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バーンビート
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いつもはスカイヤーズの笑い声やシェリフとファイヤーの言い争いなんかで賑やかな秘密基地だが、今はどうだろう。

輪になって集まる彼等は神妙な面持ちで、堅苦しい空気が苦手なエアホイルも、今日ばかりは横やりをいれるようなこともしていない。皆がレスキューの話を真剣に聞いていた。


『先日、持ち帰った石板のおかげで古代文字の解読はすべて完了、キーストーンの意味やそもそも、ガルバトロスがどうしてキーストーンを狙うのかが解りました』
『勿体付けずに早く話せよ』


腕を組んだファイヤーの指がトントンと苛立つ音をたてる。言葉もぶっきらぼうなものだから、彼のバロメーターは非常に解りやすい。
レスキューとしては、別に勿体付けている訳でもなく順を追って話そうとしているだけなのだが、早くガルバトロスとの決着をつけたいファイヤーには結果だけが全てらしい。

どういう経緯でその結果に辿りついたのかも大切なことなんだけどな、という呟きは自分の中にしまっておいて、レスキューはファイヤーの望み通り結論から話すことにした。


『石板には、6つのキーストーンが揃った時、この世界は生まれる。とありました。ガルバトロスの狙いはこの力のことでしょう』
『ん?それって…』


どこかで聞いた事のあるような。ファイヤーが記憶回路をサーチして見つけるより早く、プテロンとエアホイルが好奇心で目を輝かせて叫んだ。


『『宇宙の始まりの石!!』』
「宇宙の始まりの石?」


なんだそりゃ?と首を傾げるトウヤに、エアホイルが熱く語る。


『僕達の惑星にあるおとぎ話さ。この宇宙のどこかに、宇宙を創った源である石があるんだ。石は土をつくり、水をつくり、空気をつくり、やがて生き物をつくりだす』
『だからその石は始まりの石と言われているんだよ』
「へー」


宇宙に始まりがあるなんて、男のロマンを感じる。
この無限に広がる宇宙のどこかに、始まりの石があるのか――


『……』
『……』
『……』
「どうした?バーンビート」


振り向けばバーンビートは気まずそうな顔をしていた。バーンビートだけじゃない。シェリフとレスキューもだ。3人がどうしてそんな顔をしているのか解らないトウヤとプテロン、エアホイルは顔を見合わせて互いに「?」のマークを頭に浮かべる。


『…お前等、まさか8819プロジェクトを知らないのか?』


8819プロジェクト?
なんだそりゃ?
っていうか、ファイヤーは知ってるの?


ますます「?」のマークを浮かべる3人にファイヤーが頭を抑えた。


『シェリフ、8819プロジェクトって何?』


プテロンが尋ねると、シェリフは『本気で言っているのか?』と驚いた顔をする。だから何なのさ、と終には不貞腐れる3人にバーンビートが『まぁまぁ』と宥めに入った。


『トウヤは知らなくて当然だし、プテロンとエアホイルもまだアクセス権がないからな』
『ああそうか。なら、おこさま組は知らなくて当然だな』
『ファイヤー酷い!』
『誰がおこさまなんだよ!?』


ムキになるプテロンとエアホイルに、ファイヤーは『お前達だって言ってるだろ』とからかう。ケラケラ笑ってばかりのファイヤーに、プテロンとエアホイルが頬を膨らませるのは当然で、宇宙防衛機構の先輩らしからぬ行為にシェリフは頭が痛い。


『いい加減にしろ、ファイヤー。…話を戻すが、8819プロジェクトというのは、遥か昔に行われていた研究の事だ。宇宙の歴史を知るのがプロジェクトの目的だが、その為に人工的にビッグバンを発生させようとしていた』
「ビッグバンって何?ロンドンの大時計?」
『それはビッグベンだ』
「……」

『宇宙が始まるきっかけとなった爆発がビッグバン。研究者達は人工的にビッグバンを作り出して人工的な宇宙を作り、さらに水や土、空気を。そしてそこから生命の歴史を辿ろうとしたらしい。キーストーンはその装置の部品なんだ』
『あれ?それ…』


