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バーンビート
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課外学習で発掘現場にやってきたトウヤ達だったが、その場所新たな遺物が発見された。
男のロマンを胸に抱いた先で見たもの。それは、遺物を遥かに超えるものだった。


「キーストーンにあるのと同じ、バーンビート達の古代文字だ!」


白い石に刻まれた模様は、確かにバーンビート達の古代文字と同じだ。バーンビート達が熱心に解読作業を行っていたのを、間近で見ていたトウヤが見間違う筈がない。
しかしどうしてその古代文字がこんなところに!?


「(とにかく、バーンビート達にも知らせないと!)」









その頃、ガルバトロス達の基地では、幹部4人とディアとアブロを含んだ全員が集まっていた。

6人の部下達の前には、彼等がボス、ガルバトロス。
集められたものの、ガルバトロスは何か命令を下すわけでもなく、膝まずく彼等をじっと見下ろしている。
たったそれだけなのに、他者を圧倒させる存在感。生半可な者では、ガルバトロスのプレッシャーに耐えきれず、立つことすらままならないだろう。
闇のように黒いボディは、僅かに動く度に光を反射させ、部下達はその度に身を強張らせた。

ひたすら続いている沈黙が更なるプレッシャーを与え、生殺し状態に気が狂いそうになった頃、ガルバトロスは重い口を開いた。


『…キーストーンは全部で6つ。そのうち2つがバーンビートの手中にある。これはどういう事だ?』


ギロリと光ったカメラアイが、ディアとアブロ、幹部4人を順に捕らえていくも、それを真っ向から受け止められる者は誰ひとりとしておらず、それぞれが視線を反らしたのを見て、ガルバトロスは「フン」と鼻を鳴らす。


『しかし、アイツ等がいくらキーストーンを集めたところで、その意味と使い方が解らなければただの石。奴等がそれに気付く前に、伝説の石板を見つけるのだ。そして見つけ次第、破壊しろ』
『『『『『『了解』』』』』』


返事と共に闇に消えていく部下達。
1人になったガルバトロスは、あるデータを呼び起こした。
それは宇宙防衛機構で保管されていた古文書で、ガルバトロスにとってもっとも価値のあるものだ。

キーストーン。

伝説の中だけに存在するものだと言われていたが、やはり実在するのだ。そしてその力は、強大で、全宇宙の支配というガルバトロスの野望を叶える。
ガルバトロスの口元がつり上がった。






「今日の課外授業は終わりだけど、今日の感想文は月曜日に提出だからな。忘れるなよ。それじゃ皆、気をつけて帰るんだぞ」


柊の言いつけに生徒達は「はーい」と元気よく答えた。
予定では、日比野教授の講義を受けながら発掘現場を見学、発掘作業も体験する筈だったが、新しい出土品がでてくれば話は別。邪魔にならないうちに帰る方がいいだろう。
帰り支度が済んだ生徒から帰っていく中、アヤメはトウヤがいないのに気付いた。この後、カズキの家で4人一緒に感想文を書く約束したのに、どこにいるのだろう?
アヤメは傍にいたカズキとソウタに声をかける。


「ねぇ、トウヤ君見かけなかった?」
「トウヤ?そういやさっきからいないな」


アヤメに言われて初めて気づいたカズキは周囲を見渡して、トウヤを探すが、残っている生徒はカズキ達3人だけだ。
どこにいったんだ?と首を傾げるカズキに、どこにもいないから聞いているんじゃない、とアヤメが頬を膨らませていると、リュックを背負いながらソウタが「僕、知ってる」と答えた。


「トウヤ君ならさっき用事があるから、先に帰るって言ってたよ」
「用事って?」
「さあ?走っていっちゃったから解らない」


肩をすくめるソウタにアヤメは「ふぅん」と納得して呟く。
トウヤの足の速さはおりがみつき。走り出したら最後、誰にも止められないのだ。
そうすると今度は、用事があるなら最初から言ってくれればいいのに、とトウヤの無責任さに怒ってまた頬が膨らむ。
対照的に、カズキとソウタはそこまで気にしていないようで、もういいじゃないかと肩をすくめる。


