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バーンビート
2


謎のエネルギー反応の正体を確かめるべく、インドにやってきたバーンビート達。まずはこの辺りの情報を集める為、感知された場所から1番近い小さな町に立ち寄った。

こういう時はトウヤの出番。なにせバーンビート達の存在は絶対に秘密なのだから彼らが動き回るわけにはいかない。


「(って言っても、本人達がそのつもりじゃなかったら意味ないんだけどな)」


がくりと項垂れる。インドまでの旅路でひと騒動あったのだ。
プテロンとエアホイルは、共に戦闘機に変形するので空を飛べる。バーンビートも、ファイヤーウイングとドッキングすれば問題ない。

問題なのはファイターズだ。
パトカー、消防車、救急車に変形する彼等は、当然、陸地がなければ走れない。誰だってそう思う。少なくともトウヤはそう思った。
でも最初にバーンビートが全員出動だと言ったように、彼等もちゃんとインドにいる。一体どうやって?
答えは簡単。海の上を走ってきたのだ。

当然、普通の車ならありえない。地球の車と融合している彼等だからできる芸当で、海上を走るファイターズをファイヤーウイングから眼下に見ていたトウヤは何も言えなかった。
むしろ突っ込んだら負けな気がした。


「さーてと、情報収集っていわれても誰に聞けばいいんだ?」


幸いな事に、この辺りは人が集まる場所らしいので尋ねる相手には困らない。ただこうも多いと逆に誰に聞くのがいいか解らなくて、キョロキョロしながら歩いていると、すれ違いざまにぶつかった。


「あ、ごめん!」


反射的に謝るトウヤに浮かぶ疑問。トウヤがインドの言葉を解るのかって?もちろんYES。
トウヤの左腕にご注目。手首のブレス、あれを忘れちゃいけない。
レスキューが付け加えてくれた翻訳機能のおかげで、このブレスをつけている限り、トウヤは日本語で誰とでも会話ができるのだ。
これでどこの国に行っても安心。


「大丈夫?」
「ええ。大丈夫よ」


ぶつかったのはトウヤと同じくらいの女の子だった。女の子はトウヤを見ると視線を上から下へ、もう1度上へと見定める。
トウヤは今までインド人に会った事はないが、他の人もこうなのだろうか?だとしたら初対面の人に対して随分失礼だ。


「貴方、観光客?この町にあるのは古くて小さな寺院だけだから、外国人がくるなんて相当珍しいんだけど…」
「え?あー…まぁ、たまにはそういう人もいるってことでさ。ところで君はここの人?」
「ええ、そうよ。私はアーシャ」
「俺はトウヤ。なぁアーシャ、最近、この辺りで何か変ったことはない?」
「変ったこと?」


その時だ。
周りの大人達が空を見上げて、騒ぎ出した。ある一点を指差す大人達に、トウヤもそちらをみて驚いた。

ガルバトロスの部下達がこちらに向かってくる!

ガーディー、ギーグル、ゴンドル、ガース、ディアとアブロ。それだけでもいっぱいなのに、今回はいつもと違う。
彼等の先頭を飛んでいるのは、見た事のない黒いロボット。
一言に黒いといっても、全ての光を吸いつくす闇を連想させる色で、あのロボットは危険だとトウヤの直感が告げた。

同時にあれが、ガルバトロスだとも気づく。


「バーンビート!敵が現れた!今度はガルバトロスもいる!」
『何だって!?今すぐ向かう!』


ガルバトロスと聞いて、バーンビートの反応は明らかにいつもと違っていた。ついにボスの登場とあれば当然だろう。
通信を終えたトウヤは、バーンビート達が早く来る事を願う。


 ドオオオンッ――


爆音が辺りに響いた。
ガルバトロスのキャノン砲が民家を跡形もなく吹き飛ばしたのだ。
それを皮切りに、幹部達も各々の武器を展開、攻撃を開始する。

爆発音、建物の崩壊音。いくつもの騒音が重なり、耳は麻痺して音を正常に拾えない。音は空気は震わせ体を貫く。
ガルバトロス達の攻撃に、人々は悲鳴を上げて逃げまどい、町は完全にパニックに陥った。
トウヤは、人の波にもまれてどうしようもなくいると、誰かに腕を引っぱられた。
アーシャだ。


「トウヤ!こっちよ!」
「アーシャ!こっちってどこに行くんだよ」
「いいから早く!」


アーシャに引っ張られるままトウヤは走っていると、正面に古い建物が見えてきた。さっきアーシャが言っていた寺院だ。
ここでも騒音はしっかりと聞こえていたが、アーシャは寺院に入ったからもう安心だと笑みを見せる。


「さっきも言ったけど、この町には古い寺院しかないの。でもただ古いだけじゃないんだから。この寺院にいる神鳥が、私達を守ってくれるわ」
「神鳥?」


息を整えながらトウヤが言うと、アーシャは寺院の奥を指差す。
アーシャが指した先を見て、トウヤはハッと息をのむ。
巨大な鳥。


「驚いた?これが神鳥よ」


自慢するようにアーシャは言う。
トウヤが見たのは本物の鳥ではなく、神鳥をかたどった石像だ。


「おばあちゃんから聞いたんだけど、この神鳥の石像は誰かが作ったものでもないの。この町ができるずっと前からこの場所にあって、この土地を守ってくれているんですって」


きりっとした目は生命力を感じさせ、くちばしと鍵爪は鋭さとたくましさを兼ね備え、今にもその羽を広げて力強く羽ばたきそうだ。
あまりの迫力に、トウヤは言葉も忘れて見入ってしまう。
そしてもし、トウヤがここまで神鳥に見入っていなかったら。その首筋にキーストーンや石板と同じ、古代文字が刻まれているのに気付いただろう。



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