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バーンビート
3


人々がパニックになって逃げまどう様を、ガルバトロスは空から悠然と見下ろしていた。建物が破壊される度に、外へ逃げ出してくる人々を見ても、ガルバトロスは何の感情も抱かない。
ただ、次から次へと湧いてくる人間によくもまあ、こんなにいたものだ程度には思っていた。


『虫けらほど数が多いな。ギーグル、あとどれくらいかかる』


声をかけられたギーグルは、エネルギー弾を撃つ手をとめて、ガルバトロスに頭を垂れた。


『はっ、もうすぐ完了すると思われます。ここら一帯を一掃した後、すぐにガーディアンを探しましょう』


ガルバトロスが低く唸ると、ガーディーは恭しく頭を下げた後、再び破壊活動にとりかかる。
今回のガルバトロスの目的は、キーストーンではない。
8819プロジェクト、すなわち伝説の力を守るガーディアンの破壊だ。
当時の宇宙防衛機構は地球にキーストーンと装置を隠した際、それを守るガーディアンも一緒に封印している。ガルバトロスが手に入れた情報とガースの地形分析から判断すると、この辺りにガーディアンが封印されているらしい。
封印から目覚める前にそのガーディアンを破壊してしまえば、伝説の力は手に入りやすくなる。


『そこまでだ!』


騒音の中でもしっかり聞こえた声に、ガルバトロスは舌打ちをした。

やかましい宇宙防衛機構のおでましだ。

到着したバーンビート達は、ビーグルモードからロボットモードへ変形すると彼等をきつく睨みつける。バーンビート達の登場に気付いたガーディー達も攻撃を中断させて、バーンビート達を睨む。


『ガルバトロス!ついに正体を見せたな!』
『ふん、若造風情がいい気になるな』


意気込むバーンビートをガルバトロスは一笑する。ガルバトロスにとって、バーンビート達は全く脅威でもなんでもない。実力の差は歴然で、自分の周りを煩く跳びまわるハエと同類なのだ。
自分達が見下されていると解ったバーンビートは拳を突き上げる。


『ファイヤーウイング!!』


バーンビートに呼ばれて姿をみせたファイヤーウイングは、すぐさま分裂してバーンビートにドッキング、アーマーモードになった。
アーマーモードになったバーンビートを見て、ファイターズとスカイヤーズも続く。


『ファイヤー!レスキュー!俺達も合体だ!』
『『了解!』』
『『『チェンジアップ!』』』


シェリフが胴体に、レスキューが両腕、ファイヤーが両足に変形。武器であるファイターランスを携えて、白く輝く騎士、プロファイターが降臨した。


『エアホイル!僕達も合体するぞ!』
『オーケー!プテロン!』
『『チェンジアップ!』』


プテロンとエアホイルの頭部が収納されて、手足も折りたたみ、新たな半身を作り出す。そしてドッキングした2体の胸にはウイングカッターが取り付けられ、青い戦士、スカイヤーズが空へと舞い上がった。

本当の戦いはこれからだ!


『おっと!お前等ばかりが合体できると思うなよ』


ギーグルが不敵に笑うと、ガーディーとゴンドルが彼の下に集まった。これまで、仲違いしているイメージしかない彼等の行動に、バーンビート達は思わず見入ってしまう。


『『『チェンジアップ!』』』


そんなまさか!
ファイターズとスカイヤーズが合体するように、ギーグル、ガーディー、ゴンドルも合体を始めるではないか!

バーンビート達の驚きをよそに、3体は合体して、ガーディーのナイフクローを光らせ、両肩にはガーディーのブラスターを携え、そしてゴンドルの翼を広げたロボットが誕生した。


『ギアーズ!!』


3体が合体したロボット、ギアーズはバーンビート達へ突撃。バーンビートとスカイヤーズはなんとか避けきれたものの、プロファイターは直撃を受けていくつもの建物を破壊しながら、ふっ飛ばされた。
もうもうと上がる土煙を振り返ったスカイヤーズが、慌ててプロファイターに駆け寄ろうとするも、ディアとアブロが操縦するドラゴン型ロボット、パイロンが立ちはだかった。


「おっと!そうはさせないぜ」
「お前達の相手はアタシ達よ!」


アブロが叫ぶや否や、パイロンの口からミサイルが連続発射された。逃げるスカイヤーズだが、追尾機能を搭載したミサイルはしつこくつきまとう。それを更にパイロンが追いかけた。

仲間達と引き離されたバーンビートは、単身、ガルバトロスに挑む。バーンビートはバーニングソードを、ガルバトロスは大剣を構えてお互い、一分の隙もみせずに、相手を睨みつける。
息をするのもはばかまれる緊張感、瓦礫が地面に落ちた。


『うおおおぉっ!!』
『はあああぁっ!!』


瓦礫が落ちたのを合図に、バーンビートとガルバトロスの剣が激突。二度三度、ぶつかりあう剣と剣からは火花が散るも、お互い一歩も引かない。
バーンビートが一際大きく降りおろした。ガルバトロスはそれを受け止めると不意に笑い。


『こんな程度で歯向かってくるとは馬鹿な奴だ』


バーンビートが渾身の力を込めた剣をやすやすと薙ぎ払う。あまりに簡単に弾かれたので、さっきまでのは本気ではなかったとバーンビートが気付いたのと同時に。


『これでもくらえ』


冷たい一言。
ガルバトロスの腕に装備されたキャノン砲が撃たれた。至近距離からの攻撃に、バーンビートは避ける術もない。
衝撃で後ろに吹き飛ばされたバーンビートは、二度、三度と弾んで地面を滑り、もうもうと立ちこめる土煙の中で呻き声をあげる。その様子は寺院に逃げ込んだトウヤにも見えていて、トウヤは危険を顧みず寺院から飛び出した。

仰向けに倒れるバーンビートは、薄れゆく意識の中で、ここにきて初めてガルバトロスの強さを思い知らされた。
悔しいが、このままでは自分を含め仲間達も、全滅してしまう。負けている場合ではないのに。地球を、宇宙をガルバトロスの手に渡してはいけないと誓ったのに。

バーンビートに近寄る足音。太陽を背にしたガルバトロスがバーンビートを見下ろしていた。
ダメージを受けすぎて、バーンビートはもう動けない。
バーンビートはぼろぼろだ。パーツの至る所が欠けて、裂けた装甲からは中の配線も見えて、見るからに痛々しい。

プロファイターはファイターランスを振りまわして、ギアーズと必死に戦っている。空を見上げればスカイヤーズとパイロンが戦っているのが見える。この場にバーンビートを助けられる者はいない。

このまま放っておいても、バーンビートはじきに死ぬだろう。しかしガルバトロスは、自分の邪魔をし続けてきたバーンビートを、そんな風に終わらせてしまうつもりはない。

ガルバトロスは、動けないバーンビートを踏みつけて、両手に持った大剣を頭上に掲げた。
バーンビートを突き刺すつもりだ!


『宇宙防衛機構もこれまでだな』
『く、そっ…!』


抵抗を試みるも、今のバーンビートでは指一本動かすのさえできない。事実上の無抵抗となったバーンビートを見下ろして、ガルバトロスの口元が弧を描いていたのはマスク越しでも解った。


『これで終わりだ!』
「やめろ―――――っ!!」
『『バーンビート!!』』


トウヤが絶叫する敵の攻撃を防ぐプロファイターとスカイヤーズがバーンビートの名を叫ぶが、ガルバトロスは大剣を振りおろす。剣先はまっすぐにバーンビートの胸を捕らえて、避けられない。




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あきゅろす。
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