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バーンビート
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バーンビートとファイターズはキーストーンの反応を追いかけて、フランスにいた。フランスと言えばパリの凱旋門、オペラ座、ウィーン美術史博物館などが有名だが、残念な事に今飛んでいるのは海岸線。

おまけに今は夜なので何も見えず、これでは折角フランスに来た意味がないとトウヤは嘆いていた。


「なぁ、バーンビート。本当にこの辺りにキーストーンがあるのか?」


何もない場所だが、今までキーストーンがあった場所を思えばこの辺りにあってもおかしくはない。ただ座りっぱなしの旅は退屈すぎるのだ。海の景色に飽きてきたのもあって尋ねると、しっかりとした「YES」の返事が返ってきた。


『ああ、微弱だが確かにこの辺りからキーストーンの反応を確認できる』
「でも、この辺りって海しかないぞ」


キーストーンはジャングルや砂漠で見つかっているのに。退屈さから不貞腐れているトウヤをバーンビートは小さく笑う。


『そう言うな。ほら、あそこに見えるだろ?』


あそこ、とバーンビートが場所をしめすも、あまり期待していないトウヤは「どこだよ」と面倒くさそうに地上を見下ろして前言撤回。
地上の光景に驚いたトウヤは完全に見入っていて、今さっきまでからの変わりようにバーンビートは内心、おもしろくて堪らない。


「すっげー!海の中にお城がある!」


わぁ、と感嘆の声をあげるトウヤ。トウヤが言う海に浮かぶ城とは、パリと双璧をなすフランス随一の観光地、修道院モン・サン=ミシェルだ。
ライトアップされた修道院は幻想的で、今が21世紀だと言うのを思わず忘れてしまう。


『降りるぞ』


直後、バーンビートは下降を始める。傍を飛んでいたガルーダも下降を始めたのに気付いて、トウヤは「いたの!?」と叫んでしまった。無口なガルーダはたまに存在を忘れられてしまう。


地上に降りたバーンビートとガルーダは、ファイターズと合流した。ロボットモードでは目立つので、ビーグルモードのままでこれからの行動について話し合う。

まずはレスキューがキーストーンの位置を報告する。


『キーストーンがあるのは、モン・サン=ミシェルの中で間違いありません』
『つーことは、またチビ助の出番だけど、こんなチビ助にちゃんと見つけられるのか?』


頭の後ろで手を組んでからかうファイヤーだが、トウヤはファイヤーのからかいに動じず涼しい顔。


「そのチビ助に手伝ってもらわなきゃキーストーンを見つけられないのはどこの誰だよ?」


ニヤリといじわるな顔。
これにはファイヤーも面食らい、返す言葉が見つからずにいると堪え切れなかったシェリフが笑いだした。


『一本取られたなファイヤー。確かに、私達の大きさでは城内のキーストーンを見つけるのは難しい。トウヤの勝ちだ』


笑うシェリフは内心、スカイヤーズを置いてきて正解だったと思う。
もしここにスカイヤーズがいたら、あの2人の事、腹を抱えるどころか笑い転げるに違いない。後輩にそこまで笑われてしまっては、先輩の面子は丸つぶれだ。


『ちぇ。シェリフまで味方になることないだろ』


負けたのが悔しくて拗ねだしたファイヤーに、トウヤとシェリフはますます笑い、バーンビートとレスキューも堪え切れずに吹き出した。








バーンビート達と別れたトウヤは、夜の街並を歩く。

両脇に並んだ店は昔ながらの石造りで、修道院モン・サン=ミシェルに続く坂道も同じく石畳。ファンタジー映画に飛び込んだ気分だ、と気分はすっかり観光客。
本来の目的であるキーストーンを忘れて、散策を続けていると前方に見知った影を発見。

フランスに知り合いなんていなかった筈だけど?とうかれた気分で歩いていると、向こうもトウヤに気付き、トウヤもようやくそこで相手が誰か気付いて大声をあげた。


「ディアとアブロ!」
「「バーンビートの所のガキ!」」


まさかこんなところで会うなんて!

お互い、予想外の出会いに目が点になる。先に正気に戻ったのはアブロだった。


「なんでお前がここにいるんだよ!?」
「それはこっちの台詞だっつーの!お前等また懲りずに何か悪い事企んでいるんだろ!」


そうはさせないぞ!と意気込んだトウヤに、アブロはべーっと(宇宙を支配しようとするガルバトロスの手下にしては随分子供じみている)舌を出して答える。


「キーストーンを手に入れろとガルバトロス様直々の御命令だ!お前なんかに邪魔されてたまるか!」


もう一度べーっと舌を突き出したアブロに、トウヤはニヤリと意地悪な顔をして「ふーん」と顎に手を添える。


「つー事は、やっぱりここにキーストーンがあるんだ」
「このバカ!」


同時にディアの拳骨がアブロの脳天を直撃した。あまりの痛さにアブロは頭を抑えて悶え苦しむ。


「いってー!いきなり殴るなんて酷いだろー!」


アブロの主張にもディアは知らん顔。それどころか、腕を組んで相棒を見下ろした目のなんと白いことか。完全にアブロに愛想をつかしている。


「あのガキはバーンビートの仲間なのよ!?ガルバトロス様の命令を教えてどうするのよ!」
「あ、そっか。バーンビート達に話されちゃ厄介だもんな」
「そういう事…って、あのガキは!?」


さっきまでそこにいたのに、トウヤの影も形もない。いつのまにいなくなったんだ!?と周囲を探して、アブロが「いた!」と坂の上を指差した。


待てー!と自分を追いかけてくるディアとアブロに、誰が待つかと舌を出しながら、トウヤはブレスを出す。


「バーンビート聞こえるか?さっき、ディアとアブロに会って、アイツ等もキーストーンを探しているみたいなんだ!」
『そうか、こちらもガーディーとギーグルと交戦中で、すまないがそっちにいけそうにない』


ブレスから聞こえてきたバーンビートの声からは、緊張感が伝わってきた。砲撃や爆発音は聞こえてこないので、恐らく、バーンビート達も敵と遭遇したばかりでお互いにタイミングを見計らっているのだろう。

だとすれば、これ以上邪魔はしない方がいい。


「解った。キーストーンは俺が先に見つける。バーンビート達も頑張って」


短く「ああ」と返事が聞こえると、トウヤは通信を終了させて坂の頂上にある修道院、モン・サン=ミシェルを見上げた。

キーストーンの反応はあの修道院からする。
なんとしてでもディアとアブロより先に到着して、キーストーンを手に入れなければ。







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あきゅろす。
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