バーンビート
3
突如町に現れた1体のロボット。
ズン、ズンと歩くそのロボットはミキサー車をモデルにしたのか背中にドラムを乗せている。ミキサー型ロボット、ミスクイーズだ。
ミスクイーズがビルに手を向けると、その手は砲に変り、ミサイルが発射された。直撃を受けたビルは地響きに似た音をたてて、無残にも崩れていく。
『いいぞミスクイーズ!もっとやれ!』
人々の悲鳴が耳に心地いい。破壊を好むギーグルは、拳をふってミスクイーズをはやしたてる。その隣にいるゴンドルも黙ってミスクイーズの破壊活動を眺めていたが、ふとそのアイセンサーが2機の戦闘機を捕らえた。
恐らく、この国を守る機体だろうが、地球の文明なんて子供騙し、たかがしれている。所詮、自分達の敵ではないのだ。
嘲笑うギーグルだが、その隣でゴンドルが「違う!」と叫ぶ。
『あれはバーンビートの仲間だ!』
『何っ!?』
『『チェンジ!!』』
戦闘機を見上げるギーグル。
するとどうだろう、確かにさっきまでは普通の戦闘機だったが、今やその形を変化しつつある。
前倒れになった機首からは頭が、割れた胴体からは手足がでてきて、水色と青のロボットへと姿を変えた。
『ギーグル!ゴンドル!町をめちゃくちゃにしやがって!』
『覚悟しろよ!』
水色のロボット、プテロンに続いて青いロボットのエアホイルが、ビシッと指を指して宣言する。
2体の登場に、思わずあとずさりするギーグルとゴンドルだが、こっちはミスクイーズも合わせて3体。数ではこっちが有利だ。
『うるせぇ!お前等ここで叩き潰してやる!!いけ!ミスクイーズ!!』
ギーグルの命令に、ミスクイーズは「うおおおーっ!」と雄たけびをあげて、プテロンとエアホイルに襲いかかる。背中のドラムが急速回転して、中身がかき混ぜられていく。突進と同時に、これをぶちまけるつもりだ。
『数ではそっちが有利かもしれないけど!』
『こっちは飛べるのを忘れちゃ困るね!』
言うが早いが、2体は粘液をかわすべく飛び上がった。ミスクイーズは空を見上げるが、飛べないのでは意味がない。
ミスクイーズの悔しそうな唸り声を聞いて、2体は縦横無尽に空を飛びまわって挑発する。こんな奴、楽勝だと高をくくる2体だが、その油断が命取り!
『俺達を忘れてちゃいけねーな!!』
『うわぁ!!』
ギーグルのミサイルがプテロンを直撃した。ミスクイーズにばかり気を取られていて、すぐ近くにいたのに気がつかなかったのだ。
『プテロン!』
『おっと!お前もよそ見してる余裕はねーぜ』
声に気がついて振り向くと、ゴンドルが羽を大きく広げている。
エアホイルが構えるより早く、ゴンドルの羽が風の渦を作りだした。強力な風がエアホイルを襲う。
『飛べるのはお前達だけだとでも思ったか?くらえっ!!』
『うわーっ!!』
まともに受けたエアホイルも地面に落下する。さっきまで空を自由に飛んでいた2体が一転、地面にはいつくばっているのをミスクイーズが粘液で固めた。
『うう…』
『く、くそう…』
苦しそうに呻くプテロンとエアホイルを見下ろして、ミスクイーズは砲を構える。
ここまでか、2体が覚悟したその時だ。
『そうはさせるか!!』
ミスクイーズの砲を何者かが弾いた。標的を失ったミサイルは、空に飛んでいく。
『『バーンビート!!』』
『すまない。遅くなった』
見事なタイミングで現れたのは、我らが隊長、バーンビートだ。バーンビートはプテロンとエアホイルを捕らえていたコンクリートを破壊して2体を解放する。
再び自由を取り戻したプテロンとエアホイルは、ミスクイーズをまっすぐに見据えて、反撃開始だ。
『よくもやってくれたな!』
『次は僕達の番だ!』
『『チェンジアップ!!』』
プテロンとエアホイルが同時に叫ぶ。
バーンビートがウィングファイヤーでアーマー化するのに対して、プテロンとエアホイルは合体することができるのだ。
高く飛び上がった2体。プテロンの頭部が収納されると、手足を折りたたみ、新たな左半身に変化する。続くエアホイルも、同じく頭部を収納後、手足を折りたたんで右半身に。そしてドッキングした2体の胸には大きなパネルがつけられ、最後に頭部を現して――
『スカイヤーズ!!』
太陽の光を受けて輝く空色のボディ。スカイヤーズだ。
『ウィングカッター!』
胸のパネルはただの飾りではない。取り外してブーメランになるスカイヤーズの武器だ。その切れ味はとても鋭くて、スクイーズの両腕はあっさり切られた。
『今だ!バーンビート!』
『よし!バーニングソード!』
バーンビートの背中から隠されていたバーニングソードが飛び出し、エネルギーを注ぎ込まれて赤く輝き始める。
『はああああっ!!』
『ぎゃあああああ―――!!』
バーニングソードを受けたミスクイーズは、真っ二つに割れた直後爆発した。
『くそっ!今日のところは引き上げだ!!』
『覚えていろよ!!』
ミスクイーズの爆発を見て、ギーグルとゴンドルは今時、三流小説でも使わない陳腐な言葉を残して逃げて行く。
あまりの素早い逃避行に、バーンビートとスカイヤーズが、敵ながら感服していると、スカイヤーズの足元から興奮に満ちた声が聞こえた。
「すっげー!!めちゃくちゃかっこいいじゃん!!」
声の主はトウヤだ。
ここに来る途中、危険だからとバーンビートに放りだされていたが、自力で追いついたらしい。離れた場所からバーンビート達の戦闘を見ていたのに、ミスクイーズが倒されたのを見てでてきたのだ。
スカイヤーズを見上げるトウヤは、興奮しているようで拳を強く握りしめている。顔もちょっと赤い。
かっこいい!かっこいい!とひたすら叫ぶトウヤに、気を良くしたスカイヤーズは調子よくブイサインをした。
『だろ?僕がいる限り、アイツ等の悪だくみなんてぶっ潰してやる』
「うん!名前はイマイチだけど、やるじゃん!」
『イマイチは余計だ!!』
がうっ、と噛みつくようなスカイヤーズの勢いにトウヤは「わっ!」とのけぞって、尻もちをついてしまった。
そのままの体勢で顔を上げると、スカイヤーズが屈んでいた。心配してくれたらしい。それがなんだか妙におもしろくて、トウヤとスカイヤーズは、どちらからともなく笑いだした。
『改めて。僕はスカイヤーズだよ』
「俺は赤井トウヤ。よろしくな!」
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