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バーンビート
2



背が高く、葉が大きい木々が生い茂る土地、ジャングル。
緑が続くその大地に、ところどころに泉が見える。眼下にみるトウヤは、ジャングルに泉なんてあったっけ?と首を傾げた。


『セノーテという泉だ。この辺りは石灰岩だからろ過されて、とても高い透明度をもっている』
「シェリフ、見えるの?」


聞こえてきた声はシェリフのもので、トウヤは素っ頓狂な声をあげた。通信機の向こうでクスクスと笑う声と一緒にシェリフの声がまた聞こえてくる。


『バーンビートが映像をこっちにまわしているからな。ところで、キーストーンだが、今飛んでいる辺りを中心に反応があった。そろそろ降りてくれ』
『了解』


シェリフの指示を受けて、バーンビートが右翼を下げて旋回、降下を始めた。後ろのプテロンとエアホイルも、同じようにして降下する。
バーンビート達一行は、なるべく開けた場所に着地すると、続いてビーグルモードからロボットモードに変形した。


『この辺りにキーストーンがある筈だ』


うっそうと生い茂ったジャングルを見渡して、バーンビートは言う。
キーストーンが活性化して、エネルギー反応が表れれば捜索はたやすいのだが、活性化していない今はしらみつぶしにサーチをかけるしかない。
手間のかかる作業だが、仕方ないことだ。


『四方に分かれよう。エアホイルは西、プテロンは東、私は北、トウヤは南を頼む』
『『了解!』』
「任せとけって!」


トン、と胸を叩いたトウヤは得意げな顔で腕のブレスを見やった。この間、バーンビートからもらった通信機だが、後日、レスキューがバージョンアップしてくれたおかげで、キーストーンの反応もキャッチできるようになったのだ。他にもライトやレーザー機能もついていて、正に地球を守る正義の味方の必須アイテム。

ただ、おまけでつけてくれたアレは使わないと思う。レスキューはアレが気に入っているらしいが、トウヤにはどうしても賛同できない機能だったのだ。





「にしても。この広いジャングルのどこにあるんだよ」


歩いても歩いても同じ景色の繰り返しに、トウヤは溜息をついた。
初めは意気込んでいたものの、あまりの反応の無さにトウヤの意気込みもすっかりしぼんで、やる気が起こらない。あーあ、と白けた顔で、頭の後ろで手を組んで歩く始末だ。

そういえば、キーストーンは町にあった時のように、地中に埋まっているのだろうか。もしそうだったら、スコップがいるな。

そう考えていた時、正面の茂みが大きく揺れた。
何の前触れもないそれに、トウヤの心臓は大きく跳ね上がる。

何だ?

恐怖と好奇心が入り混じる中、ごくりと唾を飲んで出てきたものは!


「あー!!お間抜けコンビ!!」


間違いない。ガルバトロスの幹部、ディアとアブロだ。
ん?と振り向いたディアとアブロは疲れ切った顔をしていたが、自分達を指差すトウヤを見て、徐々に顔つきが変わった。そしてトウヤがバーンビート達と一緒にいた子供だと思いだすと、2人も声をあげる。


「あー!!お前、バーンビートと一緒にいた奴!!」
「って言うかアンタ、キーストーン持ってたわよね!?」


ギラギラと目を光らせるディアとアブロには、攻撃されるのとは別の危険さがあった。切羽詰まったような感じと言うか、追い詰められた感じに、トウヤはなぜだかテスト前日の夜を思い出した。
もうどうにもならなくて、投げ出したくなるあの感じだ。

え?何?もしかしてコイツ等、キーストーンが見つからなくて自棄になってるの?ぶっ壊れてるの?


「持ってるんだったらさっさと出しなさいよ!こっちはねぇ、この広いジャングルを3日も前から探してたのよ!?この気持ち解る!?解る!?しかも不眠不休!!」
「おまけにゴンドルは俺達に押し付けてったきりでどこ行ったか解らないし!ガースの作ってくれたメカ!これも途中で壊れたから、自分達で探さなきゃならないし!!」


怒濤の勢いで文句をぶつけるディアとアブロに、トウヤは圧倒されて一歩二歩と後退する。
全く寝ないで3日前から探しているとか、ありえないだろ。おまけに仕事押し付けられるって…そりゃあ、ぶっ壊れたくもなるな。

顔をひきつらせるトウヤにディアとアブロは更に詰め寄る。もうちょっとで頭と頭がぶつかってしまう。


ピピピピピピピピ――


トウヤのブレスが鳴りだした。ディアとアブロが持っているメカも音をたてる。キーストーンの反応だ!


「バーンビート!キーストーンの反応があった!」
『解った!今すぐそっちに向かう!』
「おっと!そうはさせるか!」


アブロは意気揚々と懐からリモコンを取り出すと、スイッチを押した。ゴゴゴゴゴゴ、と地面が揺れて現れたのは蛇を模した巨大なロボット、ボアキングだ。


「ボアキング!もうすぐバーンビート達がくるから締め付けちゃいなさい!」


ディアの命令にボアキングは巨大な尻尾を打ち鳴らして、シャーッ!と巨大な牙を見せつける。あんなのに噛まれたら、いくらバーンビート達でもひとたまりもない。


「きったねー!メカが壊れたなんて嘘っぱちじゃねーか!」
「嘘なんかついてないもんねー!」
「メカはメカでも壊れたのはキーストーン探索機だもーん!」


憤慨するトウヤだが、あーはっはっは!と声を高らかにして笑うディアとアブロの異常なまでのテンションに、むかつき度合いは急上昇。絶対にコイツ等より先にキーストーンを手に入れてやる!


「あ!小僧待ちなさい!!」
「ディア!追いかけるぞ!!」







『あれ?トウヤがいないよ』


トウヤの通信を受けて、バーンビートアーマー、プテロン、エアホイルの3体が集まった。しかし、着地した場所にトウヤはいない。どこに行ったのだろうかと顔を見合わせた次の瞬間。


『プテロン!エアホイル!後ろだ!』


バーンビートの一声で振り向くと、シャーッ!と牙をむき出して襲いかかってきたボアキングが!

プテロンとエアホイルは慌てて飛びのいた。間一髪のところでボアキングの攻撃を避けられたプテロンだったが、エアホイルはボアキングに捕まってしまった。


『エアホイル!』
『くそっ…』


ボアキングの長い胴体が、エアホイルに絡みついて締めつけた。何とかして抜け出そうと試みても、ボアキングは更なる力でエアホイルを締め付ける。バーンビートとプテロンが2体がかりで引きはがそうとしても、1ミリたりとも緩まない。

ギチ、ギチ、と金属がきしみあう嫌な音が続く。


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