「帰ったんじゃ仕方ないだろ。俺達だけで感想文書こうぜ」
「そうですね。アヤメさん、行きましょう」
「もう、トウヤ君ったら宿題忘れても知らないわよ」


ごめん、カズキ、ソウタ、アヤメ。

木の影から手を合わせて謝っているのは、トウヤだ。先に帰るなんて言ったのは嘘っぱち。本当はソウタを振り切った後、Uターンして木の影に隠れていた。
遠ざかっていく3人の背中を見送ったトウヤは、バーンビートに通信を入れた。


「バーンビート。聞こえるか?」
『トウヤ。聞こえる。どうかしたのか?』
「今、発掘現場に来ているんだけど、そこでキーストーンに刻まれていた文字と同じのを見つけたんだ。急いできてくれ」
『解った!すぐに行こう!』


通信を終えて、トウヤはふぅ、と息を吐いた。
プテロンは以前、キーストーンに刻まれた文字は伝説級に古い文字だと言っていた。あまりの古さに解る文字も殆どなく、1文字に対しても何種類かの意味をもっているので、バーンビート達は1文字進んでは全体の意味を確認、意味が通らなければ最初からやり直しという作業を延々と行っている。そんな地道な作業、ファイヤーじゃなくても逃げ出したい。
だけど、ひょっとしたら。あの遺物で、キーストーンの文字が解り、完全に解読できるかもしれないのだ。

バーンビート達、喜ぶだろうなぁ。

皆の喜ぶ顔を想像していると、空と地上からゴオオオオオッと凄い音が聞こえてきた。空からは白の巨大なジェット機と青と水色のジェット機が衝撃波と共に。そして地上からは消防車を先頭に、パトカーと救急車が土煙をあげて、それぞれトウヤに向かってくる。
それらがトウヤの目の前で停まり、ビーグルモードからロボットモードへ変形を始めるもんだから、精神的な疲労がのしかかる。


『トウヤ!トウヤ!キーストーンと同じ古代文字を見つけたんだって!?』
『それってどこにあるの!?』
『よっしゃー!これで退屈な解読作業ともおさらばだぜ!!』
『ファイヤー!お前ってやつは!!』
『嬉しいな。これで作業が進むよ』
『トウヤ、待たせてすまない。それで古代文字はどこにあるんだ?』


喜びはしゃいでいる皆を後ろに、バーンビートが尋ねるのだが、トウヤはそれに答えようとしない。だって。


「(やっぱりコイツ等近くにいたんだ!)」


と、声を大にして言いたいのを必死に堪えていたから。
いくらバーンビート達が融合した機械以上のスペックを持っていても、通信終了から5秒もたたないうちに基地からここまで来るのは不可能、というかそれ以前の問題。

プテロンとエアホイルが近くを飛んでいたのは解っていたけど、気付かないふりをしていた。
今日も今日とてデスクワークが嫌いなファイヤーがサボって逃走、シェリフが説教する為に追いかけて、レスキューも残されるのがつまらないから一緒に追いかけてきたのも、見なかったことにした。

でも隊長であるバーンビートまでもがサボりなんて!
遊覧飛行をしていたなんて、絶対に信じないぞ!


「(つーか、お前等、本当に宇宙を守る自覚あるのかよ!?)」


初めて会った時に見せたかっこよさはどこへやら。サテライターを真っ二つに切ったバーンビートはかっこよかったなぁ、とそんなに遠くない過去を思い出す。
中身を知れば知るほど、溜息をつきたくバーンビート達に軽く現実逃避していると、シェリフが『バーンビート!』と短く叫んだ。

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あきゅろす。
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