ファイヤーの機嫌は更に悪くなる。


「君達の検査結果は全て分析不可能、これでは我々に協力しないと言っているようなものだ」
『ハッ、人間の頭で俺達の構造を理解できるかよ』


ファイヤーの我慢は一度切れたらもうそこまで。反抗心むき出しの態度に、内海は不服そうに眉間に皺をよせたが、突如鳴り響いたアラート音に全てはかき乱された。

けたたましいアラート音を聞いて、施設内が慌ただしくなる。侵入者を迎え撃とうと、兵士達はライフル、ショットガン、小型徹甲弾、携帯型ロケットランチャー、各々の武器を担ぐ。侵入者を排除するにしては、いささか重装備すぎる気がするが、空から真っ黒な鳥型ロボットが襲ってきたなら話は別。

翼を広げれば優に10メートルはある鳥型ロボット、バトルクロウを見た兵士達は、これだけでは足りない、もっと威力のある武器を!と叫ぶ。
外の混乱をバーンビート達も察知した。


『バーンビート!ガルバトロス達だ!』


バトルクロウは防衛軍に攻撃をし始めている。砲撃、爆発音、防衛軍の絶叫、これ以上ここにじっとしているのか!?

プテロンがバーンビートを振りかえる。バーンビートは頷くと、自分に繋がれていたコードを引きはがし始めた。自分達の隊長が出撃する気満々でいるのを見たプテロンも『そうこなくっちゃ!』と胸のコードを引きはがす。


『スカイヤーズ!ファイターズ!ガルーダ!出動だ!』
『『『了解!!』』』


シェリフはシェルショットを構え、ファイヤーは張り切って行こうぜ!と拳を手のひらで受け止め、レスキューも早々と両手をブレードに変えていた。プテロンとエアホイルも背中のジェットエンジンに点火、ガルーダも両翼を広げる。

今まで拘束されていた反動からか、いつもより気合いが入っている宇宙防衛機構の面々にトウヤのテンションも上がる。


「皆!頑張れよ!」


トウヤの声援に答える代わりに、バーンビート達は勢いよく車庫を飛び出した。









防衛軍はバトルクロウに苦戦を強いられていた。

ディアとアブロが操縦するバトルクロウは防衛軍の攻撃を全く受け付けず、装甲車のミサイルをもってしても傷一つつけられない。
いくら精神肉体的に強い防衛軍の彼等でも、どれだけ頑丈なんだと嫌な汗をかいていて、ディアとアブロは見透かしたように「あーはっはっはっはっは!」と高らかに笑ってみせた。


「アンタ達人間に、このバトルクロウが倒される筈ないでしょ?」
「手加減なしでどんどんいかせてもらうぜ!」


アブロの言葉通り、バトルクロウから強力なパルス波が発せられた。目には見えないその攻撃は、衝撃波となって人間に襲いかかり、機械にはもっと深刻なダメージを与えた。

突然動かなくなった装甲車、戦車に、防衛軍は成す術もなく、諦めてバトルクロウの餌食になるか、車を捨てて逃げなければならない。防衛軍の面子を考えれば、3つ目の選択である誇りにかけて最後まで戦うべきだろうが、こうも勝ち目がないと皆、一目散に逃げ出した。


「人間なんかにやられてたまるか!」
「今日こそ手柄をあげて、ガルバトロス様に認めていただくわよ!」


アブロとディアは手当たり次第に攻撃をする。バトルクロウがくわっと嘴を広げたそこに、光が集まっていく。球状になった光はエネルギーの塊、小さいながらも凄まじい破壊力を秘めているのだ。

この攻撃が決定打となるのは間違いない。まだ僅かに残っていた防衛軍は、希望の光が消えるのを感じた。

と、その時バトルクロウが攻撃を受けた。バトルクロウのエネルギー弾が目標を大きく外したのを見て、防衛軍は安堵したと同時に誰が攻撃をしたのか気になった。誰かは解らないが、防衛軍よりもっと強力な武器を持っているのは確かだ。


「いてて…、頭思いっきり打った」
「ちょっと!?何よ何なよ!?」


不意を突かれた攻撃に、アブロは痛みに呻き、ディアはヒステリックに叫ぶ。誰からの攻撃だと喚く二人が見たのは、バーンビート、プロファイター、スカイヤーズ、ガルーダ。ずらりと並んだ彼等に、2人は機械の背中ながらも嫌な汗が流れるのを感じた。


『ディア!アブロ!これ以上、お前達の好き勝手にはさせない!』


バーンビートの宣言に怯むディアとアブロだが、自分達はガルバトロス直々に命を受けた先発隊。ここでびびってちゃ、ガルバトロス様に申し訳が立たない!


「うるさい!いっつもいっつもかっこいい所持っていくけど、今日こそはアタシ達が勝つんだからね!」
「そうだそうだ!お前達がいつもいつも勝つとは限らないんだぞ!」


そう言った直後、バトルクロウからのパルス波攻撃。強烈な衝撃波はバーンビート達にも有効で、足に力を入れてぐっと耐えていると、声をかけられる。


『いつまでもつか』
『試してやろうか』


次の瞬間、スカイヤーズとプロファイターが倒れた。
ギーグルとガーディーが攻撃を仕掛けてきたのだ。ギーグルは立て続けにミサイルを発射させて、ガーディーのナイフクローがプロファイターを襲う。


『スカイヤーズ!プロファイター!』
『今、助ケル』


バーンビートとガルーダは二人を助けようとする。しかしそれを狙っていたバトルクロウが、二人に向けてエネルギー弾を発射。バーンビートとガルーダは身動きひとつできない。

バーンビート達が必死に戦う中、内海は研究室からこっそりとあるものを運び出そうとしていた。先日、軍がみつけたキーストーンだ。
あのロボット達の狙いはこれと見て間違いないだろう。

橙色に輝くキーストーンは、内海の両手程しかない大きさだが秘めたるパワーは凄まじく、原子エネルギーの比ではない。これを利用すれば、我が国の軍事力は飛躍的に発展する。軍事力だけではない。産業、経済、医療ありとあらゆる面で世界の頂点に立てるのだ。

その為には、ロボット同士が戦っているうちに、自分はこれを持って脱出、無傷で他の研究所に移さなければ。

キーストーンを特殊なケースにいれた内海は、戦いの混乱に乗じてヘリコプターに乗り込んだ。

力強く回るプロペラ。操縦桿をぐっと握り締めて、離陸する。徐々に遠ざかって行く地面に、自分と持ちだしたものの無事を確信した内海は、ホッと安堵した。
これで大丈夫。しかし、そう思ったのも束の間だった。


『よぉ、途中退場なんてマナーがなってねぇな』


突如目の前に現れたロボット、ゴンドルに内海は目を見開いた。ゴンドルは、硬直した内海をケラケラと笑うと無情にもプロペラを破壊する。バランスを失ったヘリコプターは墜落、攻撃を受けたのが離陸直後なのが幸いしたのか、ヘリコプターから放りだされたにもかかわらず内海は軽い打撲と擦り傷だけですんだ。

自身の幸運に感謝しつつ、内海は自分と一緒に放りだされたケースを、キーストーンを探す。
周囲を見渡すと、瓦礫の影にあるのを見つけた。落下の衝撃でケースが壊れてしまったのか、キーストーンはむき出しの状態である。
さっきのロボットが気づく前に、あれを回収しなければ。

内海はうめき声と一緒に起きあがると、キーストーンに向かって歩き出す。あともうちょっと。手を伸ばしかけた内海だが、彼がキーストーンを掴むより一歩早く、別の誰かに拾われた。



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あきゅろす。
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