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バーンビート
3


そうこうしているうちに発掘現場に到着した。恐らく、発掘チームの大半がここに集まっているのだろう。新しい遺物がでてきたとあって、誰もが声をあげて喜んでいる。中には手を叩いて喜ぶ人もいた。
見ているだけでトウヤのワクワクはとまらない。一体どんなものなんだろう。早く自分の目で見たくて、走り出した。


「あ!トウヤ待てよ!」


先に見るなんてずるいぞ!とカズキがトウヤの後を追いかけて走れば、アヤメとソウタも置いてけぼりにしないで!と走り出す。

そうなればもうあとの生徒達も歩いていられない。スタートの合図こそなかったが、ゴールの遺物目指して誰もが全速力で走る。

後ろの方で柊が勝手な行動をするな!と叫んでいるのだが、そんな声なんて聞こえちゃいない。
皆、新たな発掘に胸を躍らせているのだ。


「でっけー!!」


目の前にそびえる巨大な土の壁は校舎よりも高かった。その壁に遺物が埋まっているのだが、残念なことにまだほんの一部しか見えていない。周囲の土と比べて白っぽく、恐らく巨大な石が材料となっているのだろう、この全てが現れた時、とても大きなものだと驚くのは絶対だ。

トウヤは、わー、と感嘆して遺物を見上げた。


「すっげー、こんなのどうやって作ったんだろ」
「岩をくりぬいて作った?外国のなら聞いたことあるけど、日本の建築物にはそんなのなかったような…」


とても難しい顔をして腕を組むソウタ。そんなソウタにアヤメも感化されたのか一緒になって考え始めた。


「うーん、きっと珍しいのよ。だから発掘チームの人達もこんなに喜んでいるんじゃないの?」
「そうかな?」


アヤメの意見にも納得しきれないようで、頭の上の疑問符は浮かんだまま。と、突然カズキが「そうだ!」と叫んだ。気がつかなかったが、いつのまにかカズキも考えていたらしい。

よほど自信があるのか、胸を張って笑顔を見せるカズキに、ソウタとアヤメは期待を寄せる。


「何何?何か思いついたの?」
「焦らさないで早く教えてよ」
「まぁ、待てって。どうしてこれが石でできているか、それはな…」


一度区切るとコホンと咳払い。勿体ぶったそれに、ソウタとアヤメは早く早くと続きを急かす。


「他のと同じじゃつまらないからに決まってるだろ!」


これしかない!ふんぞり返るカズヤとは対照的に、ソウタとアヤメの反応は薄い。薄すぎて無いに等しいし、さっきの自信はなんだったんだと白けた顔になる。


「カズキ君に期待したのが間違いだったよ…」
「そうね…」


はぁ、と同時に溜息をついて落胆する2人を横目に、トウヤは遺物に目を凝らしていた。

ソウタ曰く、神殿か祭壇だというこの遺物には、模様があった。それも一カ所ではなく、見えている範囲全てに。この分だと他の部分にもこの模様がびっしりとありそうだ。


「ねぇ、お兄さん。この模様って一体何?」


不思議に思ったトウヤは、近くにいた調査員の人に尋ねると、その調査員もトウヤに言われて初めて、模様に気付いたみたいで目を凝らす。


「解らないの?」
「こんな模様は初めてだ。何だろう?」


模様は何種類もあるが、どれも同じ大きさで綺麗に列をなしている。ただ、ここにある模様とあそこにある模様とでは、その隣に刻まれた模様が異なるというように、並び方に法則性はないらしい。

単なる模様ではないのか?

トウヤがそう考え始めた時、ふとこれらの模様には、見覚えがある事に気がついた。そうすると今度はどこで見た?という疑問が浮かび上がる。


「教授達に知らせに行くか」


模様が何を意味するのか解らなかった調査員は、早々に諦めて、日比野教授らを呼びに行ってしまう。それでも諦めないトウヤは、凝視することで記憶の糸を辿り、終に辿りついたその答えに思わず息をのむ。


「キーストーンにあるのと同じ、バーンビート達の古代文字だ!」


どうしてバーンビート達の古代文字がこんなところに!?

反射的に遺物を見上げたが、遺物はトウヤの疑問に答える事なくただ静かに見下ろしていた。


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