[携帯モード] [URL送信]

バーンビート
1

薄暗くとても広い空間にひざまずくふたつの人影、サテライターを操縦していたディアとアブロだ。
2人を見下ろしている巨大な黒いロボットは、何をするでもなしにただそこにいるだけで強烈な威圧感を与えている。
この黒いロボットこそ、バーンビートが追いかけているガルバトロスだ。


『失敗したようだな』


事実だけを告げる声は淡々としていて、それが逆に言いようのない恐怖心を作り出してディアとアブロを襲う。


「も、申し訳ありません、ガルバトロス様」
「あと少しだったのですが、忌々しい、バーンビートの邪魔が入りまして…」


なんとか罰を逃れようと必死に言葉を並べるディアとアブロだが、2人のボスであるガルバトロスはそんな言い訳を聞いていない。重要なのは間抜けな部下の処罰ではなく、2人の邪魔をしたバーンビートの存在だ。

宇宙防衛機構でずば抜けて優秀だった彼の事、なんとしてでも自分の計画を阻止するに違いない。今のところ、あちらが計画内容に気付いているとは思えないが、厄介事は早めに片付けるに限る。

すっくと立ち上がったガルバトロスに、ディアとアブロは「ヒイッ」と小さく声を上げて身を強張らせた。が、その予想に反してガルバトロスは新たな命令を下しただけだった。


『キーストーンの捜索に加えてバーンビートを始末しろ』
『『『『『了解』』』』』


室内の至る所からあがった声は、ディアとアブロを除いた幹部達である。一体いつの間に集まったんだ、とディアとアブロは幹部達に怯える。

ディアとアブロは外見こそ違えど、人間に近い体格をしているのに対して、幹部達はバーンビートと同等の体格をしており、ガルバトロスの体格はその上をいく。

幹部達がそこにいると知ったディアとアブロは踏みつぶされないかヒヤヒヤしているが、それをよそに幹部の1人が進み出た。

両肩にブラスターを担いだダークグリーンのロボットは、幹部達の中で1番大きな体格をしており、パワー勝負が得意なギーグルだ。


『ガルバトロス様。私にお任せください。必ずや、バーンビートを倒してみせましょう』


自信たっぷりに言うギーグルだが、ちょっと待てと横やりがはいる。
邪魔をするのは誰だ、とギーグルが声の出所を睨むと、すらりとした細身のロボット、ガーディー。その姿をみたギーグルはチッと舌打ちをした。


『お前だけでは不安だ。私も行こう』
『フンっ、お前なんて足手まといになるだけだ』


シッシ、と追いやる仕草に、カチンときたガーディーは両手を上げる。その指先からナイフクローが飛び出した。10本のナイフクローをちらつかせたガーディーに、ギーグルもブラスターを起動させる。

一触即発の空気を制したのは、ガルバトロスだ。


『やめろガーディー。お前はガースとキーストーンの捜索だ』
『よろしくな。ガーディー』
『チッ』


お決まり文句の挨拶にガーディーは舌打ちをする。

戦闘を得意とする幹部達だが、科学者のガースだけは戦闘に参加しない。戦いから外されたガーディーは、まだ不服そうだが決定をしたのはボス。仕方ないことだ。

踵を返すガーディーの後ろ姿を見送ったガースは、すっかり縮こまっていたディアとアブロを文字通り拾い上げた。


『ガルバトロス、ディアとアブロは貰っていくぞ。探し物には人手がいる』


そう言うなり許可がでる前に連れて行ってしまったが、このようなガースの行動は今に始まったことではないし、咎める程のものでもない。
ガルバトロスは、ギーグルと最後の幹部、クリムゾンレッドのロボット、ゴンドル(彼には翼のようなパーツがあり、飛行能力を有しているのは一目瞭然だ)を見下ろして指示を与えた。


『ギーグル、ゴンドル。バーンビートはお前達に任せた』
『『はっ!』』









人気のない岬に停車している真っ赤なスポーツカー。ビーグルモードに変形したバーンビートだ。それにトウヤ。ディアとアブロとの交戦後、一緒に来てくれと言ったバーンビートに連れられて、トウヤはそこにいた。


「へぇ。バーンビートは宇宙防衛機構の一員なんだ」
『そうだ。宇宙の平和を守る為に我々、防衛機構は存在する』


バーンビートの声と連動して、スピードメーターの針が動く。
解りやすくていいな、とトウヤが思ったのは言うまでもない。


「それで、アイツ等は何者なんだ?ディアとアブロだっけ?」


あのお間抜けコンビ、と言うのを寸でのところで堪えた。ロボットを操縦していたあの2人は、頭から地面に突っ込んだり、戦いの真っ最中に喧嘩を始めたりと、とにかく間抜けでしかなくて、あんな奴等が敵なら宇宙も平和だよなーなんて思えてくる。


『ディアとアブロはガルバトロスの部下だ。ガルバトロスは宇宙防衛機構が以前から追いかけていた奴で、奴はこの地球を…いや、この宇宙を征服するつもりだ』


もしバーンビートがロボットモードだったら、拳を握りしめていたに違いない。強い口調で言い切ったバーンビートに、トウヤは気持ちを引き締めて生唾を飲んだ。

宇宙防衛機構がずっと追いかけていた奴。宇宙征服を考えるなんて、とてつもなく強いに違いない。


「で、でもさ。宇宙征服なんてどうやってやるつもりなんだよ」
『解らない』
「……は?」


ちょっと待て、今なんて言った?


予想外かつ、あっさり返された言葉に、トウヤの目は点になったが、バーンビートはそんなことに気付かないようで話を続けた。


『いくらガルバトロスと言えど、宇宙征服なんて並大抵のことではない。せめて奴の狙いが解れば…』


歯がゆく言うバーンビートを尻目に、トウヤはすっかり脱力していた。
敵が敵なら、味方も味方で大概間抜けだ。

どこの世界に敵の狙いが解らない正義の味方がいるんだ!
そこが1番重要だろ!

声を大にしてツッコミたいのを全力で堪えるトウヤだったが、ある事を思い出した。


「そういや、ディアとアブロはキーストーンをよこせって言ってたよな。バーンビート、これって何か意味あるのか?」


ディアとアブロに追いかけられていたあの時は、パニックになって気がつかなかったが、2人がよこせと言ったキーストーンはこれだろう。っていうかこれしかない。埋まっていたひし形の結晶を取り出した。





next

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!