[携帯モード] [URL送信]

バーンビート
1


生命誕生の秘密を解明しようとした研究者達は、宇宙の始まりを知るべくビックバン発生装置なるものをつくりあげた。

装置を発動させるには膨大なエネルギーを必要とし、研究者達は精製圧縮、結晶化させたエネルギーをキーストーンと名付けた。
故に6つのキーストーンはエネルギーの塊。単体でもかなりの高エネルギーが得られるが、6つ揃った時、それぞれが共鳴し合って更に高まったエネルギー量は単体の比にならない。

これだけ膨大なエネルギーを制御するのは非常に難しく、謝った使い方により万が一エネルギー暴走が起きてしまえばその惑星はおろか、その銀河系が消滅、さらに銀河系の消滅は宇宙バランスを崩し、やがては宇宙の崩壊を意味する為、我々はこのプロジェクトの中止を決定した。

ビッグバン発生装置とキーストーンは分離し、この惑星に隠す。
この惑星にはまだ生命誕生の兆しは見えないが、時がたてばいずれは何らかの生命体が生まれるであろう。その時に備えて我々はガーディアンを残しておく。

最後に、宇宙の安全を考え、この惑星が命に溢れる惑星とならないことを願う。
発生装置もキーストーンも、誰の目にも触れてはいけないものなのだ――






「勝手なこと言ってくれるよな」
『ホント、ホント自分勝手もいいとこだよ』
『これだから大人って嫌だよねー』


テレビを前に「ねー」と声を揃えるトウヤとスカイヤーズ。
多少の違いはあれど、同じ不満を言いあう3人に、シェルショットの手入れをしていたシェリフは聴覚センサーの感度を上げた。

今までも頻繁にこの基地に通っていたトウヤだが、夏休みが始まってからというもの食事と睡眠の為に家に帰る以外、殆どこの基地にいる。こちらとしては歓迎だが、あまりに長い間外にいるのでシェリフは、両親は心配しないのか?と尋ねた事がある。きょとんとした顔をした後、返ってきた答えは。


「夏休みの宿題さえちゃんとやれば文句言われないんだよ」


というなんともあっさりしたもので、思わず面食らってしまった。
バラバラになっていたシェルショットを元通り組みたてたシェリフは、さまざまな角度から状態の確認をして「よし」と満足げに頷くと、腰の収納部に仕舞い、3人に近寄った。
テレビを見ている3人からはまだ不満の声が続いていて、バーンビートとレスキューも気になるのか、さっきから横目でちらちらと様子を伺っている。気になっているのなら、聞けばいいのに。遠慮する2人にクスリと笑いながら尋ねた。


『トウヤ、プテロン、エアホイル。さっきからテレビに不満をぶつけているが、何がそんなに不満なんだ?』


ん?と首を傾げたシェリフも3人が見ていたテレビを見てみる。そこに写っていたのは防衛軍で、シェリフは『ああ』と呟く。

現在、旭町には多くの防衛軍が配備されていて、今ではすっかり銃を担いだ軍人はもとより戦車や戦闘機も見慣れたものとなってしまった。
恐らく、また防衛軍から何らかの制限を設けたのだろう。住民を謎の巨大ロボット(ガルバトロス達はもとより、どういうわけかバーンビート達も含まれている)から守る為とはいえ、制限、おとい監視下におかれた住民のストレスは計り知れない。


『先週、この町を軍が囲んだって聞いたぞ』


ひょいと顔を覗かせてファイヤーが言うと、テレビを食い入るように見ていたエアホイルがこちらを振り向き頷いた。


『そうそう。で、今週から配備する軍人の数を増やすんだって』
『これじゃあ、ますます外に出られないよ』


ぷっくり頬を膨らませたエアホイルに続いて、プテロンも不満たっぷりに「べー」と舌を出す。ファイヤーも同じく「げえっ」と不満の色を露骨に表わした。

気分転換もストレス解消もできないのは可哀想だが、そもそも自分達は存在を隠している身なのだから、そんな簡単に外に出ていいものではないのに、とシェリフが呟いた言葉は、レスキューの声にかきけされて誰にも届かなかった。


