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バーンビート
3



『…ねぇ、トウヤ』
「あ?なんだよエアホイル」


どうすりゃいいんだとトウヤが頭をひねっていると、エアホイルはある一点を指差した。

何があるのだとトウヤは、めんどくさそうにエアホイルの指す方を見て、目を疑った。ドドドドと土煙ならぬ雪煙りをあげて、こちらに突進してくるのはさっきのホッキョクグマだ。
その走りかたからも解るように、感情が高ぶっている。


『凄い勢いでこっちに来るなぁ』
『とりあえず巻き込まれたらヤバくないか?』
「呑気なこと言ってないで逃げろ!」


一目散に逃げ出したトウヤに続いて、プテロンとエアホイルも走りだす。状況を呑みこめないガルーダは、そのまま突っ立っていたのを、戻ってきたエアホイルに引っ張られた。


「ウガオオオオーッ!」
「何かすっげー怒ってるんだけど!?」


ありえねー!と叫びながらも走るスピードは緩めない。ともかくトウヤ達は、ホッキョクグマから死ぬ気で逃げ続ける。
キーストーンを食べてから、今までの間に一体何があったんだ!?


『あーっ!』
「どうしたんだ?プテロン」


急に声をあげたプテロンを見上げると、プテロンは『あれ!』とホッキョクグマを指差した。


『ホッキョクグマの歯ぐきにキーストーンがささっている!きっとあれが痛くて怒っているんだよ!』
「何だって!?」


トウヤは走りながら振り返る。と、ホッキョクグマが雄たけびをあげたその瞬間、奥のほうにキラリと光るもの。キーストーンだ!
てっきり、飲み込まれたばかりと思っていたが、ぎりぎりのところでひっかかっていたのだ。


「(キーストーンが無事なのはラッキーだけど、どうやって取り返せばいいんだよ)」

『大丈夫ダ』


トウヤの心の声が聞こえたのか、ガルーダはそう答えるとエアホイルの手を振り払って立ち止まる。


「ガルーダ!?」


どうするつもりなのだろうか?トウヤ達の足も止まる。
怒りのホッキョクグマに真正面から立ち向かうガルーダは、ホッキョクグマとの間合いを見極めて、次の瞬間!

 ドスッ

ホッキョクグマの腹に一撃。ガルーダの拳を受けたホッキョクグマは、巨体を揺らして倒れた。


「『『やった…』』」


実力行使に打って出たガルーダに、言葉を失う3人。
そんな3人の心境に全く気付いていないガルーダは、気絶したホッキョクグマの顔を持ちあげると、自分の手では取れないと判断するや否やトウヤに目を向ける。


『トウヤ、キーストーン』
「はいよー…」


呼ばれたトウヤは、ノロノロと重い足どりでホッキョクグマに近づく。
ホッキョクグマは完全にのびているようで、ピクリともしない。自分がやったのではないが、それでも罪悪感を感じながら、トウヤはホッキョクグマの口に肩まで腕を入れてやっとのことでキーストーンを掴んだ。















「――で、ホッキョクグマは目を覚ましたらどこかに行っちまった」


キーストーンを入手、基地に帰還したトウヤ達は北極でのできごとをバーンビート達に報告をした。南極ではキーストーンは見つからなかったらしく、バーンビート達は手ぶらでいる。


『キーストーンが取れたから、ホッキョクグマも怒っていなかったし』
『これにて一件落着!』


やったー!と両手を挙げて喜ぶトウヤとプテロン、エアホイルだが、その表情はどこか固く、笑顔の筈なのに口元がひきつっていた。
それもその筈。並んで正座をしている3人は、ホッキョクグマが見たいから北極に行ったのがばれてしまって、シェリフの説教を受けている最中なのだから。仁王立ちで自分達を見下ろすシェリフは、それはそれは迫力があるもので、生きた心地がしなかったと後に3人は語っている。


『そうか、それはよかった。さて、お前達には宇宙防衛機構としての意識が今一つ欠けているらしい。よって、これから私がみっちり扱いてやろう』


楽しみにしろよと、言うシェリフに震えあがる3人。基地内の温度は北極よりも寒かった。









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