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バーンビート
3


北海道東部にある森。自然溢れるこの場所に、酷く不釣り合いな機械があった。
一応、見つからないように配慮しているのか、その大きさはかろうじて周囲の木々に隠れる程度。円盤型をした胴体を細い4本の足が支えていて、その足元には機械を制御する為のパネルがある。


『ディア、アブロ。首尾はどうだ』


パネルを操作しているディアとアブロに声をかけたのは、ガルバトロスの部下、ガーディー。すらりとした細身の外見と、ポイズン・イエローのボディは、虎や豹といったネコ科の哺乳類を連想させる。


「今のところ、世界中に飛ばした探索機からは何の反応もないぜ。まだ活性化していないのかも」


これじゃあお手上げだ、と肩をすくめるアブロ。

トウヤとバーンビートが追いかけているUFOの正体は、彼等が飛ばしたキーストーン探索機だった。キーストーンは特殊なエネルギー波を発する為、捜索のカギとなる。
しかしそのエネルギーが放出されるのは、キーストーンが活性化される時のみ。活性前のキーストーンはただの結晶と変わらず、探しようがない。

思ったより面倒な探し物だ、とガーディーは内心舌打ちをする。


『まぁ、いい。調査を続けろ、俺は――』


ガーディーが振り向くと同時に、金属同士がぶつかる音が静寂を破る。耳障りとしか言いようのないその音は、ガーディーのナイフクローとレスキューのブレードが激突した音だった。

レスキューは自分の両腕をブレードに変える事ができるのだ。

しかし、ガーディーは一体いつから自分の存在に気付いていたんだろう。ブレードを止められたレスキューは顔を歪ませる。


『よう、レスキュー。久しぶりだな』
『っ…ガーディーっ!!』


金属同士のこすれ合う嫌な音をたてて、2人は睨みあう。どちらも引かずの状態が続いたが、シェリフの加勢により突如、均衡は崩された。

シェリフの銃、シェルショットがガーディーを狙ったが、ガーディーは持ち前の敏捷性でいともたやすく避ける。

その刹那、探査機が視界の端に入った。操作パネルの前で縮こまっているディア。どうやら逃げ損ねたらしい。

のろい奴め。

使えない下っ端に舌打ちをする。
一応、ガルバトロスの部下なんだから参戦すればいいじゃないかと思っても、人間と同サイズのディアには無理だ。ガースが作ったロボットがないと。


『くらえ!』
『うわぁ!!』
『レスキュー!!』


ガーディーのビーム砲をまともに受けて、レスキューがふっとばされた。シェリフはシェルショットを撃ったが、ガーディーを掠めただけ。致命的なダメージを与えられないまま、間合いを取られた。

ディアはこの状況をチャンスだと捕らえて、一気に走り出した。森の中にはガースが作ったロボットが隠してある。それに乗り込めれば。
その行く手をバーンビートとファイヤーが阻んだ。


『おっと、逃がしてたまるか。お前等には聞きたいことがあるんだ』


口の端を吊り上げて、ディアを見下ろすファイヤーはまるで悪役。逃げ場を失ったディアは小さく息をのみ、これではどっちが正義の味方かわかったもんじゃない。


『お前達が探しているあのキーストーンという結晶。あれは一体何だ。お前達は何を企んでいる』


バーンビートが尋ねるが、ディアは黙秘を続ける。そのすぐ横では、シェリフとレスキューがガーディーと戦っているので、なかなかシュールな状況だ。
なかなか口を割ろうとしないディアに、ファイヤーの忍耐力は限界に近付いてきて、元々、好戦的な彼には、自慢のガドリング砲で軽く脅してやれば、吐くんじゃないかというあるまじき考えさえ起きてきた。


「バーンビート!ファイヤー!後ろ!!」


トウヤの声でバーンビートとファイヤーがハッと後ろを振り返ると、黒い影。アブロの操縦するクモ型ロボット、スパイチュラの攻撃だ。
バーンビートとファイヤーがさっと避けると、タッチの差でそこには糸が絡みついていた。あんなのに捕まったら、逃げられない。


