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バーンビート
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『待っていたぜ』


バーンビートX達の前に立ちはだかる影。ギーグル、ガーディー、ゴンドルが合体したロボット、ギアーズだ!
戦闘態勢に入るバーンビートX達。しかしギアーズには戦いの意思がないようで、構えるバーンビートX達に首を横に降る。


『勘違いするな。俺達はガルバトロス様にお前達を迎えに行くよう言われただけだ』
『我々の迎えだと?』


とても信じられないプロファイターにギアーズは『ああ』と答える。


『ガルバトロス様はキーストーンさえ手に入ればそれでいいと仰っている。俺だって本当ならお前達を壊したくて仕方ないが、攻撃するなとガルバトロス様の命令だ。ついてこい』


案内のため背を向けたギアーズからは、不満の色が見て取れた。戦いたくて仕方ないという彼の声がヒシヒシと伝わってくるのに、そうはせず案内だけをするは、ガルバトロスの命令だから。

もしガルバトロスが案内だけを命じていたら、ギアーズは言葉遊びを理由に間違いなくバーンビートXを襲っていたに違いない。

そうなると、ガルバトロスと幹部達の関係がいかにハッキリしたものかが解る。幹部達にとってガルバトロスの命令は絶対で、例えそれがどんなに理不尽なものでも彼等は従う。心の底からガルバトロスを慕っていなければできないことだ。


『(それだけガルバトロスはカリスマ性を持っているということか)』


バーンビートXは、もしガルバトロスが今も宇宙防衛機構にいたらと考えてみた。
ガルバトロス本人の能力は元より、ここまで部下に慕われている上司はそうそうおらず、きっとトップチームになっていたと想像するにたやすいし、実際、ガルバトロスのチームは歴代防衛機構軍の中でも指折りだったと聞く。
知れば知るほど、ガルバトロスという男はどこで道を間違えてしまったのだろうと悔やまれる人物だ。


『ここだ』


不意に立ち止ったギアーズはそう言って、扉を開けた。
室内は薄暗く、僅かな光と音の反響からとても広い空間だというのは解った。
ガルバトロスはどこにいる?トウヤはどこにいる?
中を伺うバーンビートXにトウヤの叫び声が聞こえた。


「バーンビート!皆!」
『トウヤ!無事か!?』


駆け寄ろうとしたバーンビートXの足元にビームが打たれた。攻撃ではなく牽制の意味合いで打たれたそれに顔をあげると、ガルバトロスの姿が浮かび上がり、同時に室内が明るくなった。
ここでようやくバーンビートX達は室内の様子を把握できた。バーンビートX達の数十m先にはガルバトロスが構えていて、その背後にはビッグバン発生装置が、そしてガルバトロスの手には球状の物質に閉じ込められたトウヤがいた。
トウヤの命は文字通りガルバトロスの手中にあり、迂闊に手を出せばどうなるかなんて考えたくもない。何もできない腹立だしさから、スカイヤーズはぐっと拳を握りしめる。

腹立だしいのはスカイヤーズだけではない。バーンビートXとプロファイターも心の内は歯がゆさと悔しさが渦巻いていて、今すぐにでも先制攻撃を仕掛けたい衝動を必死に堪えている。

ガルバトロスはそんな彼等の心境を見透かしていた。


『そんなに意気込まずとも小僧は返す。キーストーンは全て持ってきたか?小僧はキーストーン全てと交換だ』


ガルバトロスの口調はゆったりとしていて、余裕を見せつけるようなもの。バーンビートX達の神経を逆なでるつもりかもしれないが、ここで自棄になって攻撃に出るほどバーンビートX達は愚かではない。
バーンビートXはガルバトロスに向き直る。


『キーストーンはここにある』


そう言って胸の収納庫から取り出されたキーストーンを見て、ガルバトロスはカメラアイの光を細め、ギアーズはそれが本当にキーストーンなのかと訝しむ。
ギーグルに言わせれば、人間の子供なんてキーストーンと交換にできるほど価値があるものとは思えない。

人質を取り戻す為の偽物ではないだろうか?
不意をついて攻撃するつもりなのでは?

正義を貫き宇宙の平和と命を守る宇宙防衛機構でも、時として相手を騙す。
キーストーンを初めて見たギアーズは内心、疑うのだが、ガルバトロスは全く疑っていない。バーンビートX達を信じているからではなく、疑う必要がないからだ。

赤、黄色、青、緑、藍色、橙、6つのキーストーンは共鳴反応から光り輝き、バーンビートの手の上でくるくると回転を始めたかと思うと突然何か引き寄せられるようにバーンビートXの手を離れた。
バーンビートXが掴もうとした時にはもう遅い。握りしめた手は空しか掴めず、逃したキーストーンはあろうことかガルバトロスの背後にある扉、ビッグバン発生装置にはめこまれた。


『フン、素直に出したところを見ると石版にもかかれていなかったようだな』


驚くバーンビートX達を見て、ガルバトロスはニヤリと笑う。
キーストーンは6つが揃い、共鳴活性するとビックバン発生装置に引き寄せられる。これこそキーストーンが本物かどうか、ガルバトロスが疑わなかった理由。


『何!?』
『そんな!』


何も知らなかったバーンビートX達にはこの事態をどうしようもできずに、発生装置に刻まれた古代文字と記号に光の筋が走るのをただ見ているだけ。低い唸り声の様な起動音がするにつれて、この時を待ち望んでいたガルバトロスは高らかに笑う。


『時は来た!今こそ、宇宙を我が手に!!』
『『させるか!』』


もう我慢の限界。勢いよく飛び出したプロファイターとスカイヤーズの前に、ギアーズが立ちはだかった。両肩のブラスターからの攻撃に、2人は後退を余儀なくされる。
間合いを詰められず悔しがるプロファイターとスカイヤーズに、ギアーズは悪意に満ちた笑みを浮かべて、手の中のもの、閉じ込められたトウヤを見せた。


『コイツがどうなってもいいのか?』


人質を見せられて手が出せない。またも不利な状況に対面していると、壁を突き破って何かが乱入した。一体何が。
乱入者に目を向けたバーンビートX達が見たのは、真っ黒な翼を羽ばたかせた鳥型ロボット。防衛軍基地で暴れたバトルクロウだ。
加勢しに来たのかとバーンビートX達が思うより早く、バトルクロウは鉤爪でギアーズの手からトウヤを器用に掴むと、旋回して突き破った壁から出ていく。


『おい!ディア!アブロ!』


ギアーズが叫ぶも、返事はない。
憤慨するギアーズから、バトルクロウの登場は敵にとっても予想外の事だったのが窺い知れて、攫われたトウヤの安否が気になるバーンビートX達だがキーストーンがセットされた今、ここを離れるわけにはいかない。
なにせ、ビッグバン発生装置は新たな宇宙を創りだす代償に――




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あきゅろす。
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