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バーンビート
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一斉に現れた軍人はライフルを構え、標準をバーンビート達に合わせて彼等を完全に包囲した。
銃口を向けながら口の端がつり上がっているのは、巨大ロボットに反撃する暇も与えず、鎮圧した自分達の実力に浸っているからだろうか。だとしたら思い込みも甚だしい。バーンビート達には反撃する意思など初めから全くないのだから。


「はじめましてロボット諸君」


突如現れた軍人に囲まれたバーンビートは、今挨拶をした人物の声を即座に照合した。
軍人を分けて姿を見せたこの人物と、「構え」という先の命令を下した者の声紋は一致。彼がこの隊の隊長で間違いない。


「私はこの隊を指揮する内海だ」


余裕の表情を見せる彼からも、この成果に満足しているのがうかがい知れる。もっとも、彼の場合は、包囲する軍人を指揮した自分に対してだろうが。


『私はバーンビート、貴方がこの隊の隊長と言うなら私も貴方と同じ、彼等の隊長です』


バーンビートがスカイヤーズとファイターズが紹介しても、内海は何の興味も抱かない。もっと別のものに興味があるのか、それとも自分達を見下しているのだろうか。
この状況下では後者か、とバーンビートは呟く。


「君達には、この島にある防衛軍の施設で検査を受けてもらう」
『この島の施設?ここは無人島じゃないのか?』


シェリフは驚いた。この島に住人がいないのは、すでに確認済み。
それなのに自分の目の前に立つ男は、今はっきりと、この島には防衛軍の施設があると言った。
これは一体どういう事だ?


『(バーンビート、どうするつもりだ?)』


不思議に思ったシェリフからも通信が入った。
防衛軍に気付かれないよう、個人回線を使っているが、この軍の装備なら他の仲間達にも聞こえる公開回線でもよかったかもしれないがそこは用心深いシェリフの性格。
返事はまだかと待っていると、ようやくバーンビートから応答があった。


『解った。我々は貴方がたの指示に従う』


バーンビートの返事に、内海は満足げに頷いた。もし従わないようなら、武力をもって従わせたのだが、彼等が素直に従うのであれば、武器は仕舞うものだろう。むやみに攻撃するのは、高等な知性をもつ人間のすべきことではない。


「ではこちらに来たまえ。君達を軍の施設まで輸送する」


内海の合図で、数台の軍車両がやってきた。


『(すまない)』


とシェリフに通信を入れた。


『(しばらく様子を見よう。下手に動いて、彼等を傷つけては大変だ)』
『(解った)』
『(ありがとう。皆には苦労をかけてすまない)』
『(気にするな。お前の気持ちは皆も知っているさ)』


シェリフが小さく肩をすくめて笑うと、バーンビートは『ありがとう』と音声回路で告げた。

シェリフが言ったとおり、ファイヤーもレスキューもスカイヤーズも、人間を傷つけたくないバーンビートの気持ちは解っていた。
いくら防衛軍とはいえ所詮は人間。バーンビート達がその気になれば、簡単に傷つけてしまう。
この状況下で自分達の心配ではなく、相手の心配をするなんて、他の隊長なら愚かだと笑うだろう。自己防衛を理由に戦うだろう。

しかし、いくら愚かだと蔑まれようが、武器を向けられようがバーンビートは決して彼等を傷つけない。それがバーンビートの信念だ。


『(だから私達はバーンビートと一緒にいるんだ)』


シェリフがこっそり仲間を見渡すと、ファイヤーとレスキューとばっちり視線があって、シェリフに同意するように頷かれた。反対側のスカイヤーズもまた然り。
ここにいる皆は、バーンビートの事を信頼してついてきている。


「俺も忘れるなよ」


シェリフの脚部をコンコン、とノックをして、トウヤはニッと笑った。
個人回線を使ったバーンビートとの会話はトウヤにも聞こえなかった筈だが、今のノックは確かに自分の存在を主張する為のもの。バーンビートに対する気持ちは皆同じ、シェリフはこの小さくて心強い仲間に『もちろん』と頷いた。






防衛軍基地に忍び寄る黒い影。
ガルバトロス達だ。ガルバトロス達はこの基地からキーストーンの反応を捕らえ、強奪しようとやってきたのだがバーンビート達が軍人達に囲まれているのを見て、様子を伺っている。


『おい、見てみろ。防衛機構の奴等が人間のいいなりになっているぞ。ロープで固定されて、まるで積荷扱いだ!』


ギーグルに言われてガーディーも見てみると、なるほど笑いが込み上げてくる。


『こいつは傑作だ!人間風情に捕まるなんて、防衛機構も落ちるところまで落ちたな』


バーンビート達は、軍の車両の荷台に乗せられて強靭なワイヤーロープでがっちり固定されている。あれでは、ギーグルの言うとおり積荷扱いだ。
やられてばかりいる腹いせなのか、まだまだ笑い続けているギーグルとガーディーから、ゴンドルは視線を外し、振り返って彼等が主、ガルバトロスを仰ぎ見た。


『ガルバトロス様、いかがなさいますか』


ゴンドルの問いかけにもガルバトロスは何も答えず、連行されるバーンビート達をただ見るのみ。何か考えがあるのだろうか?無言の主にゴンドルは元より、ギーグルとガーディーも笑うのを止めて、ガルバトロスを見つめ、次の言葉を待つ。


『ディアとアブロはいるか』
「はい」
「ここに」


ディアとアブロは即座に答えた。
呼ばれたのが自分達ではなかったことに、肩を落としたゴンドル達だったが、これもガルバトロスの意思。この二人ではなければいけない、何か理由があるのだろうと不満を堪えて自分自身に言い聞かせる。


『奴等らの基地を襲撃してこい』
「「は!」」


短い返事をしたディアとアブロはガースが作った鳥型メカ、バトルクロウに乗り込むと離陸、命令を実行に移す。徐々に遠ざかっていくバトルクロウを見て、ガルバトロスは残りの幹部達を振りかえる。


『あの二人が人間を引きつけている間に、お前達はキーストーンを探せ』
『『『了解』』』


ガルバトロスの命を受けて、残りの幹部達も防衛軍基地に忍び寄る。残ったガルバトロスは、これから始まる余興を楽しむべく、ジェット機に変形して飛び立った。


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