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バーンビート
4





セノーテに飛び込んだトウヤは、水底を目指して水を掻く。
レスキューのくれた酸素ボンベのおかげで、どんどん深く潜っていける。これならお間抜けコンビより先にキーストーンを掴めるぞ。


「こぉらぁ!お前なんかにキーストーンを渡してたまるか!」


水底に向かうトウヤを見て、キーストーンに気付いたアブロも、深く潜り始めた。こっちこそお前達なんかにキーストーンを渡してやるもんか!

トウヤも必死に手足を動かして、アブロより先に掴もうと躍起になる。

ぐんぐん近づく両者。そして終にトウヤはキーストーンを掴んだ。


――やった!


声には出せないので、心の中で叫んだトウヤは上を見上げる。そこでトウヤが見たものは、両手を広げて待ち構えるディアの姿だ。
ゆらゆらと漂うディアは残念でしたと意地の悪い顔で笑っている。

ちくしょう、アブロしか見ないと思っていたら、そこにいたのかよ。

悔しくて睨みつけていると、アブロの手が掠めた。キーストーンを奪うつもりだ。
奪われないようにキーストーンを抱き直すと、トウヤはアブロの手を蹴って必死に抵抗する。

上に逃げたいところだが、ディアが待ち構えている以上、捕まってしまうのは確実。どうしよう。
ボコボコと浮上する泡を見つめて考えていると、これだ!と思いついた。岩に手をかけて、アブロを思いっきり蹴飛ばしたトウヤは大きく息を吸い込んだ。

そして酸素ボンベを口から外して水底に向ける。バルブを最大限に開けると、酸素ボンベ100本分に圧縮された酸素がジェット噴射の様に吹き出して、トウヤは一気に浮上する。
まさかの方法に、アブロは「ええ!?」と仰天して、ディアはどんどん迫りくるトウヤにあたふたとして激突、反動で岩にもぶつかった。

トウヤはトウヤで、予想以上のスピードに驚きつつも、キーストーンを離さないようにしっかりと握り締める。そうして水面を飛び出したトウヤは、わーっ!!と悲鳴をあげながら宙を舞い、バーンビートにキャッチされた。


『トウヤ、大丈夫か?』
「バーンビート!よかった無事だったんだ!あ、そうだ。見てキーストーンだよ」


黄色に輝くひし形の結晶。それは間違いなくキーストーンで、バーンビートは「おお」と声をあげた。プテロンとエアホイルも「やったー!」と喜んでいる。


『やったなトウヤ』
「だろ?…はっくしゅん!!」


鼻をすすったトウヤは自分がずぶ濡れなことに気がついた。着替えなんて持っていないから、このままでは風邪をひいてしまう。
するとそれを読みとったように、バーンビートはビーグルモードに変形、ファイヤーウィングとドッキングして扉を開けた。


『さぁ、早く帰ろう。このままだと風邪をひいてしまう』
「うん」


元気よく返事をしたトウヤは、バーンビートに乗り込んだ。ドアが閉まると同時にバーンビートは飛び上がる。


『トウヤ。プテロンから話は聞いたよ。キーストーンをとる為に濡れてしまったようだね』
「レ、レスキュー」


ブレスから聞こえてきたレスキューの声に、トウヤは思わずたじろぐ。レスキューが何を言うか想像できるので、できれば今、1番話したくない相手だ。


『そのままでは風邪をひいてしまうから、ブレスの機能を使うといいよ』
「そ、そだね…」


上ずった声で答えてしまったが、レスキューはそれに気付いていない。ブレスの向こうに、ニコニコと笑っているレスキューが見える気がして、トウヤは観念したように溜息をつくと、ブレスの機能を使った。

できれば使いたくなかったあの機能だ。

ブゥン、と小さな音がして、トウヤの服が変る。


「はぁ。レスキューもどうせなら、もうちょっとかっこいい服にしてくれればよかったのに…」


がっくりと項垂れて、トウヤは服をつまんだ。全身赤なのは、まぁ、いいが、胸と背中のマークは何なんだ。こういうときは普通、ブレスと一緒でバーンビートのマークじゃないのか。
ねじって見えた背中のマークは、爬虫類と昆虫を足して2で割ったような生物で、とてもセンスがいいとは言えない。

ひょっとして宇宙人って地球人と感覚が違うのかも。
だったら嫌だなぁ。

誰にも言えない悩みに、トウヤは盛大な溜息をついた。





トウヤやバーンビート達が帰っていったジャングルに、残された人が約2名。


「……」
「……」
「……なぁ、ディア。俺達ってもしかして」
「帰れないわね…」


爆発して無残な姿となったボアキングを目の前にして、ディアとアブロは言葉を失った。爆発のショックで、脱出カプセルも壊れてしまい使いものにならない。
これでどうやって帰れと言うのだ。


「「ガルバトロス様ーっ!!」」


いくら叫んだところでガルバトロスに届く筈もなく、ジャングルの中に、ディアとアブロの声が空しく響いていた。

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