『皆!こっちに来てください!』


モニターを見つめるレスキューは興奮していて、集まってきた仲間に見向きもしない。それでも仲間達は彼の態度に怒ることなく、むしろ一体、何がレスキューをそこまで釘付けにしたんだろう?とモニターを同じように見あげた。
プテロンの手の平に座ったトウヤも、モニターを見上げて「あれって…」と声を漏らす。


『エネルギー反応?』


モニターの表示に、バーンビートは疑い半分で呟いたのだが、レスキューは『はい』と答えた。


『場所はどこだ』
『海上250キロ先にある小さな島です。エネルギーは地球上のものではなく、我々の生命エネルギーによく似ている。これはガルーダの時と同じです』


ガルーダ、と呼ばれて彼に視線が集まるも、一瞬で逸らされた。アニマルモードでこくりこくりと居眠りしているのを見れば、誰だってそうしただろう。たまたまそう見えただけだったらよかったのに、ぐう、と寝息までたてられては疑う余地がないってもんだ。

どうも緊張感に欠けているこの空気、バーンビートはコホン、と咳払いをして気を取り直すと、リーダーらしく威厳に満ちた態度で指示を出した。


『全員出動だ』











本州から遠く離れた場所に、その島はあった。周りは海だけ。まるで他者の目から逃れるように存在しているその島を眼下に見下ろしたトウヤは、バーンビートに尋ねる。


「なあバーンビート、レスキューはガルーダの時と同じ反応だって言っていたけど、それって新しい仲間がいるかもしれないってことか?」
『断定はできないが、そうだといいな。なにせ、相手はあのガルバトロスなのだから味方は多い方がいい』


そう話したバーンビートからは、弱気と言うよりもどこか寂しげな印象を受けた。ガルバトロスは、宇宙防衛機構がずっと追いかけていた敵なのに、どうして寂しいと聞こえてしまったのだろうか。

不思議に思ったトウヤだが、振り返ってみるとガルバトロスに関する不思議は他にもある。例えば、ガルバトロスはどうしてキーストーンやガルーダの存在を知ったのだろう。
だってガルバトロスは――

トウヤの疑問は、バーンビートの『降りるぞ』の指示に打ち止めされた。
バーンビートとプテロン、エアホイル、ガルーダは着陸、降り立った場所でファイターズと合流すると、バーンビート達はロボットモードに変形する。普段ならビーグルモードのまま調査をするのだが、幸いなことにこの島は住人がいない、つまり無人島なので正体を隠す必要がないのだ。

バーンビートから降りたトウヤも、別に着替えなくてもよかったかな、とスーツを引っ張る。最近、なんだかんだと巻き込まれることが多いので、先にスーツとヘルメットを装着しておいたのだ。
元の服に戻ろうか、とブレスのスイッチに触れたところで、スーツ製作者のレスキューがいることを思い出して止めておく。このスーツはレスキューの自信作なのに、彼の目の前で元の服に戻るのは失礼な気がした。


『おいレスキュー、エネルギー反応ってどこなんだ?』


周囲を見渡してファイヤーが尋ねた。彼にもスキャン能力はあるが、分析が専門分野であるレスキューと比べると、その精度は遠く及ばない。加えて自分がするより、レスキューに聞いた方が簡単だし早いと思って尋ねると、レスキューは困惑の表情を返す。


『ここです。我々が立つこの位置がエネルギーの中心です』
『ここ?』


ファイヤーが辺りを見渡すも、あるのは木。右を見ても左を見ても前も後ろも木が覆い茂っているだけで、エネルギーを発しそうなものはなにも見当たらない。
レスキューのスキャンが間違っているとは思えず、全員で周囲をスキャンしていると、トウヤが「あれ?」と声をあげた。バーンビート達の足元を指差して「ここ…」と不思議そうに言う。

一番小さいトウヤだから、トウヤじゃなかったら見つけられなかったそれは、トウヤの指先程の大きさしかない機械、小型発信機のようだ。
ひょっとして、と考えを打ち消すように叫び声が響いた。


「構え!」


next

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!