『危ねぇ危ねぇ。サンキュー、トウヤ』
「へへっ、どういたしまして」


俺だってバーンビートの仲間なんだから!
得意げに胸を張るトウヤに、シェリフの声が聞こえた。


『レスキュー、ファイヤー!合体だ!』
『『了解!』』


と2人から返事がかえってきた。それを聞いて、トウヤの目が輝いたのは言うまでもない。


「ファイターズも合体できるんだ!」


プテロンとエアホイルは左右に分かれて合体していたが、ファイターズはどんな合体の仕方をするんだろう。トウヤの期待を受けながら、ファイターズの合体は始まった。


『『『チェンジアーップ!!』』』


シェリフが胴体に、レスキューが両腕、ファイヤーが両足に変形して別のロボットを形成する。白く輝くそのロボットの名は。


『プロファイター!!』
「かっこいい!!」


気高さを象徴する白、そして騎士を連想させるその姿にトウヤは暫くの間見とれていた。
見かけだけではない。ちゃんと実力も兼ね備えている。


『ファイターランス!!』


プロファイターが振りかざした純白のランス、ファイターランスは鉄をも砕く破壊力。そんなのに貫かれれば一巻の終わりだ。
先手を打つべく、スパイチュラは糸でプロファイターをがんじがらめにした。
身動きの取れなくなったプロファイターに、ディアとアブロはやった!と喜び、トウヤはああ!と不安げな声を上げたが、その直後、プロファイターは糸を引きちぎった。
ディアとアブロは歓喜から一転、恐怖に青ざめて、トウヤは恐怖から歓喜の表情に変る。

今度はこっちの番だ。


『ファイタースパイラル!!』


ファイターランスの先が高速回転を始め、回転数が最高潮に達すると、ファイターランスはスパイチュラを突き抜ける。

スパイチュラにぽっかりと空いた穴。
そこからバチバチと放電の音が聞こえたが、すぐに爆発した。その爆発に乗じて、2機の脱出用カプセルが空に消えた。


「やった!!」


プロファイターの活躍に飛んで喜ぶトウヤとは対称に、プロファイターはスパイチュラとは別の方向を見ている。まだバーンビートとギーグルが戦っているのだ。


『はああああっ!』


バーンビートの武器、バーニングソードがガーディーに振りおろされる。しかし、ガーディーはぎりぎりのところでこれをかわすと、バーンビートと間合いをとった。

アーマー化したバーンビートが相手では、ガーディーの勝ち目は薄い。おまけに、スパイチュラも倒された今、プロファイターも相手にしなければならない。
バーンビートとプロファイターの両方を相手にするのは無理だと結論付けたガーディーは、撤退を余儀なくされる。

癪に障るが、この際仕方ない。


『勝負はこの次だ!』
『待て!』
『逃がすか!』


空に逃げるガーディーをバーンビートとプロファイターも追いかけようとする。しかし、それを見越していたガーディーは、ビーム砲を連射することで2人を地上に留めさせ、その隙に視界から消えうせた。










「なぁ。バーンビート。あれって一体何なんだ?」


ガーディー達が去った後、ファイターズは残された機械を調べていた。この機械がなんなのか、トウヤにはまるで解らないが、バーンビートには解っている、もしくは大体の見当がついているに違いない。
バーンビートの手の平に座っているトウヤは、彼を見上げた。


『あれはキーストーンを探す為の装置だ。UFOの正体はこれだったようだな』
「へぇ。あ、終わったみたい」


レスキューがこちらにくるのを見て、トウヤは立ちあがった。その奥でファイヤーがシェリフに叱られているのは見なかったことにしよう。
どうやらファイヤーはシェリフやレスキューとは違って、調査分析といったのが苦手らしい。


『どうだった』
『間違いありません。あれはキーストーン探索機です。ただし、探索機自体は既に世界各地に散らばっているようですね。あれは探索機の発射台と探索機から送られてきたデータを受け取るだけでしょう』
『そうか。なら我々もキーストーンの発見が可能というわけか』
『ええ』


キーストーンのある所、ガルバトロスあり。
彼らの戦いはこれからだ。

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