[携帯モード] [URL送信]

バーンビート
3


「バーンビート達に行くって言わなかったけどいいのか?」


気になってしょうがないトウヤだが、レスキューからは「大丈夫」と軽い返事が返ってくる。


『シェリフとファイヤーのはいつものことだから心配いりません。本当、いつまでたっても変わらないのですから』


そう言ったレスキューは、これまでのことを思い出しているのだろうか、言葉の端が笑っている。いかにも楽しげといった感じで、トウヤは「なあ」と尋ねた。


「レスキュー達って、いつからチームを組んでいるんだ?なんかずっと昔から一緒にいる感じだけど」


前回、スカイヤーズと一緒にシェリフの宇宙防衛機構の心構えを聞いた時、宇宙防衛機構は少人数のチームを組み、力を合わせて各任務に就くと教わった。しかしバーンビート達の会話を聞いていると、ファイターズはそれ以前からの付き合いがあるように思う。

スカイヤーズもスカイヤーズで、ファイターズとは違う経歴があるようだが…。

トウヤの疑問にレスキューは答える。


『私達はそうですね、宇宙防衛機構の訓練生から一緒にいるんです。トウヤも学校には友達がいますよね?』
「うん。カズキとソウタ、あとアヤメとかが友達だよ」
『それと一緒です。プテロンとエアホイルも同じように訓練生から一緒にいるみたいですよ』
「へぇ、じゃあバーンビートは?」
『バーンビートは――』


レスキューの答えはそこまでだった。
突然、レスキューの周囲にある砂が渦を巻いて落ちこんでいく。

流砂だ。

飲み込まれる前に脱出を試みるレスキューだが、タイヤは空回りを起こすのみで全く前に進まない。砂はもがくレスキューを嘲笑うように下へ下へと引きずりこむ。レスキューを引きずりこむ力もだが、速度もまた脅威的。

これ以上は無理だと判断したレスキューは、完全に砂に飲み込まれる前に、バーンビート達に自分の位置を知らせる信号を送った。


『トウヤ!何が起きるか解りません!しっかり捕まっていてください!』
「解った!」


砂に飲み込まれる恐怖はとてつもないが、トウヤはそれに負けることなく力強く答えると、ハンドルを握り締めた。
レスキューをすっかり覆い尽くしたにもかかわらず、砂は更に彼を下へ下へと引きずりこむ。やがて、速度が落ちたのかザーザーと激しい音をたてていた砂の粒とレスキューの装甲が擦れる音は、ザリザリとゆっくりしたものに変り、さらに暫くしてようやく止まる。

とりあえずこれ以上深く潜らなくていいことに、トウヤとレスキューは安堵の息を漏らした。


「はー、なんとか止まったな。なんだったんださっきのは?」


落とし穴にはまったように、突然砂に引き込まれた。
ジェットコースターみたいでちょっと楽しかったというのは黙っておいて考えていると、レスキューが答えてくれる。


『さっきのは流砂です。この辺りには小さな地下洞窟がいくつもあるみたいです。そのひとつに、砂と一緒に落ちたんでしょう』


砂に飲み込まれて真っ暗だった車内に、パッと明かりがついた。
窓の外を見てみると、1ミリの隙間もなく砂が堆積している。窓を開けでもしたら最後、砂が一気に押し寄せてトウヤを埋め尽くすに違いない。

自分で抱きながら、嫌な想像にぞっと寒気がした。










『…だめだ、レスキューとトウヤ両方とも通信不可能だ。何かトラブルに巻き込まれたらしい』


首を横に振るバーンビートにシェリフが『そうか』と返す。


『こういう時に限って、敵が現れるんだよな』


タイミングが良すぎる、とシェリフが見上げる先には巨大なサソリ型ロボット。ガルバトロスの手下、ディアとアブロだ。
サソリ型ロボットは、ギチギチと鋏を鳴らしては威嚇している。安っぽい威嚇だ、とシェリフは思った。


「ガルバトロス様の命令でここに来たけど、まさかアンタ達もいたなんてね」


高圧的な物言いをするディアをファイヤーが「ハッ」と鼻で笑い飛ばす。


『そいつはこっちの台詞だ。ボロ負けしないうちにさっさと帰ったらどうだ?』


ガドリング砲を構えると、サソリはピタリと威嚇を止めた。


「それこそこっちの台詞だ」








砂の中に閉じ込められたレスキューとトウヤだが、なんとか脱出できないかと試みる。

まず最初に、エンジンを思いっきり吹かして勢いよく飛び出そうとしたが、レスキューの出力ではびくともしない。
ロボットモードなら砂をかき分けて這いあがれたかもしれないが、トウヤが一緒にいる以上それもできない。この状態でロボットモードに変形などしたら、トウヤを圧迫死させてしまうこと間違いなしだ。


『万事休す。シェリフやファイヤーならともかく、私の出力ではこの砂を吹き飛ばせそうにない』
「そうなのか?」
『はい。射撃などバランス性の高いシェリフや出力の大きいファイヤーとは違って、私は戦いより救助活動や分析の方が得意分野なんです』
「へぇ、レスキュー達にもそんなのがあるのか。バーンビートとスカイヤーズは?」
『スカイヤーズは言わずと知れたスピード、バーンビートは全て値がバランスよくとれている非常に優秀な隊員ですよ』
「非常に優秀?」


トウヤは信じられないという顔をした。ファイヤーの嘘を信じ切ってしまうバーンビートのどこが優秀なんだろうと考えていると、レスキューのメーターが笑うように揺れた。


『訓練生の中で常にトップの成績で、宇宙防衛機構からは初任務が待ち遠しいと言われた程です』
「ますます信じられない…あ、まさかレスキュー俺を騙してるんじゃ」


ファイヤーのように明らかな嘘ではないが、それでも用心しているとレスキューのメーターが否定するように揺れた。


『嘘をついてどうするんですか。本当のことです。シェリフもバーンビートに続く優秀な隊員ですし、ファイヤーも模擬戦闘ではトップクラスの成績でした。プテロンとエアホイルは私達の後輩にあたりますが、なかなか優秀だと聞きましたね』
「…ますます嘘にしか聞こえない」


ぶすっとした顔で考えるトウヤに、レスキューは笑った。




backnext

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!