もしかしてという顔をするエアホイルに、シェリフは頷き、肯定する。

トウヤも気づく。
宇宙の創造、それは宇宙の始まりの石と同じ話。

始まりの石と8819プロジェクトがぼやけた糸で繋がれていく中、ファイヤーがシェリフのあとを引き継いだ。


『だけど、8819プロジェクトは達成されなかった。宇宙を創るにはエネルギー、それも膨大なのが必要だ。そんな大きなエネルギーを制御できればいいが、間違って暴走でもさせてみろ。プロジェクトどころか惑星ごとふっとんじまう。だから宇宙防衛機構はプロジェクトを中止させて、当時の研究資料やデータを全て押収したんだ。もう二度とそんなプロジェクトが行われない為にな』


全く、厄介なものを作ってくれたとぼやいて、ファイヤーは腕を組んだ。


『そんな話、僕達全然知らなかった。宇宙の始まりの石はただのおとぎ話だと思っていたし』


呟くように言ったプテロンに、バーンビートが『それは当然だ』と言う。


『仮にエネルギーを制御する方法があったとしても、今度はそのエネルギーを悪用される可能性がでてくる。だからこのプロジェクトの内容は極秘扱いで、宇宙防衛機構でもほんの僅かな者しか知らない。私達でさえ、知ったのはごく最近で、それまではスカイヤーズの様におとぎ話だと思っていたよ』


トウヤ達はこれにも驚かされた。
バーンビート達でさえおとぎ話だと思っていたものが、実は事実に基づく話だったなんて。もしそれが意図的にすりかえられているとすれば、8819プロジェクトがどれだけ秘密にされていたかよく解る。

そうなってくると、次に不思議に思うのはどうしてキーストーンが地球にあるかだ。バーンビート達の惑星から地球までの距離はとても長く、ちょっと散歩がてらなんて軽い気持ちで行けるようなものじゃない。
再びバーンビートに尋ねる。


『さっきファイヤーが言ったように、8819プロジェクトは中止されて関連する全てのものは押収されたが、それはそう簡単に処分できない。かといって、宇宙防衛機構に保管するのも不適切なので、誰の手にも渡らないように遠くの、それも生命体のない惑星に隠すことにしたんだ。当時の地球は人間や動物もいなければ草木もない場所だったから、うってつけだったんだろう』


その答えを聞いて逆算すると、キーストーンが地球に隠されたのは少なくとも6億年以上前のことになる。
一体、バーンビート達の歴史ってどれだけ長いんだ。と思ったトウヤだが言葉にはせず、代わりにもう1つ気になっていたことを尋ねた。


「キーストーンがビッグバンの部品ってことは解ったけど、肝心の装置はどこにあるんだよ。それがなきゃ意味ないじゃん」


トウヤの言うことはもっともだ。ガルバトロスがキーストーンを全て手に入れたところで、それはただの部品にすぎない。
キーストーンと装置の両方が揃って、初めてビッグバン発生装置は稼働し、人工宇宙が誕生するのだから。
その疑問に答えたのは、レスキューだ。


『それは石板に記されています。キーストーンを全て集めた時、道は開かれ、宇宙が生まれる、と。恐らくキーストーンが装置までの道標になっているのでしょう。なんにしろ、キーストーンがこちら側にある以上、ガルバトロスは装置の場所を見つけられません』
『その上、石板もこちらにある。なんとしても奴らより先に残りのキーストーンも見つけ出すんだ』


バーンビートが拳を強く握り、決意を新たにした直後、基地のメインコンピューターが警報を鳴らした。どうやら何かを感知したらしく、駆け付けたシェリフはモニターを見るなり叫んだ。


『バーンビート、エネルギー反応を感知した』
『場所は』
『インドだ。ヒマラヤ山脈の周囲。だが、今回はキーストーンではないようだ』
「じゃあガルバトロス達?」


トウヤが尋ねると、シェリフは首を横に振りかけて止めた。


『確かに生命エネルギーだが、ガルバトロスとも少し違うようだな』
『どういうことだ?』


曖昧な否定をするシェリフにバーンビートが尋ねる。


『今までにない反応の仕方をしているんだ。キーストーンでもないし、地球エネルギーのものでもない。1番近いところで私達と似た構造の生命体だが、ガルバトロス達のとはまた違う』


そう答える間も、シェリフは過去のデータを洗い直してこのエネルギー反応の正体を掴もうとしている。その後ろでファイヤーがパンと拳を受け止める音を鳴らして意気込んだ。


『っつーことは、行ってみなきゃ解らねーってことか、おもしろくなってきたぜ。バーンビート!』
『ああ、全員出動だ!』


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あきゅろす。
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